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300mをつないだイントラネット【島ICT#17】/離島のデジタルデバイド編

前回は、仮設置までこぎつけたアンテナと、近い将来に使えなくなる衛星インターネットの期限について触れた。
そんな状況の中で迎えた卒業式の日、放課後から、もう一度仕上げの作業に取りかかることになった。

前回のデジタルデバイド編👇
風を読み「今日しかない」と決めた日【島ICT#16】/離島のデジタルデバイド編

時系列で直接つながる前回👉島を離れる卒業、島に続く卒業【島小#33】/離島の小学校編 33

本シリーズの背景(初めて読まれる方へ)

今から20年以上前の2002年4月。
連絡船が頼りの離島の小学校に、一人の教師が赴任した。
島では、家庭でも学校でも、インターネットは日常的に使えるものではなかった。

そうした制約の中で、教師は総合的な学習の時間を通して、学びを島の外へ、そして島の人たちへ届けようとした。
ICTは目的ではなく、手段だった。
やがて、学びを支えるために、島の通信環境そのものをどう整えるかという問いに向き合うことになる。

プロジェクトI(アイ)と名付けたこの取組で目指したのは、学校だけでなく、地域全体が情報へアクセスできる環境をつくることだった。
それでも、たとえ究極のゴールに届かなくても、そこへ向かうための「足がかり」だけでも残せたらいい。

これは、その過程で積み重ねられた、小さな試行錯誤の記録である。

そして,島の人に情報を届けるためのイントラネットは完成まで,あと1歩のところまで来ていた。


1 卒業式の夕方、仕上げの作業へ

卒業式が終わった夕方、隣の中学校の先生と、アンテナ設置の最終調整に取りかかった。
この日は、コンクリート柱から垂らしたままだったケーブルを固定し、待合室まで引き込む作業が中心だった。

はしごをかけ、ワイヤーをガイドにしてケーブルを沿わせていく。
地面部分は塩ビパイプに通して固定し、待合室の外では軒を回して、アルミサッシの角から室内へ引き込んだ。
引き込み口はパテで防水処理を施した。

こうした専門的な作業は、隣の中学校の先生の経験に支えられて進んでいた。
現場で一緒に作業をしながら、その頼もしさを感じていた。

作業を終え、待合室内でPCにつないでPING試験で確認したが、まだ反応はないようだった。
アンテナの角度調整が必要だろうという見通しを立て、この日はここまでとした。


2 角度を変えて、つながった瞬間

翌日、最後のセッティングに向かった。
午前中のうちに、学校側のアンテナをコンクリート柱の方向へ向け直し、角度を調整しておいた。

待合室に入り、PCからPINGで通信を確認すると、今度ははっきりと反応が返ってきた。
学校と待合室、約300mの無線LANが、ようやくつながった瞬間である。
「ついにやった・・・。」
思わずガッツポーズをした。

残る作業は、コンクリート柱上のアンテナの本固定だった。
役割を分担しながら作業を進め、固定を終えた時点で、機械的な接続は一通り完了した。
こうして最後まで進めることができたのは、中学校の技術家庭科の先生の力があってこそだった。
本当に感謝の気持ちでいっぱいで,何度もお礼を言った。

電柱に設置された受信機のBOXと学校放送室の送信用PC

時間の都合で、自動シャットダウンや掲示物までは手が回らなかったが、ひとまず「使える状態」にはなった。
その夜は学校に戻り、21時前までかかって、待合室のPCで最初に表示されるスタートページを作成した。
一番に見てほしいのは、「お魚天国海辺のデジタル図鑑」である。


3 使われ始めた場所

数日後、時間を見つけて待合室へ向かい、PCの使い方を簡単にまとめた紙を掲示した。
「ご自由にお使いください」と書いた、最低限の案内である。

あわせて、一定の時間が来ると自動的に電源が落ちるよう、シャットダウン用のソフトも設定した。
管理の負担を減らしながら、安心して使ってもらうための準備である。

作業をしていると、卒業した子どもが母親を連れて待合室にやって来た。
自分が作った作品を見せるためだったのだろう。

こうして実際に使われる場面に立ち会えたことは、素直にうれしかった

お魚図鑑を母親に見せている様子

さらに、校長先生が地元新聞社に連絡してくださり、記者が話を聞きたいと興味を持ってくれたようで、後日の取材が決まった。
地域のインフラ整備には、必要性を感じている人の声があること、そして現状を外に知ってもらうことが欠かせない。

この取り組みがきっかけとなって、本当に地域にインターネットが引かれるようになればいい。
プロジェクトIが、単なる試みではなく、本当の実現に向けて動き出したような気がして、気持ちが高ぶった。


4 取材の日と、1年目の終わりに

修了式と離任式が終わった日、連絡船で10時頃,新聞記者が島にやって来た。
校長先生が出迎え、まずは学校でこれまでの経緯を説明した。

その後、5年生の子どもたちと一緒に待合室へ向かった。
校長先生が声をかけた地域のおばあちゃんが、実際にPCを操作しながら取材を受ける形となり、使う側の姿を通して伝える時間になった。

振り返ると、この1年のプロジェクトIは、校長先生の存在抜きには語れない。
「何でも思うことをやってみなさい」という言葉に、何度も背中を押されてきた。
言葉だけでなく、実際に動き、支えてくださったことへの感謝は尽きない。

校長先生は、この異動で島を離れる。
一人ではできないことも、人との出会いによって、ここまで形にすることができた。
こうして、「プロジェクトI(アイ)」の1年目は一区切りを迎えた。

離島のデジタルデバイド編1年目は,取りあえず,これで一旦終了となります。
これまで読んでいただきありがとうございました。
また,2年目からの取組を後日掲載していきますので,お楽しみに。

これまでの離島のデジタルデバイド編(1年目)マガジンはこちら👇


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