4人でつくる運動会【島小③#14】/離島の小学校編Season3 14
2004年9月の2学期が始まると、学校は一気に運動会モードになりました。
けれども今年は、これまでとは大きく違います。
全校児童は4人。
いつもどおりにはできないからこそ、先生も保護者も地域の方々も、それぞれの知恵を持ち寄りながら運動会をつくっていくことになりました。
1.4人だからこそ、みんなで考える
始業式を終えた午後、職員会議では2学期の行事予定とともに、運動会について時間をかけて話し合いました。
一番の課題は競技です。
全校児童が4人になり、これまで当たり前だった団体種目や対抗リレーが、そのままでは成り立ちません。
「保護者の方にも入っていただこう。」
「先生も走りましょう。」
そんな意見が次々に出され、リレーは小学生が半周、地域の若者が1周走る変則ルールへと変更することになりました。
1人で考えていては思いつかないようなアイデアも、みんなで知恵を出し合うと少しずつ形になっていきます。
運動会まであと10日あまり。
心配よりも、「今年はどんな運動会になるんだろう」という楽しみの方が少しずつ大きくなっていました。
2.学校だけではできない運動会
運動会へ向けた準備は、学校の中だけでは終わりません。
学校ホームページも新学期仕様に更新しながら、9月の予定や写真を入れ替え、放課後になると保育所、小学校、中学校の合同会議へ向かいます。
リレーは小・中それぞれ単独では行わず、合同リレーだけを残すことになりました。
今年は中学校が当番校だったこともあり、体育主任の先生が準備や当日の動きを細かく整理してくださっていて、全体の流れがよく見えてきました。
夜には町内の運営委員会です。
老人会、婦人会、各地区の代表者が集まり、学校だけではなく町全体の行事として運動会をつくっていきます。
その席では、市長さんや教育長さん、さらに衆議院議員さんも来島されることが紹介されました。
小さな島の運動会ですが、今年は例年以上ににぎやかな1日になりそうです。
翌日の週末は本土へ戻り、運動会で使う用品を買いに回りました。
パソコンショップではアイロンプリント用紙を探し、100円ショップでは競技に必要な道具を次々とかごへ入れていきます。
きっと他の先生方も、それぞれ買い物をしているはずです。
日曜日の3便には、運動会用品を抱えた先生たちが次々と島へ戻ってくる光景が浮かびました。
3.本番まであと少し
学校では、一輪車を使った演技にも挑戦しました。
山間部の学校へ勤めていた頃にも運動会で取り入れたことがありましたが、今回は4人それぞれの力に合わせて演技を組み立て直します。
限られた練習時間の中で何度も試し、ようやく形が見えてきました。
あとは本番を意識して流れを確認するだけです。
午後には小中合同でリレーの練習も始まりました。
教員も参加して一度走ってみることになり、私もバトンを受け取りました。
最初は無理をしないつもりだったのですが、前の先生がトップでつないでくれたものですから、つい力が入ってしまいます。
気が付けば後ろから若い先生が迫ってきていました。
「抜かれたくない。」
そう思って踏ん張った瞬間、右足に痛みが走りました。
幸い大事には至りませんでしたが、本番を前に少し無理をしてしまったようです。
予行練習では足をかばいながら準備を進めることになりましたが、競技の流れや用具の配置を確認し、放課後には反省会も終えて、いよいよ本番を待つばかりになりました。
前日には中学生と一緒にテントを立て、机や椅子を運び、万国旗や歓迎門、入退場門を設置していきます。
グラウンドの準備が終わる頃には、町の方々も集まり始め、一般席のテントづくりが始まりました。
翌日から始まる島の夏祭りに合わせて開かれる全町運動会。
学校だけではなく、島全体が少しずつ運動会へ向かって動き始めていました。
4.みんなでつくった運動会
運動会当日は、朝から気持ちのいい青空が広がりました。
新しい連絡船で来賓のみなさんが到着すると、予定どおり入場行進が始まります。
新船の就航によって運航時刻が変わり、今年は例年より約1時間早いスタートでした。
競技は順調に進みましたが、午後になると空模様が少し気になり始めました。
進行を早めながらも、町民参加競技ではその場で出場者を募る種目もあり、思うようには進みません。
それでも、それが全町運動会らしいところでした。

若い人たちも数多く参加し、3年前に赴任した頃よりずっと活気のある運動会になったことを、教頭先生と話したのを覚えています。
勝負は最後まで接戦でした。
結果は4年ぶりに白組が優勝。
わずか7点差という大接戦に、グラウンドは大きな拍手に包まれました。
運動会が終わると、地域の方々は後片付けを済ませ、そのまま神社から出る御神輿を迎えます。
祭りが始まったのです。
私たち教員は宿舎へ戻り、冷たいビールで乾杯しました。
日焼けした顔を見合わせながら、「無事終わったなあ。」と笑い合います。
全校児童は4人。
それでも、いや、4人だったからこそ、先生も保護者も地域のみなさんも、それぞれが少しずつ力を出し合って、今年の運動会をつくり上げることができました。
それでも、運動場には子どもも、大人も、お年寄りも集まり、朝から夕方までにぎやかな声が響いていました。
そんな1日が終わると、島はそのまま祭りの夜へと変わっていきました。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
次回に続く。👇
前回の話👇
◆本シリーズについて(初めて読んでいただく方へ)👇👇
約25年前の2002年、船が生活のすべてを左右する離島の小学校に赴任しました。
予定通りにいかないことが当たり前の中で、学校と暮らしが地続きの毎日を過ごしていました。
そんな環境の中でも、子どもたちに自信をもたせたいと考え、総合的な学習の時間に取り組んでいました。
このシリーズでは、当時の日記をもとに、島での仕事の大変さと、その中にあるささやかな温かさを綴っていきます。
3年目2004年度の、Season3のお話です。
※本文中の地名・固有名詞は一部仮名としています。
離島の小学校編Season3👇
離島の小学校編Season1👇👇
離島の小学校編Season2👇👇👇
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