便利になる本土、変わらない島【島ICT#23】/離島のデジタルデバイド編② 2年目の記録
前回、イントラネットのポータルサイトを立ち上げてから、しばらく時間が空いた。
島の通信環境は、何かをきっかけに急に変わるようなものではない。
振り返れば、総合的な学習の実践やWebページでの発信など、学校からの小さな取り組みが積み重なり、少しずつ前に進んでいったのだと思う。
だから、ある日突然何かが変わったという実感はなかった。
前回のデジタルデバイド編👇
本シリーズの背景(初めて読まれる方へ)
今から20年以上前の2002年4月。
連絡船が頼りの離島の小学校に、一人の教師が赴任した。 島では、家庭でも学校でも、インターネットは日常的に使えるものではなかった。
本土でADSLが普及し始める一方、島内のデジタルデバイドは広がっていた。
小学校では、隣の中学校から分岐した衛星回線を使い、インターネットとメールが可能になっていたが、利用には多くの制約があった。 👉 つながらない島から始まった挑戦/離島のデジタルデバイド編
そうした環境の中で、教師は総合的な学習の時間を通して、学びを島の外へ、そして島の人たちへ届けようとした。
ICTは目的ではなく、あくまで手段だった。
1年目には、島の魚を紹介するデジタル図鑑を制作し、その成果を島の人たちにも届けるため、連絡船の待合室にPCを設置した。
その後、学校の通信環境を支えてきた衛星通信システムが、残り1年で終了することが分かる。
今年度は、念願の学校ホームページを開設したが、その更新にも苦労があった。
これは、島での2年目。
システム終了へのカウントダウンが進む2003年度の記録である。
1 回線を変えるという小さな決断
2003年、島での2年目も半分を過ぎ、島の通信環境は相変わらずだった。
そんな中で、自分の自宅の通信環境のことが少し気になり始めた。
ある日、帰宅して何気なく調べていると、フレッツモア24がついに自宅エリアにも対応したという情報が目に入る。
迷う理由はなかった。
その場で申し込みを済ませた。
これまでの回線でも使えないわけではなかったが、モア24にすると、より便利になるらしい。
細かい仕組みはよく分からなかったが、とりあえず変えてみようと思った。
そのため、対応するブロードバンドルーターを帰りに購入した。
corega製で、確か5000円もしなかったはずだ。
ほどなくNTTから確認の電話が入り、10月1日開通にすれば、10月と11月の2ヶ月分が無料になると聞いた。
その言葉に背中を押される形で、切り替えは10月1日に決まった。
すでにルーターの交換は済ませている。
気のせいかもしれないが、交換しただけで少し速くなったように感じた。
回線が変わる。
ただそれだけのことなのに、できることが増えていく予感があった。
2 願書を出すという一歩
昼休み、島の郵便局へ向かう。
大阪で実施されるICTE試験の願書を出すためだ。
定額小為替を同封し、簡易書留で手続きを済ませる。
事務的な手続きを淡々と進めながらも、試験が現実のものとして近づいてきているのを感じていた。
窓口にいた局員は、中学校の保護者でもある人だった。
「中身は何ですか」
と聞かれ、
「願書です」
と答えたところから話が広がる。
ちょうど居合わせた地域の人たちにも囲まれ、どんな試験なのかを説明することになった。
軽く話すつもりが、いつの間にか少し力が入っていた。
話してしまった以上、後には引けない。
期待というほど大げさではないが、「受けるからには」という空気が、自分の中に生まれていた。
3 ネットで完結するという変化
数日後、伊勢海老のたてあみ漁でにぎわう港を抜け、朝の便で自宅へ戻る。
台風を境に、波の質が変わっていた。
冬の北西風を思わせる揺れに、かつての感覚がよみがえる。
帰宅すると、ちょうどタイミングよくフレッツモア24用のモデムが届いていた。
まるで、こちらの動きを見計らったかのようだった。
ひと息つく間もなく、生活に必要な用事を片づけていく。
宿舎の電球を買い替え、市の陸上大会に備えてプリンタの予備インクも用意した。
さらに、大阪へ向かう高速バスの予約も済ませる。
これまでは駅前まで出向いて購入していたが、今回はインターネットで予約し、コンビニで支払いと受け取りができた。
航空券と同じような手続きで、思ったほど戸惑うことはなかった。
宿泊の予約も同様に済ませる。
今では当たり前になったこうした手続きも、当時はまだ新しく、「本当にこれでいいのか」と半信半疑で進めていた記憶がある。
それでも、足を運ばなくても用事が完結していくことに、小さな驚きを感じていた。

4 便利にならない場所がある
こうして振り返ると、確かに便利になっている。
しかし、その便利さは、すべての場所に等しく届いているわけではなかった。
島には、まだインターネットの回線が来ていない。
学校で使っている衛星回線では、SSLなど認証が必要なサイトは表示されず、できることにも限界がある。
自宅で当たり前のようにできる予約や決済が、島ではそもそも試すことすらできない。
ちょうど回線の切り替えに伴い、NTT西日本からさまざまなサービス案内が届いていた。
その中に、フレッツコミュニケーションという、いわばテレビ電話のようなサービスがあった。
もし島に高速回線が通っていれば、迷わず導入していただろう。
子どもたちの顔を見ながら話をする。
本土に出た高校生や社会人と、島の家族が日常的につながる。
そんな当たり前の光景が、この島ではまだ遠い。
本土には、あらゆる面でアドバンテージがある。
その差をすべて埋めることは難しいとしても、せめて高速回線によるインターネットくらいは、なんとかならないものか。
そんな思いが、静かに、しかし確実に積もっていった。
この島の時間とは別の場所で、世界は確実に変わり始めていた。
次回に続く・・・👇
離島のデジタルデバイド編マガジン👇👇
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