「これ、確定ですか?」と言われないための、簡易工程シートの正しい渡し方
全体の工期から各工程の「比率」を割り出し、着工日を入力するだけでドミノ倒しのようにすべての日付が自動計算される仕組み。
京香さんにアドバイスをもらいながら、僕の頭の中にあった「工期逆算の公式」は、ついにExcelの上で一本の美しいレールになりました。
着工日を書き換えるだけで、すべてのスケジュールがパッと切り替わる。
これなら、営業さんからの急な質問にも、お客様からの「だいたいどれくらいかかる?」という言葉にも、もう頭を悩ませずに一瞬で答えることができます。
太助くん
「よし……! これで僕の作った『簡易工程シミュレーター』のロジックは完成っす!
さっそく明日、ボヤいていたAさんに渡して使ってもらおう!」
僕は完成した画面を見つめながら、ガッツポーズをしていました。
しかし、嬉しそうにパソコンを閉じようとした僕のすぐ後ろから、静かで落ち着いた声が聞こえてきました。
深見さん
「……うん、太助くん。すごく便利な仕組みができたね。
でもね、ちょっとだけ一緒に考えてみてほしいんだ」
振り返ると、上司の深見さんが温かい缶コーヒーを片手に、僕の画面を優しく見つめていました。
深見さん
「このシート、もし明日から営業さんやお客様にそのまま見せたら、どんなことが起きそうかな?」
太助くん
「えっ? どんなことって……
『大体の流れがすぐ分かって便利だね!』って、喜んでもらえるんじゃないっすか?」
深見さん
「確かにそうだね。
でもね、便利で綺麗に日付が出ているからこそ、お客様は『あ、この通りに工事が進むんだな』って、それが確定のスケジュールだと信じてしまうかもしれないよ」
深見さんのその言葉に、僕はハッとして、背中に冷たいものが走りました。
綺麗に見えるからこそ、お客様は信じてしまう
そうなんです。手書きのクシャクシャの裏紙に書いた予定なら、お客様も「ああ、本当にざっくりした目安なんだな」と空気で察してくれます。
でも、パソコンの画面に、
「準備工事:8日間(6/28〜7/5)」
「基礎工事:20日間(7/6〜7/25)」
ときれいな数字で、しかも右側に分かりやすい工程バーまで並んで表示されていたらどうでしょうか。
お客様にとっては、それが「試作品の簡易シート」なのか「何日もかけて作った本物の工程表」なのか、区別がつきません。
もし、この日付をそのまま「確定の予定」として受け取られてしまったら……。
「基礎工事が7月25日に終わるって言いましたよね? なんでまだコンクリートを打ってるんですか?」
「予定が変わるなら、あのシートは何だったんですか?」
そんな風にお客様をガッカリさせてしまったり、現場の職人さんたちに無理なスケジュールを強いることになってしまったりするかもしれません。
太助くん
「うわあ……。
良かれと思ってパッと日付を出したのに、逆にお客様とのトラブルの原因を作ってしまうところだったっす……。
深見さん、やっぱりこのシート、配るのをやめた方がいいでしょうか」
ガタガタと崩れそうになる僕の肩を、深見さんはポンと叩いて笑いました。
深見さん
「いやいや、そんなことはないよ。
仕組み自体は素晴らしいんだ。ただ、現場を守るためには、道具を渡すだけじゃなくて『使い方のアナウンス』をセットにしないといけないんだよ」
現場を守るために、外せない「2つの約束」
深見さんは、僕のパソコンの画面を指さしながら、シートの空いているスペースに「使い方」としての注意点を書き加えるように教えてくれました。
僕たちが簡易的なスケジュールをお客様に見せるとき、絶対に外してはいけない約束は次の2つです。
① 「これは正式な工程表ではない」とはっきりと文字で残す
口頭で「目安ですからね」と伝えるだけでは、時間が経つと忘れてしまいます。
だからこそ、シート自体に「このシートは正式な施工工程や契約工期を保証するものではありません」とはっきり明記しておく必要があります。
② 日付が変わる「具体的な理由」をあらかじめ伝えておく
工事の進み具合は、僕たちの頑張りだけではコントロールできない要素がたくさんあります。
「天候」「職人さんの手配状況」「資材の納期」「現場の地盤の状態」など、実際の現場では何が起きるか分かりません。
「こういう理由で、実際の工程は前後することがあります」と最初から伝えておくことで、お客様も「なるほど、あくまで大まかな流れを見るための簡易シートなんだな」と安心して納得してくれます。
深見さん
「仕組みはね、僕たちの頭のメモリを軽くするために使うもの。
でも、その先の仕事は、いつも人間同士の『対話』で成り立っている。
このシートは、お客様と『大まかな流れを一緒に確認して、安心してもらうための対話ツール』なんだよ、太助くん」
太助くん
「対話ツール……。
ただ数字を計算するだけじゃなくて、お客様と現場の認識をそろえるためのもの、っすね」
深見さん
「そう。この一言がシートに入っているだけで、営業さんも現場管理も、安心してこの便利な仕組みを使えるようになるからね」
安心のルールがあれば、仕組みはもっと強くなる
深見さんのアドバイスを受けて、僕はシートの「使い方」の欄に、はっきりと注意書きを付け足しました。
便利な道具を作ることだけに夢中になっていた僕は、それを使う現場の仲間や、それを見るお客様の「気持ち」への配慮を忘れかけていました。
でも、「天候や状況で日付は変わるものです」という安全なルールをセットにしたことで、この『簡易工程シミュレーター』は、ただの計算シートから、みんなが安心して使える本物の「業務改善ツール」に進化した気がします。
仕組みでラクをしながら、現場も、お客様との信頼関係もしっかり守る。
これこそが、僕たちが目指したかった仕組み化の形です。
明日試せる小さな一歩
お客様に「だいたいの予定」を伝えるとき、言葉のすれ違いを防ぐために、明日からできる一番小さな一歩がこれです。
「スケジュールを伝えるメモの端っこに、『※天候や現場状況により変更になる場合があります』と一言書き添えてみる」
メールの一筆でも、裏紙のメモでも構いません。
この一言を添える癖をつけるだけで、未来の自分と現場を救う大きなお守りになります。
さあ、ロジックも固まり、安全に使うための注意点もバッチリ揃いました!
いよいよ明日は、僕が作ったこの『お客様確認用 簡易工程シミュレーター』のエクセルシートを、読者の皆さんに【無料配布】したいと思います!
ボタンひとつ、入力ひとつであなたの毎日の「工期逆算のめんどくさい」が消える瞬間を、ぜひ体験してください。
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