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便利さが灯れば島は変わる【島ICT#22】/離島のデジタルデバイド編② 2年目の記録

2002年度末、漁協の待合室に1台のパソコンを設置した。
学校から飛ばした無線LANを使い、島の人たちにも学校のホームページを見てもらおうと考えたのである。
そこから見ることができるのは、農林水産大臣賞を受賞した学習「お魚天国 海辺のデジタル図鑑」だ。
子どもたちが島の海で調べた魚をまとめたページである。

しかし、見られるのは子どもたちの作品だけだった。
それでは、地域の人にとって日常的に使うものにはならない。
そこで、学校のインターネットを地域に向けて少しだけ開いてみることにした。

前回のデジタルデバイド編👇

本シリーズの背景(初めて読まれる方へ)

今から20年以上前の2002年4月。
連絡船が頼りの離島の小学校に、一人の教師が赴任した。
島では、家庭でも学校でも、インターネットは日常的に使えるものではなかった。
本土でADSLが普及し始める一方、島内のデジタルデバイドは広がっていた。
小学校では、隣の中学校から分岐した衛星回線を使い、インターネットとメールが可能になっていたが、利用には多くの制約があった。
👉 つながらない島から始まった挑戦/離島のデジタルデバイド編

そうした環境の中で、教師は総合的な学習の時間を通して、学びを島の外へ、そして島の人たちへ届けようとした。
ICTは目的ではなく、あくまで手段だった。
1年目には、島の魚を紹介するデジタル図鑑を制作し、その成果を島の人たちにも届けるため、連絡船の待合室にPCを設置した。

その後、学校の通信環境を支えてきた衛星通信システムが、残り1年で終了することが分かる。
今年度は、念願の学校ホームページを開設したが、その更新にも苦労があった。
これは、島での2年目。
システム終了へのカウントダウンが進む2003年度の記録である。

【目次挿入】


1 委員会の時間に始めた“小さな作業”

その日、以前からやろうと思っていたことに手を付けることにした。
6校時は委員会活動の時間で、担任としては少し動ける余裕がある。
そこで職員室の中のケーブルを張り直し、さらに漁協の待合室に置いてあるPCの再設定をすることにした。

こうした作業は、表から見ればただの配線や設定にすぎない。
しかし、自分の中ではもう少し大きな意味を持っていた。

昨年度取り組んだ「プロジェクトI」で作った島内イントラネットを、もう一歩進めてみようと思っていたからだ。


2 学校の回線を、地域へ向けて開く

今回の作業の目的は、昨年度取り組み現在も進めている「プロジェクトI」の中の島内イントラネットを少し進めることだった。
学校で使っているインターネットを、地域にも向けて発信してみようと考えたのである。

当時、この島では家庭でインターネットを利用できる環境はほとんどなかった。
今でこそ当たり前のように使われているが、2003年当時、島の中でインターネットに触れられる場所はほぼ学校だけだったのである。


そのため、地域の人たちが気軽に学校からの情報を見ることができる場所として、漁協の待合室にパソコンを1台設置していた。
このパソコンは学校から飛ばしている無線LANを使って接続する仕組みになっており、そこから学校のホームページを見ることができる。

表示されるのは、昨年度の実践である農林水産大臣賞受賞の学習「お魚天国 海辺のデジタル図鑑」である。
子どもたちが島の海で調べた魚をまとめたこのデジタル図鑑を、地域の人にも見てもらえるようにと考えたのだった。
しかし、学校からの情報だけでは、そのうち飽きてくるだろうとも思った。 それでは意味がない。

そこで、地域向けのページと外部向けのページを分けながら、トップページは簡単なリンク集としても使える形にしてみた。

漁業に役立つ衛星観測による海水温の情報。
毎日の天気予報。
新聞社のニュース。

島にいながら、外の世界の情報に少しでも触れられるように。
そんな入り口を作るつもりだった。


もう一つ理由がある。
この学校で使っているインターネット回線も、実は本年度限りで運用が終わる予定になっていたのである。

せっかくここまで整えてきた環境も、このままではなくなってしまう。
だからこそ、その便利さを地域の人たちにも知ってもらいたかった。

もし「これは便利だ」と感じてもらえたなら、 いつか島にもきちんとインターネットを整備してほしいという声が上がるかもしれない。

そんなことを考えながら、この仕組みを少しでも形にしておこうと思ったのである。


3 途切れ途切れの作業

中学校の先生にも協力してもらいながら設定を進めたが、なかなか思うように表示されない。
ケーブルを確認し、設定を見直し、もう一度試す。そんなことを何度も繰り返した。

しかしこの日は作業に集中できる状況でもなかった。
途中で水泳指導が入り、また職員室に戻って設定をやり直す。
そんなふうに学校の仕事の合間を縫いながらの作業になった。

気が付けば、島でインターネットが使える時間の終わりである19時を過ぎていた。
この島では回線の都合で、夜になるとインターネットがつながらなくなる。

完全に確認できたわけではないが、とりあえず動きそうなところまではたどり着いた。
あとは実際にどれだけ使われるかを見てみるしかない。


4 便利さが伝われば、島は変わるかもしれない

とはいえ、本当に大事なのはここからだ。

いくらこちらが仕組みを作っても、地域の人が使わなければ何も始まらない。
このページがどれだけ活用されるかは、正直なところ分からない。
それでも、もしこの小さな仕組みを通して、島の人たちがインターネットの便利さを少しでも実感してくれたらと思う。

天気の情報がすぐ分かる。
海の状況が分かる。
ニュースがすぐ読める。
そうした当たり前のことが、ここではまだ当たり前ではない。

もし「これは便利だ」と感じてもらえたなら、その先にあるのはきっと同じ思いだろう。
・・・この島にも、きちんとインターネットを整備してほしい。


そんな声が、地域の中から自然に上がってきてほしい。
この日の作業には、そんな小さな願いも込められていたのである。


次回に続く・・・👇👇

これまでの離島のデジタルデバイド編👇


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