学ぶ夏から、支える夏へ【島学#12】/離島の小学校三年目の学び編 12
2004年8月。
子どもたちが夏休みを迎える頃、学校は静かになった。
しかし、自分の夏はむしろここからが本番だった。
県大会の準備、大学のセミナー、そして県総合部会の夏季研修会。
学ぶ立場と運営する立場を行き来しながら、慌ただしい日々が続いていった。
1.県大会へ向けて動き出す
8月中旬、県小教研総合部会の1泊合同研修会が開かれた。
この年の秋、県で初めてとなる小学校総合的な学習の時間の研究大会が予定されており、その県南の会場校を中心にした準備が本格的に始まっていた。
午後は大学のN先生による講演のあと、学年ごとの交流会が行われた。
会場校が作成した単元案をもとに、それぞれの学年で意見を出し合う。
自分は6年生部会の進行役を任され、参加した先生方の意見を整理しながら議論を進めていった。
夜は近くの民宿へ移り、懇親会が始まった。
学校や地域は違っても、総合的な学習について語り始めると話は尽きない。
遅い時間まで、それぞれの実践や悩みを語り合う時間が続いた。
2.地域を歩くという学び
翌日は会場校の校区を巡るフィールドワークだった。
歌碑や神社、この町ゆかりの人物にまつわる場所を案内していただきながら歩いていく。
普段は自分の学校の地域を教材として見ているが、他校の先生方と一緒に別の地域を歩いてみると、見える景色が少し違っていた。
「このあと、そのまま単元づくりをしたら面白そうですね。」
そんな話も自然に出てきた。
実際に地域を歩き、その空気を感じた直後だからこそ生まれる発想がある。
教室の中だけでは得られない学び方が、そこにはあった。
研修を終えて帰路につく頃には空模様が一変し、激しい雨が降り始めた。
ワイパーを最速にしても前が見えにくいほどの豪雨の中を走り続け、ようやく自宅へたどり着いた頃には、さすがに疲れがどっと押し寄せてきた。
3.学び続ける夏
合同研修会を終えて間もなく、今度は大学院時代の師匠が毎年開催している夏のセミナーに参加した。
このセミナーで毎年楽しみにしていたのが、「実践鑑定団」だった。
実践発表に対して、師匠の師匠であるM先生、師匠、そして情報教育を専門とする大学院生が鑑定人となり、それぞれの視点から評価していく。
今年は、その大学院生が制作した「へえボタンカウント装置」が初めて登場し、発表のたびに会場を和ませていた。

昨年は自分も2本の実践を発表したが、今年は発表者ではなく聞く側に回った。
発表者は3人と昨年より少なかったものの、その分、一つ一つの実践をじっくり聞くことができた。
自分では思いつかなかった視点や授業の組み立て方に触れるたび、「なるほど」と感じる場面が何度もあった。
また、企業による短時間のプレゼンも行われ、教育を支える新しい取組に触れる機会にもなった。
夜は恒例の懇親会だった。
毎年顔を合わせる先生方に加え、初めて参加された方々も交えて、教育談義は夜遅くまで続いた。
立場や勤務校は違っても、教育への思いを語り合えるこの時間は、夏のセミナーならではの楽しみでもあった。
翌朝は9時からワークショップのメンバーが集まり、プレゼンテーションの最終打ち合わせを行った。
午前中は総合的な学習と教科との関連をテーマにした実践発表を聞き、昼休みに最後の確認を済ませると、午後はいよいよワークショップでの発表である。
与えられた時間は3分。
短い時間の中で何を伝えるかを考えながらプレゼンを終え、最後はM先生のお話を聞いて2日間の日程を終えた。
夏休みに入ってから、学ぶ立場として研修に参加する機会が続いていた。
しかし、その数日後には、自分が運営する側として県総合部会の夏季研修会を迎えることになる。
気持ちは少しずつ、「学ぶ側」から「支える側」へと切り替わり始めていた。
4.研修をデザインする側へ
夏の締めくくりは、県総合部会夏季研修会だった。
事業部長としての研修会企画運営の日である。
前日は事務局長の学校へ向かい、160人分の資料を印刷してホッチキスで綴じる。
当日の流れを確認しながら、ワークショップの進め方を何度も見直した。
迎えた当日、開始前の打ち合わせで今回の講師である師匠から1つの提案があった。
「課題を出し合うところから始めるより、課題解決を体験してもらった方がいい。」
問題を並べるだけでは時間が足りず、暗い気持ちで終わってしまうかもしれない。
それよりも、解決へ向かう過程を体験することで、それぞれの先生方が持っている力を実感できる研修にした方がいいという考えだった。
なるほどと思った。
急きょ内容を組み替え、参加者は15の課題からテーマを選び、グループごとに解決策を考えて発表する形へ変更した。
夏のセミナーで譲っていただいたカウントダウン表示も役に立ち、3分間の発表はテンポよく進んでいった。
約150人が参加した2時間の研修は、あっという間に終わった。
研修を受ける側ではなく、設計し運営する側として過ごした時間は、それまでとは違う緊張感があった。
数日後、師匠から1本の電話が入った。
「ワークショップで出てきた成果物を分析してみたらどうだ。」
研修は終わったと思っていたが、どうやらそうではなかった。
受話器を置いたあと、机の上に積んだ資料へもう1度目を向けた。
次の仕事は、すでに始まっていた。
次回に続く・・・👇
前回の話👇👇
◆本シリーズについて(初めて読んでいただく方へ)👇👇
約25年前の2002年、船が生活のすべてを左右する離島の小学校に赴任しました。
予定通りにいかないことが当たり前の中で、学校と暮らしが地続きの毎日を過ごしていました。
そんな環境の中でも、子どもたちに自信をもたせたいと考え、総合的な学習の時間に取り組んでいました。
この話は、離島の小学校勤務2004年度当時の日記をもとに、島の学校編では収まらないプロジェクトや情報教育、外部との関わり等について描いていきます。
※本文中の地名・固有名詞は一部仮名としています。
マガジン離島の小学校三年目の学び編👇👇
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