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歯を失ってからの「もうひとつの世界」

【戸越銀座デンタルケアークリニック】院長の大澤広晃です。
今回は、多くの人が少しだけ触れるのをためらうテーマ「入れ歯」についてお話ししたいと思います。

「歯を失った人の世界」と聞くと、少し暗い印象を持たれるかもしれません。けれど、私はそうは思いません。

歯を失うことは、年齢や努力とはあまり関係がありません。
人生のどこかで病気になるように、歯を失うことも自然な流れのひとつです。

大切なのは、歯を失ったあとをどう生きるか。
入れ歯は、その“次のステージ”を支えるための、もうひとつの自分の歯なのです。


◼︎初めて「歯がない口」を見た子どもたちの驚き

私は地域の幼稚園や保育園で、毎年「歯についてのお話」をする機会があります。

そのときによく見せるのが、「歯がある口」と「歯がまったくない口(無歯顎)」の写真です。
これを見せると、子どもたちからこんな声があがります。

「歯を大切にしないと、こうなっちゃうの?」
「きょうからちゃんと歯磨きする!」

普段は見たことのない「歯のない口」は、子どもたちにとって衝撃的なようです。
でも、そうした“驚き”が、歯を大切にする第一歩になります。

歯が1本もない状態を、歯科では「無歯顎(むしがく)」と呼びます。

この場合、入れ歯(義歯)で噛む力を補います。
特に上の入れ歯は外れやすいのですが、熟練した歯科医が作ると、上顎にピタッと吸い付くように安定します。

そうなれば、ほとんどの食事を楽しむことができます。

◼︎「入れ歯はイヤ」というイメージの正体

入れ歯と聞くと、なんとなく「年を取った証拠」と感じたり、「見た目が気になる」と思う方も多いのではないでしょうか。
実際には、入れ歯を入れている方の多くが快適に生活しているのですが、ネガティブなイメージばかりが先行してしまっています。

この“苦手意識”の原因は、ほとんどが「想像」です。
実際に入れ歯を使ったことのない人が、「噛めない」「痛い」「外れる」といったイメージを広めてしまうのです。

そして最近では、インプラント治療の普及により、歯科の世界でも「入れ歯は時代遅れ」と思われがちになっているのも事実です。

しかし、入れ歯もインプラントも、どちらも「歯の欠損を補うための治療法」であり、どちらが優れているというものではありません。

それぞれに長所と短所があり、ライフスタイルやお口の状態によって最適解は異なります。
大切なのは、「どんな方法が自分に合うか」を自分自身で理解し、納得して選ぶことです。

◼︎入れ歯の魅力 「清潔で、手軽で、やさしい」

入れ歯の良い点を挙げてみましょう。

  1. 清潔に保ちやすい
     取り外して洗えるので、常に衛生的に使えます。固定式の歯のように磨き残しがたまることがありません。

  2. 虫歯や歯周病の心配がない
     総入れ歯の場合、人工の歯なので虫歯にはなりません。

  3. 歯並びが美しい
     人工の歯を並べて作るため、左右対称で自然な見た目に仕上がります。

  4. 治療期間が短い
     歯をほとんど削る必要がなく、数回の通院で完成します。

これらは、体への負担が少なく、どなたでも安心して始められるという大きなメリットです。

もちろんデメリットもあります。
「違和感がある」「外すのが恥ずかしい」「硬いものが食べにくい」などが挙げられますが、多くは“慣れ”と調整でカバーできるものです。

◼︎違和感を少なくする新しい入れ歯

入れ歯の「違和感」を減らすための技術も進化しています。
従来の保険の入れ歯では、強度を保つために床(ピンクの部分)を厚くする必要がありました。
そこで登場したのが、保険外治療による新しいタイプの義歯です。

たとえば、床の部分を薄い金属で作る「金属床義歯」は、強度を保ちながらも軽く薄く仕上がり、装着時の異物感を大きく軽減できます。
また、金属のバネを使わず、ピンク色の樹脂で作る「ノンクラスプデンチャー」は、見た目が自然で審美性に優れています。

長く保険の入れ歯を使っている方や、合わなくなってきた方には、こうした選択肢もおすすめです。
一方で、初めて入れ歯を作る方は、まず保険で作って慣れてから保険外治療を検討するのが良いでしょう。

◼︎自分が納得できる治療こそ、正解

入れ歯もインプラントも、それぞれに役割があります。
どちらかが「優れている」「劣っている」と決めるのではなく、自分の体・生活・価値観に合った治療を選ぶことが何より大切です。

歯科医は選択肢を提示し、サポートする立場です。
最終的に治療方針を決めるのは患者さん自身です。

「これでよかった」と納得できることが、最良の治療につながります。

「入れ歯」は、決して“老いの象徴”ではありません。
食べる楽しみ、話す喜び、笑う自信を取り戻すための“もうひとつの歯”です。

もし今、入れ歯に不安を感じている方がいたら、一度歯科医に相談してみてください。
あなたの口に合った方法が、きっと見つかります。

【おまけマンガ】

©︎漫画_亞有


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