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アワビに未来の印を付ける日【島総②#25】/vol3 アワビいっぱい編/離島の総合的な学習② 

2004年2月「島っ子交歓BLOG」への反響に驚いていた頃、学校ではもうひとつ、大きな学びが静かに進んでいました。

離島の海と向き合いながら続けてきた「アワビいっぱい大作戦」。
子どもたちは、教室の中だけではできない経験を、少しずつ積み重ねていたのです。

そして2月。
その取り組みは、いよいよ大きな節目を迎えようとしていました。


1.「アワビいっぱい大作戦」クライマックスへ

総合的な学習「アワビいっぱい大作戦」も、いよいよ大詰めを迎えていました。

この日は、水産研究所から以前にも来ていただいたY先生にお越しいただき、子どもたちが育ててきたアワビの稚貝へ、実際に標識を付ける作業を行いました。

子どもたちはこれまで、学校で観察用に飼育していたものとは別に、漁協の水槽も借りながら、たくさんのアワビを世話してきました。
毎日エサをやり、水槽をのぞき込み、小さな変化を確かめながら育ててきた稚貝たちです。

放流の日が近づくにつれ、子どもたちの表情も少しずつ変わっていきました。

「育てる」だけでは終わりません。
海へ返したあと、どのように成長していくのか。 そのために必要なのが、今回の「マーキング」作業でした。

2.小さな貝と、大きな海

この日、漁協には、漁師さんが実際に海で捕ってきた大きなアワビも持ち込まれていました。

子どもたちが育てている緑色の小さな稚貝。
そして、その横に並ぶ、長い年月を海で生き抜いてきた大きなアワビ。

並べてみると、その違いは一目瞭然でした。

ゲストティーチャーの方は、子どもたちが育てた稚貝を見ながら、
「これはとてもよく育っていますよ」
「よくお世話をしたからですね」
と話してくださいました。
子どもたちの顔が照れたように、にっこりするのがわかりました。

毎日の世話は、決して派手な活動ではありません。
しかし、子どもたちが積み重ねてきた時間は、確かにアワビの成長となって現れていました。

子どもたちは、いつも以上に真剣な表情で貝を見つめていました。
ただの教材ではない。
自分たちが育ててきた命なのだという感覚が、そこにはあったように思います。

3.生きたアワビにマークを付ける

とはいえ、実際のマーキング作業は簡単ではありませんでした。

以前に練習はしていました。
しかし、あの時使ったのは練習用の貝です。 今回は、生きたアワビでした。

まず、アワビをエタノールを薄めた液につけ、殻から少し剥離させます。
アルコールが回るまで、しばらく待たなければなりません。

その後、新聞紙の上へ丁寧に並べ、タオルで殻の水分を拭き取っていきます。

そこから、いよいよ標識を貼り付ける作業です。

あらかじめ用意したイニシャル入りのダイモテープを、ウェットスーツ補修用の接着剤で貼り付けていきました。
5人で手分けして作業しましたが、数が多く、なかなか大変です。

最後は、瞬間接着剤で仕上げをしていきます。
アワビの穴に液が入らないよう注意しながら作業するので、思わず手が震えてしまいます。

子どもたちは、息を止めるような表情で取り組んでいました。

だからこそ、すぐ横についてくださるゲストティーチャーの存在は、本当に大きかったのです。

専門家がいる。

それだけで、子どもたちの学びは一気に「本物」になります。

教科書の知識ではなく、実際の海とつながった学習。
漁協、水産研究所、地域の海。
離島の総合的な学習は、教室の外とつながることで、少しずつ形になっていきました。

午前中いっぱいを使ってマーキング作業を終えると、午後からは、放流場所の確認へ向かいました。

ゲストティーチャーの方と一緒に海岸を回りながら、「この辺りならよさそうですね」と話をしていきました。
浅い場所でも大丈夫だそうです。
タコや伊勢エビなどの天敵が少ないからだと教えていただきました。

波の当たり方や岩場の様子を見ながら、子どもたちも真剣な表情で海をのぞき込んでいました。

いよいよ、「アワビいっぱい大作戦」はクライマックスへ向かっていたのです。

4.もうひとつ届いた「うれしい知らせ」

そんな慌ただしい日々の中、学校にはもうひとつ、大きな知らせが届いていました。

「第10回マイタウンマップコンクール」入賞。
今回は、「共同通信社賞」。

全国から710作品が出品され、そのうち31作品の入賞でした。 そう考えると、本当にありがたいことだと思いました。

実は、事前に内定の連絡はいただいていました。
しかし、公式発表までは表に出せません。

だからこそ、この日を待ちながら、ずっと内々に準備を進めていたのです。

昨年度の表彰式では、船や宿泊の都合もあり、3人しか連れて行くことができませんでした。
そのため、今回は前回残っていた昨年の5年生(現6年生)の子どもたち3人を連れて行けることになりました。

私は、正直ほっとしていました。

後日、市役所へ表敬訪問に行き、市長さんと教育長さんへ入賞の報告をしました。
記念にいただいたLEDのキーホルダーを、子どもたちはうれしそうに眺めていました。

5.島の子どもたちの「卒業旅行」

今回の応募作品は、「アワビいっぱい大作戦」をまとめたものでした。

本当なら、子どもたちがマーキングしたアワビを海へ放流する場面まで入れたかった。
しかし、コンクールの締切には間に合いませんでした。

それでも、全国1万人規模へのアンケート調査など、それまで積み重ねてきた活動が評価され、入賞につながりました。

放課後になると、今度は保護者の方々との打ち合わせでした。

表彰式へ行くには、まず船の時間を確認しなければなりません。
宿泊先をどうするか、帰りはどの便にするか、保護者の方々とも相談しながら予定を詰めていきました。

この表彰式は、単なる「受賞」ではないのかもしれない。

島の子どもたちにとって、外の世界へ出ていく経験。
そして、6年生にとっては、小学校生活最後の大きな思い出。

きっと、いい卒業旅行になる。

そんな予感がしていました。


ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回に続く・・・👇

前回の話 離島の総合的学習の時間②#24👇

初めて来られた方へ👇👇

本シリーズは、離島の小学校で実践した総合的な学習の記録です。

本作は2003年度、赴任2年目の取組を扱います。
アワビの中間育成・放流を軸に、交流活動やICT活用を重ねながら広がっていった学びの過程を描いています。
前年度には「おさかな天国 海辺のデジタル図鑑」に取り組み、農林水産大臣賞を受賞しました。
▶ 前シリーズ 総合実践のvol2、おさかな天国(マガジン離島の総合的な学習の時間①)

総合実践のvol3、アワビいっぱい編(マガジン離島の総合的な学習の時間②)👇👇👇

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