任期の折り返し それでも変わらない島のICT環境 【島ICT#24】/離島のデジタルデバイド編② 2年目の記録
2003年秋、この島に赴任してから1年半が過ぎた。
試行錯誤を重ねても、島のICT環境は大きくは動かない。
変わらないという現実と、向き合う時期に来ている。
前回のデジタルデバイド編👇
本シリーズの背景(初めて読まれる方へ)
今から20年以上前の2002年4月。
連絡船が頼りの離島の小学校に、一人の教師が赴任した。
島では、家庭でも学校でも、インターネットは日常的に使えるものではなかった。
本土でADSLが普及し始める一方、島内のデジタルデバイドは広がっていた。
小学校では、隣の中学校から分岐した衛星回線を使い、インターネットとメールが可能になっていたが、利用には多くの制約があった。
そうした環境の中で、教師は総合的な学習の時間を通して、学びを島の外へ、そして島の人たちへ届けようとした。
ICTは目的ではなく、あくまで手段だった。
1年目には、島の魚を紹介するデジタル図鑑を制作し、その成果を島の人たちにも届けるため、連絡船の待合室にPCを設置した。
その後、学校の通信環境を支えてきた衛星通信システムが、残り1年で終了することが分かる。
今年度は、念願の学校ホームページを開設したが、その更新にも苦労があった。
これは、島での2年目。
システム終了へのカウントダウンが進む2003年度の記録である。
1 戻ってきた機械と、もう一度の立ち上げ
先日導入されてすぐに故障したPCが、修理されてようやく戻ってきた。
連絡を受けたとき、島まで配送してもらうこともできたが、自宅まで持ってきてもらうことにしたのは、少しでも早く状況を確認したかったからだ。
受け取った機体を連絡船に乗せ、島へ運ぶ。
このひと手間が、都市では想像しにくい「復旧までの距離」なのだと、改めて感じる。
起動してみると、アプリケーションはすでに入っている。
しかし、ネットワーク設定も、プロキシも、そして子どもたちが使うための環境も、すべて自分で整えなければならない状態だった。
制限付きユーザーで起動してくるため、管理者権限で入り直す必要がある。
一度ログオフし、クラシック表示のAdministratorに切り替えてパスワードを打ち込む。
この一連の作業が、ひとつひとつ小さな壁のように立ちはだかる。
さらに「キーボー島アドベンチャー」を動かすには、フラッシュプレイヤーのインストールが必要だった。
作業を繰り返しながら、ようやく一台のPCが「使える状態」に戻る。
ただ動くだけでは足りない。
子どもたちが使える形に整えて、はじめて復旧なのだと、改めて思う。
2 見えない壁の向こうにある設定
数日後、今度はWindowsUpdateに取りかかる。
学校のPCを順番に更新しようとしたが、エラーが出て止まってしまった。
原因はすぐに思い当たる。
衛星回線特有の制限だろうと考え、隣の中学校の先生に連絡を取る。
返ってきた答えは、「Secureの設定にプロキシとポート番号を入れる必要がある」というものだった。
教えてもらった通りに入力すると、それまで止まっていた更新が、静かに動き出す。

やはり、この島では「知っているかどうか」がすべてを分ける。
同じ環境でも、誰かの経験がなければ、前に進めない。
職員室のサーバー機、個人用の2000、そして新しく導入されたXPが2台。
一台ずつ更新をかけていくが、衛星回線はとにかく時間がかかる。
しかも教室のPCは、またしても管理者権限でログインし直さなければならない。
同じ操作を何度も繰り返しながら、ようやくすべての更新を終えた。
単純な作業のはずなのに、ここでは一つひとつが「仕事」になる。
それが、この環境の現実だった。
3 つながっているのに、届かない
この島のインターネットは、常時接続でありながら、決定的な制約を抱えている。
FTPが使えないのである。
学校のホームページを更新するためには、週末に本土の自宅へ戻り、ダイヤルアップで接続してファイルを送るしかない。
しかもプロバイダの関係でADSLは使えず、P-inによる接続になる。
通信料はもちろん自費だ。
それ自体は仕方ないと割り切っているが、島から直接データを送れないという事実は、想像以上に不便だった。
リアルタイムで情報を発信することができない。
更新は常に「後から」になる。
一度、サーバーの管理先にも問い合わせてみた。
しかし返ってきたのは、「セキュリティ上の理由でできない」という、変えようのない答えだった。
4 見えてきた期限と、次の手
そのやり取りの中で、ふと頭に浮かんだことがある。
この衛星通信は、来年3月で使えなくなるという事実だ。
FTPは使えない。
時間制限やアクセス制限もある。
それでも時間制限内は当時は珍しかった「常時接続である」という一点だけで、ここまでの環境を支えてきた。
それが、突然なくなる。
ダイヤルアップだけで、この先の授業や活動を支えられるとは思えない。
むしろ、今よりも大きな制約の中でやりくりしなければならなくなる。
今のうちに手を打たなければならない。
そう思いながらも、具体的な方法はまだ見えていない。
回線ひとつで、できることも、できないことも決まってしまう。
その現実を前に、次の一手を考え続けるしかなかった。
次回に続く・・・👇
これまでの歩み 離島のデジタルデバイド編マガジン👇👇
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