島の学びが、東京へ届いた日【島総②#26】/vol3 アワビいっぱい編/離島の総合的な学習②
「島っ子交歓BLOG」が思いがけない反響を呼んでいた頃、学校ではもうひとつの大きな挑戦が続いていました。
子どもたちが育ててきたアワビへのマーキング作業。
地域の海と向き合いながら進めてきた「アワビいっぱい大作戦」は、いよいよクライマックスへ向かっていました。
そんな中、子どもたちは島を離れ、ある場所へ向かうことになります。
それは、教室の外に広がる世界と出会う、特別な時間の始まりでもありました。
1.島の子どもたち、東京へ向かう
アワビマーキングを終えた直後、子どもたちはもうひとつの大きな舞台へ向かっていました。
「第10回マイタウンマップコンクール」表彰式。
離島の小さな学校にとって、「東京へ行く」ということ自体が特別な出来事でした。
船で島を出て、本土へ渡り、飛行機へ乗る。
子どもたちは、まだ少し緊張した表情を浮かべながら移動していました。
表彰式当日。
テレポートセンター駅へ到着したあと、会場へ向かう前に未来科学館近くのウェンディーズで軽く昼食を取りました。
朝6時には朝食を済ませていたので、ちょうどお腹が空く頃だったのです。
ただ、子どもたちにとっては、ファストフード店そのものも、どこか特別な空間に見えていたようでした。
島にはない店。
行き交う人の多さ。
窓の外に広がる、お台場の景色。
それだけでも、子どもたちにとっては十分に「外の世界」でした。
2.未来科学館と、少し先の未来
表彰式まで少し時間があったため、子どもたちは未来科学館の展示を見て回りました。
最先端の科学展示や大型映像、 見たこともない装置。
離島の学校で日々学んでいる子どもたちにとって、それは教科書の中とは違う、「実際にある未来」だったのかもしれません。
展示の前で立ち止まりながら、
「これ、どうなってるんだろう」
と話している姿が印象的でした。
普段の学校生活では、海や自然の中で学ぶことが多い子どもたちです。
だからこそ、東京の科学館で見る世界は、また別の刺激になっていたように思います。
そして午後1時。
いよいよ表彰式が始まりました。
3.表彰式の空気
今回いただいたのは、「共同通信社賞」でした。
名前を呼ばれ、子どもたちは壇上へ向かいます。
緊張した表情でしたが、しっかり前を向いて歩いていました。

賞状を受け取ったあと、別室で記念撮影。
その後は再び会場へ戻り、他の発表や表彰の様子を見ていきました。
会場には、全国からさまざまな参加者が集まっていました。
小学校や中学校だけではありません。
地域団体や個人で応募している方々もいて、発表内容も実にさまざまでした。
地域の歴史を調べた作品、 町を歩いてまとめた地図、暮らしや文化を掘り起こした記録など、子どもたちは、自分たちと同じように「地域」をテーマに活動している人たちが全国にいることを、少しずつ感じ始めていたようでした。
表彰式が終わると、今度は懇親会です。
会場には、いろいろな学校や団体の方々が集まっていました。
最初のうちは、島の子どもたちも緊張していて、なかなか自分から話しかけることはできませんでした。
そんな中、昨年も参加していた青森の学校の先生が、今年も変わらず明るく声をかけてくださいました。
その雰囲気に少し助けられるようにして、子どもたちも少しずつ場に慣れていったように思います。
懇親会が終わる頃には、子どもたちもかなり疲れていたようです。
「どこか寄る?」
と聞いてみても、返ってきたのは、
「もうホテル行こう~。」
という、いかにも小学生らしい返事でした。
4.国立科学博物館へ
東京2日目。
前日の表彰式の興奮はまだ残っていましたが、朝になると、子どもたちは少し疲れ気味でした。
それでも、
「せっかく東京へ来たのだから、どこかもう1か所行こう」
ということで、上野の国立科学博物館へ向かいました。
荷物を持っての移動は、思っていた以上に大変だったようです。
それでも、館内へ入ると、子どもたちはまた少しずつ動き始めました。
大きな恐竜の骨格の前で立ち止まったり、動物の標本をのぞき込んだりしながら、子どもたちは館内をゆっくり見て回っていました。
準備中の展示もあり、すべてを見ることはできませんでしたが、それでも1時間ほどかけて館内を見て回りました。
島の学校では、本物を見る機会は決して多くありません。
だからこそ、実際の展示物を前にした時の子どもたちの目は、やはり違っていました。
教科書で見たことがある。
テレビで見たことがある。
でも、「本物」は大きさも、空気も、まったく違う。
そんな感覚を、子どもたちはそれぞれに受け取っていたようでした。
5.島へ帰る船
科学博物館を出たあとは、空港へ向かいました。
おみやげを選び、昼食を食べ、飛行機へ乗り込みます。
帰りの便は、あらかじめ搭乗手続きを済ませていたため、窓際の席を取ることができました。
上空は雲が多く、景色はあまり見えません。
けれど着陸前、高度が下がるにつれて、少しずつ地上が見えてきました。
ただ、見えていたのは島の反対側でした。
もし反対側の席なら、子どもたちの住む島が見えていたはずです。
「惜しかったなあ。」
そんな声も聞こえてきました。
空港へ到着したあと、書店などへ立ち寄りながら、子どもたちを港まで送りました。
ちょうど島へ渡る最終便の時間です。
日曜の夕方だったので、翌日の勤務に備えて島へ戻る先生方の姿もありました。
島に渡る先生方に子どもたちを託しました。
子どもたちは、島へ帰っていきます。
特別な配慮で、この2泊3日の旅行については、子どもたちと一緒に月曜と火曜が振替休日になっていました。
子どもたちは、東京での表彰式や 未来科学館、 国立科学博物館など多くの経験をしました。
それは単なる「旅行」ではなく、島の外にある世界へ触れる時間だったのかもしれません。
そして私は、自宅へ戻ると、今度は会計整理やアワビ放流の準備へ取りかかっていました。
総合的な学習の時間は、まだ終わってはいなかったのです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回に続く・・・👇
前回の話 👇
初めて来られた方へ👇👇
本シリーズは、離島の小学校で実践した総合的な学習の記録です。
本作は2003年度、赴任2年目の取組を扱います。
アワビの中間育成・放流を軸に、交流活動やICT活用を重ねながら広がっていった学びの過程を描いています。
前年度には「おさかな天国 海辺のデジタル図鑑」に取り組み、農林水産大臣賞を受賞しました。
▶ 前シリーズ 総合実践のvol2、おさかな天国(マガジン離島の総合的な学習の時間①)
総合実践のvol3、アワビいっぱい編(マガジン離島の総合的な学習の時間②)👇👇👇
いいなと思ったら応援しよう!
応援いただいたお気持ちは、子どもたちの学びを物語として発信し続ける力となり、教育の現場で役立つヒントへとつなげていきます。