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【すっぱいチェリーたち🍒】スピンオフ 多さわこ(おおのさわこ)編 ⑯


こちらの記事は、仲良くさせてもらっているうりもさんの企画に乗っかって書いています。

▼ プロローグはこちら。

▼ スピンオフ さわこ編 前回の第⑮話はこちら。

▼▼▼ こちらの記事も参考にどうぞ。


クリスマスと開花


12月の第3週。
来週をクリスマスに控えて、田梨木高校でも構内はクリスマス気分が蔓延してきていた。

同時に、不思議な噂話もまことしやかに囁かれていた。

裏庭の田梨木様に願い事のメモを置いておくと叶うらしい・・・。

そんな噂だ。

田梨木様というのは、小さな祠の事だ。

田梨木様のイメージ
Small shrines that remind us the importance of nature | 自然の大切さを思い出させてくれる小さな祠(ほこら)より

噂では、正しい作法はこうだ。

新しい花(種類はなんでもいいらしい)と新しい水を用意して、置石の下に願い事を書いたメモを挟んで置いておく。

しかも、水は水無瀬みなせ神宮の離宮りきゅうの水であれば尚よい、との事。理由はわからない。

実際に、願いが叶ったという話もあるとかないとかで、縁結びの願いも叶うとか・・・。

( 肘をついて腕を組んだエスが、縁結びなんて依頼受けてないけど?・・・とMr.Yミスターワイの報告を聞いて否定している )

また、この噂と前後して、不審人物の目撃談を聞かれるようになった。

全身黒タイツに身を包んだ、ゴリラのような生物。
人間にも見えるが、ゴリラによく似たUMAユーマ(Unidentified Mysterious Animal)だろう、というもっぱらの噂だ。

そんな嘘か本当かわからないような噂話が拡がりそうでかき消されていくように、学校のあちこちでクリスマスに向けたイベントや小さな行事が企画されていく。

その中でも目玉になるのが、毎年恒例の田梨木高校クリリスマ会だ。

そう、クリスマス会ではなくて、クリリスマ会。
このイベントの創設時、会の看板作成を担当していた数名の教師がお酒に酔った状態で看板を作ってしまい、その時の誤植がそのまま会の名称として引き継がれてきたという。嘘か本当かはわからないが、もうすでに定着している。

おおのさわこは、クリリスマ会では小室哲子の仕掛ける喫茶店のお手伝いをする事にしている。

文化祭で、おばあちゃんのメイド姿が結構評判がよかったので、クリリスマ会の喫茶店でも披露してもらい事にしている。

おばあちゃんもメイド服を着るのが楽しみなのか、ウキウキしていた。
ちょっと血圧が上がりすぎないか心配なさわこだった。

メイド服は貝差彩子や大門寺ナナコといった、一軍女子の何人かが着てくれることにもなっている。

喫茶店の会場は、体育館に決めて下見も既に終わらせていて、25日の当日に向けて着々と準備が進んでいる。

体育館のステージは、ミスチェリ等のバンドが演奏で使う事になっていて、そちらの準備も大忙しだ。

またみんなと一緒に何かできる事が、さわこにはとっても楽しみだった。



吉田吉夫は、考え込んでいた。

こんなに深く考え込んだ事は、もしかしたら初めてかもしれない。
垣野先生の授業も頭に入ってこない・・・。

大抵の事は、AIに聞けば客観的で的確なアドバイスがすぐに貰えるので対して問題にはならない。

伸び悩んでいる学力も、本気を出せばなんとでもなる。

オカンのベースをゲットして以降、ミスチェリのベースとしてベースの練習に明け暮れてきた。自分でもかなりの腕前になったと自画自賛している。

おかげでお笑い研究の方がイマイチだ。
なんというか、最近はお笑いの方に中々身が入らない。

やはり、バンドでモテ始めたのが原因じゃないかと思う。

実は、あまりメンバーには言っていないのだが、下級生の女の子からちょいちょい告白されている。
ラブレターも貰ったし、体育館裏に呼ばれた事もある。

それで自分でもはっきり分かった事がある。
告白されても全然ドキドキしない事に。

これにはいくつかの可能性があるが、自分なりに分析すると、おそらく僕は年下に興味がないようだ。

実際、かなり可愛い子に告白された時は、どうなるかと自分の心境に興味津々だったのだが、全然ドキドキしなかった。
ライブの時の方がかなりドキドキしたし、興奮もした。

可愛い下級生を振るのは心苦しいが、叶わない事で無駄な時間を使って欲しくもないので、年下には興味ないんで、とハッキリ言うようにしている。

みんなメッチャ泣いて走り去って行くので凄い悪いことしている気持ちになる。なんでだろう。

バンドを始めたきっかけは、モテたかったからだ。
だから、今の状況を考えると願いは叶っている・・・はずなのに、何の達成感もない。

なぜか・・・。

そう、モテる対象を見誤っていた。
オレは、年上の綺麗なお姉さんにモテたいようだ。

もう高校生とか大学生とか、そんなレベルじゃない。
女教師とか女医とか女検事とか、なんかそういうお堅い職業のOLさんにモテたい気がする・・・。

そう、以前社会福祉士の賀田さんと一緒に学校に介護関係で来てくれていた介護福祉士の蓏萌うりもさんもシンプルに綺麗だった。

こないだ、ほっしーとそういう話をしたときに改めてその疑惑は確信になった。その時の会話を思い出す。

ほ「よっしー、バンドさぁ〜文化祭で盛り上がったやん」
よ「そうやなぁ」
ほ「バンドってモテるはずやん」
よ「そうやなぁ」
ほ「全然モテてへんやん!」
よ「そうやなぁ」
ほ「全然モテる気ないやん!よっしーは誰か気になる子とかおらへんの?」
よ「そうやなぁ…どちらかというと年上がええかな」
ほ「年上?俺ら高2やから高3ってこと?」
よ「いや、もっと上やな」
ほ「上⁉︎」
よ「茶保先生は…」
ほ「先生かい!」
よ「バンドのこと気にかけてくれてよう見に来てくれた時は燃えたよね。おしゃべりだけど話がオモロしね。お笑いのツボ押さえてるわ。ずっと聞いてても飽きないもの。勉強熱心だから子育てとか一緒にやったら楽しそうやん。苦しいことあっても乗り越えれそう。あとシンプルに綺麗やん」
ほ「茶保先生はマシンガントークやけどな。ようみると綺麗やしな」
よ「油木先生は…」
ほ「茶保先生だけやないんかい!」
よ「油木先生はとにかく笑ってくれるやん。阿久から教えてもらった起立→礼→着陸の時、誰よりも笑ってくれてたのがホント自信になったわ〜。将来結婚するとしたらお笑いのセンスって結構重要やと思うで。教室入ってくる時にヤッホーって言って入ってくるやん。あれエエねんな。子どもができたら一緒に楽しく遊んでくれそう。あとシンプルに綺麗やん」

確か、こんな調子だった。
この時に確信した。
僕は、大人のお姉さんにモテたい。
特に、シンプルに綺麗なお姉さんが好きな事に。

そして、そんなシンプルに綺麗なお姉さんにモテるために必要な事は、ただ一つ。

僕自身がシンプルに良い男になるしかない訳だ。

フフフ・・・。

そうして気が付くと、教室には誰もいなかった。
次の体育の授業がもう始まっていた。




学校帰り、今日は賀田さんと一緒だ。
ちょっと軽く何か食べて行こうか・・・と賀田さんがクッマに誘ってくれた。

もう嬉しくて何が何だか分からないまま、いつのまにか注文していつの間にかテーブルに座って、いつの間にかポテトを一緒に食べていた。

何気ない会話の中で、賀田さんも楽しそうにしてくれている。
賀田さんと一緒の時は、髪型もかえて白いシュシュとつけている。
気が付いてくれているのかな・・・。

ドキドキしながら賀田さんが楽しそうに話す仕事の話とか、将来やりたい事とか、マネジメントの話とか、ちょっと難しくてよくわからない話もあるけど、ぜんぜん苦にならないのでいつまでも聞いていられる、そんな気がしていた。

さわこちゃん、進路はきまったの?
いつも賀田さんは優しく聞いてくれる。

どうやら年末にかけて本当に大忙しになるので、もうほとんど学校には顔を出せないらしい。
だから、ほとんど会えなくなるので、こうして一緒に過ごせる時間を作ってくれたのかもしれない。

将来の進路とか全然考えてなかったので、ちょっとドキッとした。
そういう事もちゃんと考えておかないとダメだよ、と暗に言われているように感じた。

こんなフワフワした気持ちで居たらダメなのかな・・・

なんて思っていると、賀田さんの次の質問でさわこの頭は真っ白になった。

『 さわこちゃんは、誰か好きな人とかいるの? 』



もう夜も更けてしまっている。

さわこはいつ帰って来たのかも、どうやって帰って来たのかもあんまりはっきり覚えていない。

ため息ばかり出る。

はぁ、・・・なんであんなこと・・・

もう後悔しかない。
そう、ずっと自分だけの心の内に置いておこうと思っていた事だから、今更ショックを受ける事もないのに、なんでこんなに苦しいのだろう・・・

賀田さんに、誰か好きな人がいるのかどうか急に聞かれてしまったので、本当に頭が真っ白になってしまった。

その時の事を思い出すだけで、また改めて恥ずかしい・・・。

『 あ・・・あの・・・は・・・はい・・・ 』
『 あ!いるんだぁ、結構意外だなぁ、僕も知ってる人? 』
『 い、いま・・・す、います。し・・・てると、思い・・・ます・・』
『 えー!だれだれ?教えてよ~ 』

じーっとこっちを見て、賀田さんが楽しそうに聞いてくる。

えー・・・言っちゃうの?
ほんとのこと・・・言っていいの?
でもでも、言ったらダメな気がするし、このキモチは秘密にしておくつもりだったから・・・

ずいぶん悩んでいたような気もするし、一瞬の事だったような気もする。

『 あの、その・・・よ、よ・・・ 』
『 あぁ! ヨメン君だ! 彼カッコいいもんね! 』

カーッと顔が熱くなる。
もう自分が何を言ってどんな反応をしているかもわからない。
心臓がバクバクして口から出てきそうだ。

ヨメン君もカッコいいけど、賀田さんの事の方が好きなんです!
喉元までそんなセリフが出てきていたが、なぜかそれは言ってはいけないような気がして飲み込んだ。

そう、私の事なんて何とも思ってないから、そういう質問が出来るんだよ。
そうに違いない・・・。

そう思い込むようにして、自分を納得させて、そのまま静かに頷いた。
もう、賀田さんの顔は見れなかった。
泣いてしまいそうで。

『 しばらく忙しくなるから会えないけど、また時々学校に様子見に行くからね。 』

賀田さんはそんなことを言って帰っていった。

もうだめだ、早く賀田さんの事は忘れよう・・・
そう思えば思うほど、賀田さんへの想いが強くなってしまう。

眠れない日が続いくさわこだった。


クリリスマ会まで、あと5日。
さわこの片思いが終わるまで、あと5日。




つづく

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今回は、以下の方に登場してもらいました。

▼ 宇利盛男役+エージェント・ゴリラ役のうりもさん

▼ 吉田吉夫役+賀田さん役のよしよしさん

▼ 貝差彩子役の彩夏さん

▼ 保志田役のほっしーさん

▼ 小室哲子役のT Kさん

▼ 大門寺ナナコ役のだいなさん

▼ 垣野先生役の書きのたね。ブルボンヌ。さん

▼ 油木先生役のゆきママ@男の子4人育児さん

▼ 茶保先生役のちゃぼはちさん


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