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若い先生の皆さんへ第2部<191>T(37)_【ゲーミフィケーションの本質】子どもを勉強に夢中にさせる「意味のある選択」のゲームデザインとは?

 「勉強を頑張ったらご褒美!」そのシール制度、本当に子どもの自発性を育てていますか?こんにちは、トビラAIです。今回は教師のスキルセットAtoZの「T;Teaching」の37回目をお届けいたします。前回はADDIEモデルの「D;デザイン」において、シールなどを使った「ご褒美」制度の効果は限定的だ、という話を諸々の論文を参考に紹介しました。これからしばらく「ゲーミフィケーション(Gamification)」を授業にデザインしていくかを考究していきます。前回を未読の方は以下をご覧くださいね。

それでは、よろしくお願いします。


この記事を読むとできるようになること

  • 「プレイ(自由な遊び)」と「ゲーム(構造化された問題解決)」の決定的な違いを論理的に説明できるようになります。

  • 単なる「ご褒美(シールやバッジ)」の付与が、なぜ自発的な学習動機に繋がらないのか、そのメカニズムを解明できます。

  • 子どもの有り余る生命エネルギーを正しい方向へ導くための、バランスの取れた授業・学習デザインの視点が身につきます。

  • 読了時間目安2分半です。 

 そもそもゲーミフィケーションとは何でしょうか?ペンシルベニア大学ウォートン校のKevin Werbach教授によると、「ゲームの要素やゲームデザインの手法を、ゲーム以外の文脈(非ゲームの領域)に応用すること」とされます。現実世界の課題解決やビジネスの成果を上げるために、人々を夢中にさせるゲームの仕組みを体系的に活用する手法として現在注目されている学問です。例によってCourseraで受講しました。めちゃくちゃ面白かったです。

 この講義の内容を皆さんに共有しながら、授業のデザインにどう応用していくべきかを考えていきたいと思います。

【ご褒美の罠】子どもが勉強を忘れて「シール集め」に没頭する致命的な理由

 これまでも小学生の家庭学習において、モチベーションを高めようと「勉強したページ数に応じてシールを貼る」というシステムを導入するケースは少なくありません。しかし、多くの場合で思わぬ落とし穴に直面します。それは、子どもが本来の目的である「学習内容の理解(本質的なプレファレンス)」を置き去りにして、「シール(目先の外発的報酬)」を集める単純作業に没頭してしまうという、恐ろしい「動機付けのバグ」です。

【遊びの科学】生命エネルギーの爆発?「プレイ(遊び)」が秘める圧倒的な自発性

 なぜ、このような現象が起きるのでしょうか。この子供の行動の背景を解き明かすためには、私たちが普段何気なく混同して使っている「プレイ(遊び)」と「ゲーム」という2つの概念の違いを明確に理解することが重要です。

フランスの知識人ロジェ・カイヨワは、この2つの概念の対比を、一方を「ルードゥス(ゲーム)」、もう一方を「パイディア(遊び)」と表現しました。

 まず「プレイ(遊び)」とは何でしょうか。哲学者のフリードリヒ・シラーは、遊びを「あふれんばかりの生命エネルギーの消費」であると論じました。また、サンタヤナという哲学者は「遊びとは、それ自体のために自発的に行われるものである」と述べています。さらに、教育理論に多大な影響を与えたレフ・ヴィゴツキーは、遊びが子供を「発達の最近接領域」へと導き、平均年齢以上の振る舞いを引き出す力があると指摘しました。そして、ゲームデザイナーのケイティ・サレンとエリック・ジマーマンによれば、「遊びとは、より強固な構造の内部における自由な動き」です。

 つまり、プレイの本質は「自由」であり、ある制限された世界の中で自分のやりたいことを試し、ただ純粋な楽しさのためにエネルギーを発散する行為なのです。子供がシール集めに熱中している状態は、まさにこの「プレイ」のエネルギーが爆発している状態と言えます。彼らはシールの台紙という構造の中で、シールを貼る、集めるという行為に純粋な楽しさを見出し、あふれるエネルギーを傾けているのです。

【ゲームデザイン】シド・マイヤーに学ぶ「意味のある選択の連続」という問題解決の仕組み

 一方で「ゲーム」とは、プレイとは大きく異なる性質を持っています。トレイシー・フラートンらは、ゲームを「プレイヤーを構造化された葛藤へと巻き込み、不均等な結果で結末を迎える、閉ざされたフォーマルなシステム」と定義しました。

 より本質を突いているのが、高名なゲーム開発者であるシド・マイヤーの言葉です。彼は「ゲームとは、意味のある選択の連続である」と語っています。ゲームとは、単なる作業の繰り返しではなく、プレイヤーの行動や選択が何らかの結果を生み出し、目標に向かって進んでいくための「問題解決のアクティビティ」なのです。トマス・マラビーもまた、ゲームを「解釈可能な結果を生み出す、作為的に仕組まれた偶発性の領域」と表現し、そこにはランダム性や選択の余地が組み込まれていると指摘しています。
なんとなく違いがわかりました?例によってQUIZです!

今回のQUIZ

以下のア〜カのうち、ゲーミフィケーションにおける「プレイ」の特徴を3つ挙げなさい。
 より強固な構造や一定の制限された環境の内部において、自分のやりたいことを試すことができる自由な動き
 自分の行動や選択が何らかの結果へと結びつき、目的を達成するために正しいアクションを選択するプロセス
 勝敗などの不均等な結末や、解釈可能な結果を導き出すもの
 明確な目的や外部からの見返りのためではなく、純粋にそれをすること自体の楽しさのために行われるもの
 溢れんばかりの生命エネルギーを発散・消費する自発的な行為
 プレイヤーを構造化された葛藤へと巻き込む、ルールや制約のある閉ざされたシステム 

考えてみてください。ちょっと難しいかもしれませんが頑張って!

【ゲーミフィケーションの誤解】なぜ「シールの付与」だけでは自発的な学習が生まれないのか?

 この観点から「ページ数に応じたシール付与」という仕組みを見直すと、そこに欠けているものが浮かび上がります。勉強のページ数をこなしてシールをもらうという行動には、「意味のある選択」が存在しません。ただ決められた量をこなすという一本道であり、試行錯誤や問題解決の要素が含まれていないのです。そのため、子供にとっては「学習」という行為自体がゲームとして成立しておらず、単に「シールをもらうための単純作業」と化してしまっているのです。

 哲学者バーナード・スーツは、ゲームを「不要な障害を自発的に乗り越える試み」と定義しました。また、ジェームズ・P・カースは「プレイしなければならない者は、プレイすることができない」と述べています。つまり、ゲームには絶対的に「自発性」が不可欠なのです
 もし学習が子供にとって「やらされているもの(強制)」である場合、それはそもそもゲームにはなり得ません。シールという報酬は、一時的な動機付けにはなりますが、学習内容そのものに対する「自発的な態度」を生み出すわけではないのです。

 また、優れたゲームをデザインする際の本質は「バランス」にあります。ルールという「構造」と、オープンエンドで自由な「探求の感覚(プレイ)」の間のバランスです。勉強のページ数をこなすという「構造」だけが強固に設定され、そこに知的な「探求の感覚」や「意味のある選択」が伴わなければ、子どもの有り余る「プレイ」のエネルギーは、最もわかりやすく自由を感じられる「シールの獲得」という別の対象へと向かってしまいます

意味のある選択の連続がないと、生産性のあるゲームにならない

 ポイントやバッジ(今回の場合はシール)、順位表といった要素は、たしかに強力な効果を持ちますが、それらを用意するだけで魔法のような効果が生まれるわけではありません。シール集めに子供が没頭してしまうのは、決して彼らの集中力がないわけでも、不真面目なわけでもありません。むしろ、彼らが本来備え持っている「プレイ」の生命エネルギーが、シールという対象に対して見事に発露した結果なのです。

 しかし、そこに「意味のある選択の連続」という「ゲーム」の構造が組み込まれていなかったため、そのエネルギーが学習内容そのものに向かわなかったというだけのことです。子供のモチベーションや行動を理解する上では、純粋で自由なエネルギーの爆発である「プレイ」と、構造化された問題解決の連続である「ゲーム」の違いを認識することが極めて重要です。この二つの概念の境界線を意識することで、なぜ彼らが目の前の作業に没頭しているのかを、より深く読み解くことができるでしょう。

 続きは明日にいたします。

QUIZの解答

ア より強固な構造や一定の制限された環境の内部において、自分のやりたいことを試すことができる自由な動き
エ 明確な目的や外部からの見返りのためではなく、純粋にそれをすること自体の楽しさのために行われるもの
オ 溢れんばかりの生命エネルギーを発散・消費する自発的な行為
でした。

ありがとうございました。
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感謝一入
Warm Regards,
トビラAI拝

参考文献

  • University of Pennsylvania"Gamefication"/Coursera

トビラAIプロフィール

※ 本稿では画像生成と文章の推敲に生成AIを使用しています。

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