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【すっぱいチェリーたち🍒】スピンオフ 多さわこ(おおのさわこ)編 ⑮


こちらの記事は、仲良くさせてもらっているうりもさんの企画に乗っかって書いています。

▼ プロローグはこちら。

▼ スピンオフ さわこ編 前回の第⑭話はこちら。

▼▼▼ 今回は、以下の記事の直後か直前のお話となりますので、ご参照くださいませ。


のど自慢大会と花芽


さわこはのど自慢の会場である町役場へ急いでいた。

開演までまだ時間はある。 
友美ちゃんが入院してしまったので、哲子ちゃんが舞台に立つ事になった。
友美ちゃん応援団は、急遽の変更に対応すべく短い時間でそれぞれが力を出し尽くした。

文化祭の劇、その再演をやり遂げてきたので、どんなことでも乗り越えられる、なんとかなる。
1人では無理でも仲間がいればやり遂げられる。
2年A組は、そんなクラスになっていた。

のど自慢は日曜日のイベントなので、参加できないクラスメイトも居たし、会場のキャパシティの問題で会場内で応援できないクラスメイトも多く出た。
さわこもその1人だったので、徹子ちゃんに会えるうちに、どうしても渡しておきたい物があった。

おばあちゃんの所に寄っていたら少し遅くなってしまった。

でも、おばあちゃんにかんざしを借りる事ができた。

五十鈴いすずかんざし
おばあちゃんが大切にしまっていた宝物のひとつ。

一本軸の玉簪たまかんざしで簪の本体は銀製で、飾り玉の部分は五十鈴になっている。

きっと、哲子ちゃんの着物にぴったりだよ。

一本軸の玉簪
かふぇきもの Cafekimono
神 代 の 神 ​宝 ​五十鈴
天 河 大 辨 財 天 社



ステージの上で小室哲子は緊張していた。

友美は、適当に空いてる客席をみてたら大丈夫だよ、なんてことを言ってくれてたのに・・・空いた客席なんかないじゃない!

会場いっぱいの人がこっちを見ている・・・。
あぁ・・・ドキドキしすぎて何がなんだかわからない。

司会の人が何か言ってる。

どうしようどうしようどうしよう。
上手に出来るかな、うまく歌えるかな・・・。
友美と保志田くんがテレビで見てくれてるのに、変な所見せられないじゃない・・・。

着物の袖をぎゅっと握る。
みんなが選んでくれた衣装。すっごく気に入っている。
みんなが応援してくれてるような気がして、少し勇気がわいてきた。

その時、簪の鈴の音が小さく響く。
変った三つの鈴が丸く連なっているので、不思議な音色。
さわこちゃんがおばあちゃんから借りてきてくれた簪。
みんなが応援してくれている。

会場の方を見ると、相変わらずの超満員の客席。
のど自慢大会だもん、そりゃいっぱい来るよね。
あぁ、どこ見て歌ったらいいのよぅ・・・。

その時、客席の奥の方で旗が振られている事に気が付いた。
手作りの旗で、哲子ちゃんがんばれ!!・・・と書いてある。
哲子ちゃんの哲子の部分だけ、真新しい布が上から貼り付けられているようだ。

その旗を、宇利くんと吉田くんと阿久くんが三人で支えて揺らしている。
いや、吉田くんと阿久くんの上にゴリラがのってウホウホ旗を持って遊んでいるようにも見える。

ちょっと、なにそれおっかしい!(笑)

今まで緊張していたのが嘘みたいに静まっていく。

関係者として一緒に来てくれた千代子や風歌や壽賀美が応援してくれている。さっきまで何も聞こえなかったのに、彼女たちの声援がしっかり聞こえてくる。

いよいよ出番だ。

『 てーつーこぉー 』

クラスのみんなの声援が聞こえる。
みんなの声がほっとする。

よし、私は大丈夫。



文化祭も終わり、のど自慢大会も終わり、街は普段の様相を取り戻していた。

さわこは、久しぶりに一人で週末を過ごしていた。
これまでは、ほとんど毎日賀田さんと介護の事や世間話をしたりして、週末は一緒にお茶をしたり買い物をしたりして過ごしていた。

年末という事もあって、仕事もいろいろと忙しくなってきたらしく、学校に来て学生にいろいろ教えてくれたりする時間もずいぶん短くなってしまっていた。当然、さわこと一緒に過ごす時間も短くなっている。

おばあちゃんの事や、地域の事など、田梨木高校での取り組みもほとんど軌道に乗って来たので、賀田さん自身が出張ってきて調整する意味もほとんどなくなってきたらしい。

それはそれで良い事なのだが、賀田さんと会えなくなるのはさみしい・・・のだが、さわこはさわこで、学校内で密に活動を開始した秘密探偵部の活動も忙しくなってきていたので丁度良かった。

最初の依頼は、1年生が父親から誕生部に貰ったという万年筆の捜索だった。

結構ドキドキして楽しかったな・・・。

構成員以外には秘密探偵部の存在自体がバレないように捜索をしなければならない、というのがさわこにはたまらなくスリリングで楽しく感じられた。

また、次の依頼がこないかな・・・。

今日は、クッマでランチをして、駅前の家具屋さんに行こう。
家具を買う予定はないが、いろいろな家具を見ているだけて楽しいし、この引き出しにはあんな工夫やこんな仕掛けがつけれるかな・・・とか考えるのも楽しい。

商店街や繁華街に近付くと、街並みがだんだんとクリスマスの雰囲気に変わってきていた。

クリスマス。
さわこにとっては、サンタさんがプレゼントを買ってきてくれる日なのだが、両親が失踪してからはサンタさんにお願いごとを出来る方法がなくてしばらくプレゼントが貰えていない。

あーぁ、もっと早くにお母さんにサンタさんの連絡先を聞いとけばよかったなぁ・・・。

手紙を送らないと、サンタさんはプレゼント買ってきてくれない。
いつもさわこが書いた手紙は、お母さんがサンタさんに送ってくれていた。

クリスマスの朝、枕元に置いてあるプレゼントの包装紙の香りがさわこは大好きだった。

サンタさんへの手紙・・・どうにかして届ける方法はないのかしら・・・

ちょっと真剣に悩むさわこだった。



公園には、宇利爽と黒猫が、いつものようにゴミ拾いをしていた。

普段はあまりゴミも少ない公園なのだが、最近は少しずつ増えてきている。

誰がゴミを捨てていくんだよ・・・
とプンスカしながらゴミを拾っていく爽の後を、黒猫のウーリーがついて歩いてる。

・・・ったく、これだから大人ってのはどうしようもない。
主に兄である盛男を想像しながら悪態をついている爽であった。

だいたいが、なんで失恋した時の空缶とか大事に飾ってんだよ、変態かよ。
主に兄である盛男を想像しながら悪態をつづける。

調子に乗ってサインなんか書きやがって・・・。
なんだよあのサイン色紙、白紙の色紙が天井まで届きそうじゃねーか。
主に兄である盛男を想像しながら文句を続ける。

劇の主役とかバンドとかで調子乗ってんな、のど自慢でも目立ってたし。
もう普通に兄貴だけに腹が立っていた。

こないだも、学校で拾ったメモ紙と祠みたいなヤツの話をしたら、オレにまかせとけ!って言ってどこかに走っていったもんな。
結局、あれはなんだったんだよ、馬鹿兄貴が!
ゴミを拾いつくしていつの間にか草を毟りながら腹を立てていた。

その時、背後で自転車がドリフトして停まる音が聞こえた。
ズサーっ!

『 爽ちゃんやん!ゴリラもおるな!! チュールいるか?  』

自転車を降りた貝差彩子が元気に声をかけて近づいてくる。
いつもの学生服と違って、私服姿の彩子は雰囲気が全然違う。

あれが・・・オトナの魅力というやつか・・・
爽は恐れおののいた。

彩子との会話は凄く楽しい。
ウーリーも彩子になついていてチュールを美味しそうにペロペロしている。

彩子が、周囲に誰もいない事を確認して、そっと爽に耳打ちをする。

『 なぁ爽ちゃん、ちょっと私、今度やる出し物の練習してんねんけど、聞いてもらってもええか? 』

彩子の表情は真剣だった。
これは、並大抵の芸の披露ではない・・・爽はそう確信した。

爽は、ゆっくりと大きく頷く。
隣でウーリーも一緒に頷いている。

『 よし、ええか、よーく聞いててや。ほんで、気になったとこあったら教えて欲しいねん! 』

彩子が表情をパッと明るくして少し離れた所に立ってこっちを向く。
両足を肩幅に開いて大きく息を吸っている・・・

次の瞬間、
『 メエェェェェェェェ! メエェエェェェェェェェェェ――――! 』

公園に羊の声が響き渡った。



珍しく日曜日に学校で用事を済ましてきた垣野先生は、いつもと気分を変えていつもと違うルートを徒歩で駅まで向かっていた。

サラサラのおかっぱヘアーをなびかせ、姿勢よく背筋を伸ばしてコツコツと規則正しいリズムを奏でながらヒールで歩いて行く。

もう12月で肌寒いが、今日は天気がよくて太陽の光が心地いい。
早く帰って昼間から和菓子の部屋着で金麦をキメるのも悪くないわね・・・。

なんてことを考えていたら、向こうの方から羊の鳴き声が聞こえる。

こんな街中で羊がいるの!?

羊の鳴く方へ、自然と足取りも早くなる。

規則正しいリズムを刻んでいたヒールの音が、どんどんと早くなっていく。



大門寺ナナコの日曜日は、大変忙しい。
まぁ、本人はそれを忙しいとは認識していないのだが。

朝からボイストレーニング、ピアノのレッスン、バレエ、日本舞踊、殺陣、茶道に華道、そして剣道にフェンシングと合気道。

それらのレッスンが終われば、映画を2本鑑賞して読書に時間を割く。

そんなハードスケジュールな大門寺ナナコが、少しのスキマ時間で継続している鍛錬がもう一つあった。

時間さえあれば一人防音室に籠って鍛錬を続けている。

大門寺ナナコが、いつも防音室で一人で何をしているのかは、まだ誰も知らない。



最初は一匹だった羊の鳴き声が、声の方向に近付くにつれて2匹になっていた。

羊の親子でもいるのかしら?

コツコツコツコツ・・・

角を曲がると、そこに公園が見えた。

羊の姿は見えないが、公園の向こうの方へ自転車で走り去る人影が見える。

公園に近付いて入ってみると、やはり羊はいなかった。

だが、一人の少女と黒猫が土管の前で、自転車で走り去っていく人影を見送っていた。

どうやらゴミ拾いをしていたようだ。
少女が持っているゴミ袋には、ゴミでいっぱいになっていた。

日曜日に公園でゴミ拾いだなんて・・・なんて素敵な少女なの!?
きっと前世でもかなりの徳を積んだに違いない。

少女に声をかけようと近づいていくと、少女が何か喋っている事に気が付く。

あら、独り言かしら?

だが、よく見ると、その少女は確かに黒猫と会話をしていた。
垣野先生には、黒猫が何をいっているのかわからないが、確かに二人は喋っているようだ。

こっ・・・これは・・・



日曜日の音楽室。

ミスチェリのメンバーが揃って練習を重ねている。

12月25日の田梨木高校独自の行事【クリリスマ会】。
そこで披露する楽曲の練習に余念がない。

文化祭で味を占め、小室哲子ののど自慢で触発され、今年最後のビッグイベントであるクリリスマ会で更に飛躍・・・いや、モテモテを確かなモノにしようとみんな必死だ。

クリスマス会は、毎年決まった内容でなく生徒たちがやりたいことを決めるイベントだ。
不良雄ふらお校長が、
『 将来ビジネスマンとして必要なのは“主体性“なんだ 』
・・・と口酸っぱく言っているのが、そのままイベントに活かせれている。

誰がどんな仕掛けて何を披露するかは、基本的には当日まで秘匿される。

ミスチェリが一番目立つ!
そしてモテる!
メンバ全員の下心が燃え上がっていた。

クリリスマ会まで、あと17日。
さわこの片思いが終わるまで、あと17日。





つづく

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今回は、以下の方に登場してもらいました。

▼ 宇利盛男役+黒猫役のうりもさん

▼ 吉田吉夫役+賀田さん役のよしよしさん

▼ 阿久佳祐役のアークンさん

▼ 貝差彩子役の彩夏さん

▼ 保志田役のほっしーさん

▼ 小室哲子役のT Kさん

▼ 大門寺ナナコ役のだいなさん

▼ 橋田壽賀美役のららみぃたんさん

▼ 千代子役のチョコさん

▼ 垣野先生役の書きのたね。ブルボンヌ。さん

▼ 八木風歌役の八風(やふー)さん

▼ 富良子不良雄役の脱サラ料理家 ふらおさん

▼ 宇利爽役のsou.さん


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