小説 高校生戦隊ヒーローズ 25. お泊り2
( お泊り1 ) の続き
談話室で一ノ瀬、海斗、蒼真先輩とドンジャラに興じることしばし。
合間の雑談や、時にゲームを小休止しての会話で、一ノ瀬がなぜ朱雀寮に泊まることになったかを海斗と蒼真先輩に説明した。
一ノ瀬が指導役の先輩に不当な扱いを受けていること、さっき春行先輩に相談したらひとまず今夜は朱雀寮に留まることになったこと、今は春行先輩と中野先輩が玄武寮に行っていること。
話の内容は深刻だが、一ノ瀬が受けた仕打ちはぼかして説明したこと(そもそも僕は一ノ瀬が受けた「エッチなこと」が具体的に何なのか把握していないので説明のしようがない)、当の一ノ瀬が悩みを相談できて解決の見込みが出てきたことに安堵したのか楽しそうなので、ドンジャラを囲む僕たちの雰囲気は明るかった。
夕食の時間が近づき、談話室に人が増えてくると、楽しげに「どんじゃらー!」と叫んでる僕たちの周りにも何人か人が集まってきた。
ゲームの様子を見ながら雑談をしたり、見かけない顔の一ノ瀬に気づいて話しかけてきたり。
「へえ、玄武寮生か。」
「部活は?そうか野球部か。」
「ああ、さっき4階の空き部屋掃除してたのって、今夜朱雀寮に泊まるからか。」
そうして周りに集まってきていた寮生たちも、6時になると一斉にぞろぞろ食堂の方に移動する。なにしろ全員男子高校生、しかも普段から身体を鍛えている士官候補生なのだから、食欲の塊みたいなものだ。ごはんを最優先するのは道理である。
僕は海斗と蒼真先輩の方を見る。
「僕たち、7時までは春行先輩が戻ってくるの、待とうと思っていますんで。気にせず食事、行ってください。」
そう言ったのだが、海斗と蒼真先輩は顔を見合わせ、何やらアイコンタクトした後、海斗がこちらを向いて言う。
「いや、俺たちも待つよ。」
蒼真先輩もにやっと笑って言う。
「勝負も、まだついてないしな!さて、続きやるか!」
そうして僕たちはゲームを再開した。
人気のなくなった、でも隣の食堂からわいわいにぎやかな声が聞こえてくる談話室で。
春行先輩と中野先輩が談話室にやってきたのは、7時5分前だった。
「盛り上がってるな。」
いつの間にかゲームに熱中していて春行先輩がそう声をかけてくるまで気づかなかった。
「あ、お帰りなさい!」
「お疲れ様です。」
「おう、なんか大変だったみたいだな。」
先輩たちに気づいた僕たちは口々に声をかける。
春行先輩は頷き、一ノ瀬を見る。
「玄武寮の寮監と話をしてきた。もう心配しなくてもだいじょうぶだ。詳しいことは、夕食の後に話そう。」
一ノ瀬はほっとした表情を見せ、立ち上がって春行先輩と中野先輩に頭を下げる。「ありがとうございました!」
それを見ていた蒼真先輩も立ち上がる。
「おっ、さすが春行、一件落着、ってところだな。さてそれじゃ・・・腹も減ったし、メシに行くか!」
ゲームは途中だったが、海斗と僕で急いでドンジャラを片付け、6人で食堂に向かった。
夕食のメニューは、押麦のたっぷり入った白いごはん、長ネギと豆富のお味噌汁、鯵のお刺身、茄子の味噌炒め、それにスイカだった。
「スイカだー!」
歓声を上げる僕に、みんなが笑う。
「滝川、甘夏だけじゃなくて、スイカも好きなんだね。」と一ノ瀬。
「おまえの好きそうなもの、だいたいわかってきた。」と海斗。
「肉も食べないと大きくなれないぞ?」と蒼真先輩。
ひとまず「これから大きくなるんです!」と蒼真先輩に返してから、さらに続ける。
「初物ですよ、きっと!食べると寿命が75日伸びるんですよ!
まだ6月も前半だから、産地どこかな、帝都の近くだと、千葉県産かな?茨城県産かな?」
僕が商家の出身であることを承知済みの朱雀寮生たちは慣れたものだと思うが、一ノ瀬は情報としては知っていてもそれがどういう言動に結びつくかはまだ理解していないようで、「滝川、食事のたびにそんなこと考えてるの・・・?」と言っている。
勝手知ったる様子の蒼真先輩や中野先輩が、「そういうことだな。」「ま、軍学校では珍しいタイプの生き物だからな。」とか言っている。中野先輩、言うに事欠いて「生き物」って・・・そういうところですよ、お口が悪いと言われるのは!
そんな、おそらく初物であろうスイカ付きの夕食を済ませて食堂を出る。
「一ノ瀬、運営委員会室で説明をするから。中野も来てくれ。」
そう言う春行先輩に一ノ瀬と中野先輩が『はい。』と返事をする。
僕は一ノ瀬に声をかける。
「お話終わったら、いっしょにお風呂に行こう!部屋で、待ってるから!」
「うん。」と頷いて春行先輩たちといっしょに運営委員会室に向かう一ノ瀬と別れ、僕は海斗と雑談しながら自室に戻った。
( お泊り3 )に続く
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