インバウンド客の宿泊数、大都市圏以外ではうるま・読谷・北谷、富士五湖・大月、小樽・ニセコなどが人気
地域別(広域市町村:130区分)で延べ宿泊者数を見ると、東京23区、大阪市、京都市の人気が高い。大都市圏以外では、日本人客には、静岡県伊豆(伊東・熱海・下田)、沖縄県南部(那覇・南城・糸満)等が人気。インバウンド客には沖縄県中部(うるま・読谷・北谷)、山梨県郡内(富士五湖・大月)、北海道後志(小樽・ニセコ)等が人気。
広域市町村(130区分)別集計
「内需の活性化、国籍多様化こそ観光業の持続性が高まる」(2025年11月26日)では、観光庁「宿泊旅行統計調査」のデータにより、都道府県別の訪日外国人客及び国籍、日本人観光客の延べ宿泊者数の動向を概観した。
観光庁「宿泊旅行統計調査」では、【参考表】として2021年以降の「広域市町村(130区分)別集計」が掲載されている(本稿執筆時点では2024年が最新値)。ただし、延べ宿泊者数全体と、内数としての外国人延べ宿泊者数のみ表章されており、外国人の国籍別は公表されていない。それでも、インバウンド客に人気がある観光地、日本人客が優勢な観光地などの傾向は分かる。本稿では、そうした地域別の延べ宿泊者数について、全てを記載すると煩雑になるので、項目毎ベスト10を描写する。
なお、2021年、2022年はコロナ禍の影響が甚大であるので、2023年、2024年を対象とする。また、地域名について表中の表記は出所資料に基づいているが、本文中の表記は慣用的な表現に適時変更している。
全体の延べ宿泊者数ベスト10
全体の延べ宿泊者数の多い地域は、2024年、2023年共に東京23区、大阪市、京都市の順となっている。2024年では4位が福岡県福岡(福岡市・朝倉)、5位が北海道石狩(札幌・千歳)で、2023年と順位が逆転しているが、ベスト10に入っている地域は2023年、2024年で相違はない。
ベスト10は大都市圏が大半である。ビジネス需要を含むことも要因であろうが、宿泊施設数が多いこと、海外や他の地域からの宿泊客は大都市そのものを目的地にしている場合や、大都市を拠点に周辺地域を観光することなどが要因として考えられる。2024年に9位の沖縄県南部(那覇・南城・糸満)はマリンリゾート、10位の静岡県伊豆(伊東・熱海・下田)はマリンリゾート及び温泉が人気の要因と推測される。
なお、各地域に入る具体的な市町村については、本稿末尾に【参考】として広域市町村130区分表(抜粋)を載せている。ただし、東京23区や横浜・川崎など名称で市区町村が明確になっているものは参考表では割愛している。
表1:全体の延べ宿泊者数ベスト10

日本人の延べ宿泊者数ベスト10
日本人の延べ宿泊者数の多い地域ベスト10は、2023年、2024年で入っている地域に相違はなく、全体の延べ宿泊者数の多い地域とも相違はない。順位については若干の相違があり、特に千葉県北西部(千葉市・浦安・東葛飾)が4位となっているのが特徴的である。やはり東京ディズニーリゾートの影響が大きいのではないだろうか。
表2:日本人の延べ宿泊者数ベスト10

地域別延べ宿泊者数に日本人が占める比率ベスト10
地域別延べ宿泊者数に日本人が占める比率ベスト10は、2024年と2023年ではそれなりに変化がある。茨城県鹿行(神栖・鹿嶋・潮来)が2023年の4位から1位に順位を上げ、福島県南部(郡山・白河・いわき)、千葉県外房(長生・山武・夷隅)、兵庫県淡路、福井県嶺北(福井市・あわら・永平寺)、新潟県中越(三条・柏崎)が、2023年のベスト10圏外から2024年にはベスト10に入っている。一方、千葉県内房(君津・安房)、岩手県沿岸(久慈・宮古・釜石)、山形県北部(最上・庄内)、岡山県北部(津山・真庭)、宮崎県北部(延岡・高千穂・日向)は、2023年はベスト10に入っていたが2024年にはベスト10圏外となっている。
日本人が占める比率が高いということは、外国人すなわちインバウンド客が占める比率が低いことの裏返しとも言える。従って、日本人が占める比率が高い=日本人に人気、ということではなく、単に外国人があまり来ていない地域という見方もできる。2024年に日本人が占める比率1位の茨城県鹿行(神栖・鹿嶋・潮来)は、日本人の延べ宿泊者数では130地域中106位である。2024年の日本人が占める比率ベスト10に入った地域で日本人の延べ宿泊者数がベスト50以内に入っているのは、福島県南部(郡山・白河・いわき)(日本人の延べ宿泊者数33位)、栃木県那須(同43位)、群馬県南部(前橋・高崎・東毛)(同24位)のみである。
別言すれば、これらの地域はインバウンド客開拓の余地があるとの見方もできよう。表3では茨城県鹿行(神栖・鹿嶋・潮来)を除いて、いずれも日本人が占める比率は2023年に比べて2024年の方が低くなっている。2023年はコロナ禍の影響がまだ残っている時期であり、インバウンド客が本格的に増え始めたのは2024年からと考えると(「内需の活性化、国籍多様化こそ観光業の持続性が高まる」(2025年11月26日)の図1参照)、今後はこれらの地域も日本人が占める比率が低下していくかもしれない。
表3:地域別延べ宿泊者数に日本人が占める比率ベスト10

外国人の延べ宿泊者数ベスト10
外国人の延べ宿泊者数の多い地域ベスト10は、2023年、2024年でベスト5までは同じ地域である。東京23区、大阪市、京都市がベスト3であることは日本人の延べ宿泊者数と変わらない。
日本人は4位に千葉県北西部(千葉市・浦安・東葛飾)が入っていたが、外国人の4位は福岡県福岡(福岡市・朝倉)である。韓国籍の宿泊客が多いことが影響していると推測される(「内需の活性化、国籍多様化こそ観光業の持続性が高まる」(2025年11月26日)の図4、図5参照)。2024年に外国人の延べ宿泊者数7位の沖縄県中部(うるま・読谷・北谷)は台湾、韓国、米国、同9位の山梨県郡内(富士五湖・大月)は中国、台湾、タイ、香港などからの宿泊客が増えている影響であろう。
なお、千葉県北東部(成田・香取・海匝)が2023年には9位であったが、2024年には13位とベスト10圏外となっている。コロナ禍の影響が低減したことにより観光客が相対的に増加し、成田空港周辺で宿泊するビジネス需要が相対的に低下したためと推測される。
表4:外国人の延べ宿泊者数ベスト10

地域別延べ宿泊者数に外国人が占める比率ベスト10
地域別延べ宿泊者数に外国人が占める比率ベスト10は、沖縄県中部(うるま・読谷・北谷)が2023年のベスト10圏外から2024年には4位に入り、北海道石狩(札幌・千歳)が9位からベスト10圏外となったが、それ以外の地域は順位の変動はあっても顔ぶれは同じである。
2024年には、東京23区、京都市で外国人が占める比率が50%を超えており、大阪市も50%近くになっている。これらの地域は日本人の延べ宿泊者数も多い地域であるが、インバウンド客増加により宿泊単価が上昇し、日本人が宿泊しにくい地域となっている可能性が懸念される。
2024年に外国人が占める比率8位の北海道後志(小樽・ニセコ)は外国人の延べ宿泊者数では130地域中14位、比率9位の熊本県阿蘇は同31位、比率10位の岐阜県飛騨(高山・飛騨・下呂)は同16位であり、比率が高いだけではなく数もベスト50位以内となっており、インバウンド客人気が相対的に高い地域と言えそうである。白川郷などの世界的知名度の高い観光地、アニメやドラマの聖地、などの要素が関係していると考えられる。
これらの地域は宿泊設備や外国人向け観光案内等々の整備などを通じて、インバウンド客をさらに増加させる潜在力があると言えよう。ただし、インバウンド客に目が行き過ぎて、日本人客を蔑ろにするようであれば、持続可能性は危ういものとなることを念頭に置くのが望ましい。
表5:地域別延べ宿泊者数に外国人が占める比率ベスト10

まとめ
観光庁「宿泊旅行統計調査」の参考表だけでも、多くの示唆が得られる。観光庁自体は2008年設置と官公庁の中では比較的新しく、観光関連統計も発展途上とも言えるが、関連統計を活用すれば多くの気づきが得られるであろう。日本人客にとってもインバウンド客にとってもより良い観光の在り方が実現していくよう望まれる。
なお、観光については、「日本の『遊び心』再考-ソフト・パワーの積極活用-」(2023年4月12日)、「観光は成長産業かつソフト・パワー」(2023年7月28日)、「祭りは元気を伝播する」(2023年8月18日)等もご参照。また、観光客の移動に関連して、「リニア、新幹線は変革の基盤」(2023年10月27日)等ご参照。
【参考】広域市町村130区分表(抜粋)
本表では、本稿の表で掲載した地域を抜粋している。全地域については、観光庁「宿泊旅行統計調査」「【参考表】 広域市町村(130区分)別集計」の元データファイルの「広域市町村130区分表」を参照されたい。
【参考】:広域市町村130区分表(抜粋)

注2:東京23区、横浜・川崎など名称で市区町村が明確になっているものは割愛。
出所:国土交通省 観光庁「宿泊旅行統計調査」より筆者作成
表1の注
注1:延べ宿泊者数は宿泊した人の宿泊数の合計。
注2:割合は全国計に占める値。
注3:地域別順番は2024年の順位で並べている。
表2の注
注1:延べ宿泊者数は宿泊した人の宿泊数の合計。
注2:割合は全国計に占める値。
注3:地域別順番は2024年の順位で並べている。
注4:出所資料では、延べ宿泊者数全体と、内数としての外国人延べ宿泊者数のみ表章されているので、日本人の延べ宿泊者数については、その差の計算値である。
表3の注
注1:延べ宿泊者数は宿泊した人の宿泊数の合計。
注2:比率は各地域の延べ宿泊者数に占める日本人の値。
注3:地域別順番は2024年の順位で並べている。
注4:出所資料では、延べ宿泊者数全体と、内数としての外国人延べ宿泊者数のみ表章されているので、日本人の延べ宿泊者数については、その差の計算値である。
表4の注
注1:延べ宿泊者数は宿泊した人の宿泊数の合計。
注2:割合は全国計に占める値。
注3:地域別順番は2024年の順位で並べている。
表5の注
注1:延べ宿泊者数は宿泊した人の宿泊数の合計。
注2:比率は各地域の延べ宿泊者数に占める外国人の値。
注3:地域別順番は2024年の順位で並べている。
20251229 執筆 主席研究員 中里幸聖
前回レポート:
「高市総合経済対策への期待-戦略17分野は的確-」(2025年12月11日)
