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嵐が残していったもの【島小③#13】/離島の小学校編Season3 13

2004年、9月になり、2学期が始まりました。
夏休みが終われば、学校にはいつもの毎日が戻ってくるはずでした。
ところが、この年は台風や地震が次々とやってきます。
自然の大きな力を何度も感じながら、それでも学校も島の暮らしも、いつものように動き続けていました。

1.テレビに映った島

2学期が始まって間もなく、1学期の終業式に学校を訪れた西川きよしさんと石田靖さんの特別番組が放送されることになりました。
番組名は「やすしきよしの夏休み2004」。
放送は関西テレビだけでしたが、制作会社のプロデューサーさんが、産経新聞のテレビ欄に掲載された紹介記事をわざわざFAXで送ってくださいました。

保育所の先生からは、「予告編に子どもたちが映っていましたよ」と教えていただき、島のみんなも放送を楽しみにしていました。
終業式の日の出来事が、どんな番組になっているのだろう。

私自身も、放送の日を心待ちにしていました。

2.島の夜に響いた揺れ

放送当日の日曜日、私は午後3便の連絡船で本土から島へ渡りました。
その夜は、宿舎で先生方が集まり、ささやかな飲み会を開いてくださいました。
実は、中学校の教務主任の先生と私の誕生日が同じだったそうで、「せっかくだから一緒にお祝いしよう」ということになったのです。

テレビでは、昼に放送されたばかりの番組の録画をみんなで見返しました。港や集落の風景、子どもたちの笑顔、終業式の様子・・・。
見慣れている景色なのに、画面を通して見るとまた違った魅力があります。

「いい島だなあ。」

そんな言葉が自然に出るような時間でした。

ところが、その余韻に浸っていた午後7時過ぎ、突然大きく横揺れしました。
思った以上に長い揺れで、思わず顔を見合わせます。
幸い大きな被害はありませんでしたが、気持ちのいいものではありませんでした。

飲み会がお開きになり、自分の部屋へ戻ってテレビを見ていると、今度は夜中の0時頃、再び大きく揺れました。
夕方と同じくらいの強い揺れです。

「早く終わってくれ。」

そう願いながら、揺れが収まるのを待っていました。
これほどの地震が、短い時間のうちに続けて起きた経験は、それまでほとんどありませんでした。

3.台風の日のカレーライス

地震が続いたと思ったら、今度は台風です。
朝5時頃、暴風警報が発令されました。

前日の最終便が島へ着いたあと、防波水門が閉まり、連絡船も止まりました。
学校は臨時休校です。
子どもたちは自宅待機になりましたが、教職員はいつもどおり学校へ集まりました。

予定されていた給食も中止になります。
食材はすでに島へ届いていました。

市の給食担当と相談しながら、後日使えるものは献立を変更して対応することになりましたが、どうしても使い切れない食材もあります。

「それなら先生たちで買い取って、お昼を作りましょう。」

そんな話になりました。

肉は給食の食材を使い、カレー粉は組合で買い足し、玉ねぎは用務員さんが「使ってください」と持ってきてくださいました。
お米は、それぞれが持ち寄ります。
こうしてできあがったのは、大鍋いっぱいのカレーライスでした。

小学校、中学校の先生方が家庭科室へ集まり、みんなで昼食を囲みます。
台風で学校は休みになってしまいましたが、そのおかげで、普段ならゆっくり話せないようなことまで話題になりました。

週末に控えた全町運動会の打ち合わせも自然と始まり、気が付けば、昼食の時間はあっという間に過ぎていました。

窓の外では風が吹き続けていました。
この年は夏休みから台風が次々とやって来て、そのたびに船が止まり、予定が変わっていきました。

「また台風か。」

そんな言葉を何度口にしたか分かりません。

4.台風が残していったもの

数日後、島の若者が学校へやって来ました。

「先生、これ。」

そう言って見せてくれたのは、小さなウミガメでした。
先日の台風18号で港の中へ入り込んできたようです。
そのほかにも、珍しいイザリウオや、小さなハリセンボンも見つかりました。

せっかくなので、新しい海水をくんできて、以前アワビを育てていた水槽へ移すことにしました。
水槽の中をゆっくり泳ぐウミガメを見ていると、時間を忘れてしまいます。

子どもたちも、先生たちも、水槽の前へ来ては「かわいいなあ」とのぞき込んでいました。
携帯電話のカメラで何枚も写真を撮ってみましたが、まだ性能が十分とは言えず、その愛らしい姿を思うようには残せませんでした。

台風が来るたびに船は止まり、予定も変わりました。
地震も続き、自然の力の大きさを何度も感じた9月の始まりでした。

それでも、宿舎で先生方と笑い合った夜があり、家庭科室ではみんなでカレーを囲み、水槽には小さなウミガメが泳いでいました。

慌ただしい毎日の中にも、そんな時間があったことを今でもよく覚えています。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
次回に続く。

前回の話👇

◆本シリーズについて(初めて読んでいただく方へ)👇👇

約25年前の2002年、船が生活のすべてを左右する離島の小学校に赴任しました。
予定通りにいかないことが当たり前の中で、学校と暮らしが地続きの毎日を過ごしていました。
そんな環境の中でも、子どもたちに自信をもたせたいと考え、総合的な学習の時間に取り組んでいました。
このシリーズでは、当時の日記をもとに、島での仕事の大変さと、その中にあるささやかな温かさを綴っていきます。
3年目2004年度の、Season3のお話です。
※本文中の地名・固有名詞は一部仮名としています。

離島の小学校編Season3👇

離島の小学校編Season1👇👇

離島の小学校編Season2👇👇👇

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