小説 高校生戦隊ヒーローズ 24. お泊り1
朱雀寮運営委員会室の続き
自室に戻り、休憩すること30分弱。
部屋のドアをノックする音とともに「行人、いるか?」と中野先輩の声。
「はい、いますよ。」とドアを開ける。
「話終わったから呼びに来たぞ、運営委員会室に戻ろう。」
そう言う先輩に「はい」と返事をしていっしょに運営委員会室に戻る。戻る道すがら、先輩に話しかける。
「先輩、先輩、一ノ瀬がおじぎした時アホ毛ひょこひょこしてておもしろかったですよね!」
そう言うと先輩は吹き出す。
「あははっ!まあ、なかなか特徴的で目立つ跳ねだよな。でもどっちかと言うとその表現の方がウケたけどな!」
「でもアホ毛もおもしろいですよね?」
「まあ・・・否定はしない。」
「ひょこひょこ。」
「やめろって、一ノ瀬の顔見たら笑っちゃいそうだろ~?」
と、そんなバカ話をしながら運営委員会室に戻る。
ノックをして「ただいま戻りました。」とドアを開ける中野先輩に続いて部屋に入ると、僕と中野先輩が雑談に興じたのと同じように一ノ瀬と春行先輩も雑談していたようで、2人の間には穏やかな雰囲気が漂っていた。
「とりあえず、2人とも座ってくれ。」
と春行先輩が言うので手近な椅子に座る。春行先輩は僕の方を向いて説明してくれる。
「とりあえず今夜は一ノ瀬は朱雀寮に泊ることになった。俺と中野はこれから玄武寮に行って、一ノ瀬の指導役の3年と寮監の先生と話をしてくるから、行人、泊まりの準備頼んでいいか?」
お泊り!
悩みを抱えている一ノ瀬には悪いが、お泊りという言葉に僕は楽しくなってしまった。
「はい!お任せください!」
そういう僕に春行先輩は頷いて説明してくれる。
「どの部屋を使うかは管理人さんに相談してくれ。シーツとか予備の寝間着とかも、管理人さんに聞けばわかるはずだ。あと、食堂の調理師さんにお願いして今日の夕食と明日の朝食、1人分追加してもらってくれ。」
「わかりました!」
「俺たちは帰り遅くなりそうだから。今日はいっしょに夕飯を食べれないかもしれない。」
僕が思っているより事態は深刻、ということだろうか?
「・・・そうなんですか?」
春行先輩、続けて中野先輩を見て僕が尋ねると2人とも重々しく頷く。
「わかりました、一ノ瀬といっしょに食べます、でも7時までは待ってますね!いいよね、一ノ瀬?」
夕食は6時からで、僕と春行先輩は日曜日はいつも6時に一緒に夕食を取っている。7時まで待っているとおなかぐうぐう鳴りそうだが、平日はなかなか時間が合わないため1週間に一度の機会である。できればいっしょに食べたい。
僕の主張に春行先輩も一ノ瀬も笑って頷いた。
そして僕たちは運営委員会室を出る。
「それじゃ、行ってくるな。」
と玄関に向かう先輩たちに「はーい、行ってらっしゃい。」と返事をし、僕は一ノ瀬を伴って管理人室に向かった。
管理人さんに事情を説明し、空いている4階の一室の鍵を借りた。
食堂に行って調理師さんに今日の夕食と明日の朝食、1食分の追加もお願いした。
あとは借りた部屋を整えるだけだ。
一ノ瀬を伴い、寮の階段を昇る。
「おっ泊まり、おっ泊まり~。」
「滝川、楽しそうだね?」
「うん!だって、友達が泊まりがけで遊びに来るみたいな、そんなわくわく感、しない?」
僕がうきうき答えると一ノ瀬も笑う。
「遊びに来たわけじゃ、ないけどね?」
「でも、お部屋整えたら、夕飯まで時間あるし、遊ぶよね?」
「そうだね、せっかくだし。」
「そうそう、せっかくだし。」
こうして遊ぶ約束を取り付けた僕はうきうきした気分のまま一ノ瀬に割り当てられた部屋の鍵を開けて中に入ったのだが・・・
「暑い・・・。」
「そうだね・・・。」
北向きの部屋ではあるが、ずっと閉め切っていたせいかかなり熱気が籠っていた。すぐに窓を全開する。
「ありゃ、網戸の網がちょっと外れちゃってるよ、これじゃ虫の出入り自由じゃん、あとで管理人さんに言っとかないと。」
窓は北側に1か所、東西は隣室との間の壁になっているので、空気を入れ替えるために入り口のドアはドアストッパーで開けっ放しにし、ついでに廊下の突きあたりにある窓も全開した。
そうして部屋に風が通ると今度は風に煽られて埃が舞う。
「・・・ちょっと、お掃除しようか。」
「うん、そうしてもらえると、助かる。」
それから30分弱、僕と一ノ瀬は2人で部屋を掃除したり、シーツや枕、寝間着を運び込んだり、ベッドを整えたりした。すぐに遊ぶつもり満々だったのだが、意外とやることがある。子どもの頃、家に友達が泊まりに来た時は、僕たちは遊んでばかりでこんな準備はしなかった。家政婦さんがやってくれてたんだろう。
実家を出ると、いろいろ気づくことが多い。
夕方5時前には一ノ瀬が泊まれる準備が完了した。
「さて、じゃ、遊ぼうか!」
と僕は一ノ瀬を連れて2階に降り、海斗の部屋のドアをノックする。
「海斗、いるー?」
すぐに応えがあり、ドアが開いて海斗が出てくる。
「行人、補習お疲れ。隣の子は?」
一ノ瀬を見て言う。
青い制服を着ているのだから同じ士官学校の同級生だというのは分かるだろうに、小柄な一ノ瀬を見て「隣の子」と言う単語が自然に出てくるあたり、お兄さん気質だなあと思う。僕のことも同じような目で見ていそうである。僕と一ノ瀬は背丈も体格も同じくらいで、海斗は僕たちより頭ひとつ分くらい背が高いから。
「今日、いっしょに数学の補習受けてた。6組の一ノ瀬。玄武寮生。今日は朱雀寮にお泊りするんだよ。」
海斗にそう言った後、今度は一ノ瀬に海斗を紹介する。
「オレと同じサッカー部で2組の黒田。オレの親友。」
僕がそう言うと海斗はくすぐったそうな顔をした後、一ノ瀬と「よろしく」と挨拶する。
「というわけだから、遊ぼ!」
僕がそう言った時、部屋の奥にいた蒼真先輩が興味津々な表情で近づいてきた。
「珍しいな他の寮の寮生が泊まるなんて。」
「そうなんですか?」
春行先輩がなんでもないことのように言っていたから、わりとあることなのかと思っていた。
「少なくとも俺が知る限り、そういうことはなかったな。何か、あったのか?」
そう尋ねてくる蒼真先輩に、
「そのあたりは遊びながら追々・・・せっかくだし蒼真先輩もいっしょにどうですか?あ、4人いるんだからドンジャラしませんか、ドンジャラ!」
と僕が提案すると、蒼真先輩は頷く。
「ああ、それじゃ混ぜてもらおうかな。」
「あ、じゃ、先に談話室行っててもらえます?一ノ瀬もいっしょに。部屋に、春行先輩への伝言メモ残してくるんで。」
談話室に向かう3人といったん別れて僕は自室に戻り、春行先輩の机にメモを残した。「一ノ瀬、海斗、蒼真先輩といっしょに談話室にいます。帰ってきたら談話室に来てもらえますか?いっしょに夕ご飯食べましょう。」
それから1階の談話室に行くとすでに3人はドンジャラがセットされた卓を囲んでいた。僕もそこに混ざる。
日曜日の夕方、夕食までのひととき。
しばらく僕たちはドンジャラに興じた。
( お泊り2 )に続く
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