この塩、なぜ100円?【島総③#14】/総合実践の記録vol4 塩物語編/離島の総合的な学習③
前回、自分たちが作った塩の「ウリ」を3人で考えました。
おいしさ、安心して食べてもらうための作り方、そして塩ができるまでにかかった手間。
自分たちがやってきたことを振り返りながら、少しずつ「買ってくれる人」を意識するようになってきました。
でも、商品として売るためには、まだ決めなければならないことがあります。
その1つが、値段です。
自分たちが苦労して作った塩に、自分たちで値段をつける。
さて、いくらならいいのでしょう。
1.この塩、いくらで売る?
できあがった塩は、1袋50gにすることにしていました。
そこで今度は、その50gをいくらで売るのか、3人で考えることになりました。
値段をつけるといっても、子どもたちにとっては初めての経験です。
「100円くらい?」
「もっと高くてもいいんちゃう?」
思いついた数字を言うことはできますが、それだけで決めてしまっていいとは思いませんでした。
私が大切にしたかったのは、値段そのものよりも、「なぜ、その値段なのか」ということでした。
塩を作るためには、すでにいろいろなものを使っています。
少なくとも商品にするときには、塩を入れるビニール袋が1枚5円、さらに表と裏に貼るシールが合わせて10円ほどかかります。
50gの塩を袋に入れれば、それだけで商品になるわけではありません。
「じゃあ、いくらにする?」
そう聞かれても、まだ根拠になるものが足りません。
そこで思い出したのが、以前見学させていただいた塩づくり工房のYさんでした。
塩の値段をどうやって決めたのか尋ねたとき、Yさんは冗談まじりに「独断と偏見で……」と話していました。
もちろん、長年塩を作っているプロだからこその感覚もあるのでしょう。
でも、私たちは初めて塩を作った小学生です。
だったら、まず調べてみよう。
世の中で売られている自然塩は、いったいいくらくらいするのでしょうか。
2.全国の塩を、全部50gにしてみる
3人と一緒にインターネットで自然塩を探してみることにしました。
これは2004年12月頃のことです。
当時も全国各地でさまざまな自然塩が販売されていて、ホームページを探していくと、産地も量も値段も違う塩が次々と見つかりました。
ただ、ここで困ったことがあります。
ある塩は200g、別の塩は120g、さらに別の塩は90g。
内容量がバラバラなので、表示されている値段だけを見ても、自分たちの50gの塩と比べることができません。
「これ、全部50gにしたらいくらになる?」
そこで登場したのが、算数でした。
4年生は、ちょうど割り算の筆算を習ったところでした。
200gで500円なら、50gではいくらになるのか。
120gで600円ならどうなるのか。子どもたちは計算しながら、すべて50gあたりの値段にそろえていきました。
計算はなかなか大変でした。
それでも、同じ50gにそろえてみると、それまで比べられなかった塩の値段が見えてきます。

2004年12月当時、当時調べた結果は、次のようになりました。
長崎平戸産「天然塩」 200g 500円 → 50gあたり125円
沖縄宮古島産「雪塩」 120g 600円 → 50gあたり250円
高知室戸産「龍寓」 200g 900円 → 50gあたり225円
静岡駿河湾産「駿河湾の塩」 90g 315円 → 50gあたり175円
和歌山南紀白浜「黒潮の恵み」 200g 500円 → 50gあたり125円
見学させていただいた塩づくり工房の塩 200g 500円 → 50gあたり125円
こうして並べてみると、50gあたり125円くらいのものもあれば、200円を超えるものもあります。
同じ自然塩でも、値段にはかなり幅がありました。
しかも、インターネットで買う場合には送料が必要になるものもあります。
当時は商品によって消費税の扱いも違いました。
ただ「ほかの塩はいくらだろう」と調べて終わるのではなく、自分たちの商品と同じ50gに直して比べてみる。
習ったばかりの割り算が、教科書の問題ではなく、自分たちの塩の値段を決めるために必要になりました。
3.「100円」に、理由はあるか
材料にかかるお金が分かりました。
ほかの自然塩がどれくらいの値段で売られているのかも分かりました。
ここまで調べたところで、改めて3人で話し合いました。
「じゃあ、自分たちの塩はいくらにする?」
今度は、最初のように何となく数字を出すだけではありません。
調べた値段を見ながら、自分たちの塩と比べて考えることができます。
そして、3人が出した答えは、
50g、100円。
でも、私はそこで終わらせたくありませんでした。
「なんで100円なん?」
100円という数字より、こちらの方が大事です。
誰かに「どうして100円なの?」と聞かれたとき、「なんとなく」ではなく、自分たちなりの理由を話せるようにしてほしかったのです。
3人は、もう一度考えました。
まず出てきたのは、「私たちはプロではない」ということでした。
調べた自然塩は、どれも商品として作られ、販売されているものです。
自分たちは初めて塩づくりに挑戦した小学生なのだから、プロが作った塩より高い値段をつけるのは違うのではないか、と考えました。
もう1つは、買ってくれる人のことでした。
100円なら硬貨1枚で買うことができます。
売る側にとっても計算しやすく、買う人にとってもお金を出しやすい。
実際に自分たちで販売することまで考えると、「1コイン」という分かりやすさにも意味がありました。
そして、安ければいいというわけでもありません。
海水をくみに行き、薪を集め、何日も火を焚き、一度は失敗して最初からやり直しました。
袋やシールにもお金がかかります。
自分たちがかけてきた手間や材料費まで考えると、あまりに安い値段をつけるのも違うように思えました。
高すぎず、安すぎず。
3人なりに考えたところに、100円がありました。
4.大切なのは、「なぜ?」に答えられること
こうして、私たちの塩は50g100円で販売することに決まりました。
ただ、私にとって面白かったのは、100円という値段そのものではありません。
最初なら「これくらいかな」で終わっていたかもしれない値段に、調べたり、計算したり、比べたりすることで、少しずつ理由がついていったことでした。
「ほかの自然塩は、このくらいで売られている。」
「自分たちはプロではない。」
「袋やシールにもお金がかかっている。」
「100円なら買う人も出しやすい。」
どれか1つだけで決めたわけではありません。
いくつもの材料を並べ、その中から自分たちなりに納得できる答えを選びました。
学校では、「答え」が先にあることが多いです。
けれど、このときの3人には、どこにも答えは載っていませんでした。
私自身も、「この塩は100円が正解だ」と思っていたわけではありません。
だからこそ、「私はこう思う」で終わらず、「なぜそう思うのか」を考えてほしかったのです。
値段は決まりました。
でも、100円という数字をつけたからといって、本当に買ってもらえるとは限りません。
それに、前回3人が考えた「おいしさ」というアピールも、まだ自分たちだけの感想でした。
自分たちがおいしいと言うだけではなく、実際にほかの人にも食べてもらったらどうだろう。
そこで今度は、できあがった塩を持って、町の人たちのところへ出かけてみることにしました。
ここまで読んでいただきありがとうございました。 次回に続く👇
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初めて来られた方へ👇👇
本シリーズは、離島の小学校で実践した総合的な学習の記録です。 本作は2004年度、赴任3年目の取組を扱います。 島の人たちのために,ウミブドウを栽培し,お祭りで食べてもらうつもりでした・・・。 この年は,台風の襲来が多く,実践にも大きな影響がありました。
マイタウンマップ・コンクールで内閣総理大臣賞を受賞した感動の実践「塩物語」です。
「お魚天国海辺のデジタル図鑑」から始まる離島の総合実践3部作の最終作です。
離島の総合的な学習の時間3年目(最終年度)の実践「塩物語編」👇
総合実践のvol2、お魚天国デジタル図鑑編(マガジン離島の総合的な学習の時間①)👇👇
総合実践のvol3、アワビいっぱい編(マガジン離島の総合的な学習の時間②)👇👇👇
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