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待合室に集まった、もう一つの教室【島総①#13】/vol2 お魚天国青波島編/離島の総合的な学習①(最終話) 

「おさかな天国デジタル図鑑」が農林水産大臣賞を受賞し、6年生3人が表彰式に出席しました。
東京での貴重な経験を終えて子どもたちが島に戻ると、学校では、6年生の卒業に向けた準備が着々と進んでいました。
そして、本年度のメンバーで取り組む総合的な学習の時間も、いよいよ最後の活動を迎えることになります。
今回が「vol2 お魚天国青波島編/離島の総合的な学習①」最終回となります。

前回の離島の総合的な学習編(学芸員さんと東京の表彰式)👇

時系列の直前のつながりデジタルデバイド編16(待合室にローカルサイトのPC設置)👇👇

今回の解説編はこちら👉(学びを、島に返すところまで【な総島魚#13】/なるほど!総合的な学習2(離島の小学校①・おさかな天国編)

本シリーズについて(初めて読んでいただく方へ)

これは,県内で唯一の離島にある小学校に赴任した1年目、今から約20年以上前も2002年(平成14年)度に行った総合的な学習の時間の実践記録です。
交通も通信も限られた島で、私は総合的な学習の時間に「おさかな天国」と名づけた実践に取り組みました。

島の海で捕れる魚介類を調べ、島の人に話を聞き、子どもたちは試行錯誤しながらデジタル図鑑づくりを進めていきます。
この総合編では、その総合的な学習の時間に関する出来事や子どもたちの姿、その場その場で行った判断や選択を、当時の時間の流れに沿って描いています。
▶ おさかな天国(マガジン離島の総合的な学習の時間①)

なお、授業構成の意図や迷い、教師としての判断の背景等については、別途「解説編」として整理しています。
なるほど!総合的な学習マガジン(離島の小学校編)おさかな天国** **

そして,子どもたちが制作した「お魚天国 海辺のデジタル図鑑」がマイタウンマップ・コンクールで農林水産大臣賞を受賞することとなり、東京での表彰式に出席するという貴重な経験をしてきました。
しかしながら、これまでにこの作品自体を見たことのある島の人はほとんどいませんでした。

※本文中の地名・学校名・人名等は仮名を使用しています。


1 卒業式の予行が終わって

この日は、卒業式の予行が行われました。
体育館での動きや立ち位置を確認しながら、6年生にとっては、小学校生活の終わりがいよいよ現実のものとして迫ってくる時間でもありました。

予行が終わると、気持ちを切り替える間もなく、3限目には5年生と6年生を連れて、港の待合室へ向かいました。
この日の総合的な学習の時間では、待合室に設置したパソコンを使い、老人会の方々に操作を教えながら、自分たちが制作してきたデジタル図鑑を見てもらう計画を立てていました。

実は前日、待合室にはパソコンが設置され、作品をローカルで見られる状態が整えられていました。
まだ回線はつながっていませんでしたが、島の人に見てもらうための準備だけは、先に進めていたのです。

これまで子どもたちの学びは、教室の中で形をつくり、島の外へも届けてきました。
けれど、島の人に直接見てもらうという場面は、ようやくこの日を迎えることになりました。


2 待合室に集まった人たち

待合室に着くと、すでに何人ものお年寄りが集まってくださっていました。
こちらが想定していた以上の人数で、子どもたち6人と数名のお年寄りが入ると、待合室はすぐにいっぱいになってしまいました。

画面の前に腰を下ろし、少し身を乗り出すようにしてパソコンをのぞき込む姿がありました。
これまで何度も顔を合わせてきた島の方々でしたが、パソコンを前に向き合うのは、初めてのことでした。

この日の「指導係」は、6年生ではなく、あえて5年生に任せることにしました。
これから学校の中心になっていく学年に、この経験を託したいという思いがあったからです。


お年寄りにとっては、パソコンに触れること自体が、ほとんど初めての経験だったと思います。
けれど実は、子どもたちにとっても、人に操作を教えるという経験は、これが初めてでした。


3 教えることで、見えてきたこと

最初は、どう説明すればいいのか分からず、戸惑いながら声をかけていた子どもたちでした。
けれど、画面を一緒に見つめ、操作を繰り返すうちに、少しずつ気づきが生まれていきました。

難しい言葉を使わない方が伝わること。
マウスのクリックが思うようにできないこと。
スクロールの操作が特に難しいこと。
実際に教えてみて初めて分かることが、次々と出てきたのです。

相手の手元を見て、動きを待ち、伝わったかどうかを確かめながら進めていく。
そのやりとりの中で、子どもたちの表情も、次第に落ち着いたものに変わっていきました。

この時間は、お年寄りにとっても、子どもたちにとっても、新しい世界に触れる機会になったのだと思います。
自分たちの学びを見てもらうだけでなく、相手に合わせて伝えることの難しさと大切さを、子どもたちは確かに感じ取っていました。


4 学びが、島に戻ってきた日

この日の待合室には、特別な演出は何もありませんでした。
置かれていたのは、前日に設置した1台のパソコンと、子どもたちが時間をかけてつくり上げたデジタル図鑑だけでした。

けれど、その画面を囲んで、子どもたちとお年寄りが言葉を交わし、同じものを見つめる時間が生まれていました。
操作を教えながら、相手の様子を確かめ、伝わったかどうかを確かめる。
そこには、これまで教室で積み重ねてきた学びが、そのままの形で現れていたように思います。


この1年間、総合的な学習の時間を通して、子どもたちは島のことを調べ、考え、まとめ、外へ向けて発信してきました。
その学びが、ようやく島の中に戻り、島の人の目に触れたのが、この日でした。

まだできていないことは、たくさんあります。
環境も十分とは言えず、次に進むための課題も、はっきりと見えています。
それでも、学びを島に返すための最初の一歩は、確かにここにありました。

こうして、1年目の総合的な学習の時間は、静かに一区切りを迎えます。
教室から始まった学びは、島の外を回り、再び島へと戻ってきました。
この先、どんな形で続いていくのかは、まだ分かりません。
けれど、子どもたちと島の人が同じ画面をのぞき込んだこの時間は、次の学びへと確かにつながっていくはずです。

これまで読んでいただき,ありがとうございました。


vol2 お魚天国青波島編/離島の総合的な学習 ① 完
(Coming Soon… vol3 アワビいっぱい大作戦編/離島の総合的な学習②)

今回で離島1年目の実践は,完結しました。
実践の歩みはマガジンでどうぞ。
総合実践のvol2、おさかな天国(マガジン離島の総合的な学習の時間①)



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