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前日は教室、翌日は表彰式【島総①#12】/vol2 お魚天国青波島編/離島の総合的な学習① 

前回は図鑑の入賞が内定し、公式発表を経て、子どもたちは市長や教育長への表敬訪問を行いました。
島の教室で積み重ねてきた学びが、初めて社会の場に出た出来事でした。

前回の話👉漏らすなと言われた夜、島で叫んだ【島総①#11】

本シリーズについて(初めて読んでいただく方へ)

これは,県内で唯一の離島にある小学校に赴任した1年目、今から約20年以上前も2002年(平成14年)度に行った総合的な学習の時間の実践記録です。
交通も通信も限られた島で、私は総合的な学習の時間に「おさかな天国」と名づけた実践に取り組みました。

島の海で捕れる魚介類を調べ、島の人に話を聞き、子どもたちは試行錯誤しながらデジタル図鑑づくりを進めていきます。
この総合編では、その総合的な学習の時間に関する出来事や子どもたちの姿、その場その場で行った判断や選択を、当時の時間の流れに沿って描いています。
▶ おさかな天国(マガジン離島の総合的な学習の時間①)

なお、授業構成の意図や迷い、教師としての判断の背景等については、別途「解説編」として整理しています。
なるほど!総合的な学習マガジン(離島の小学校編)おさかな天国** **

そして、子どもたちが制作した「お魚天国 海辺のデジタル図鑑」がマイタウンマップ・コンクールで農林水産大臣賞を受賞が決定した後のことを今回は綴っています。

※本文中の地名・学校名・人名等は仮名を使用しています。


1 専門家の言葉が、教室に届いた日

受賞の知らせからしばらくして、県立博物館の学芸員の先生が来校されました。
今回は魚の専門家にぜひ来ていただきたいと、こちらから特別にお願いして実現した訪問でした。

学芸員の先生は、調査のためにこれまで何度もこの島を訪れている方でした。
直近では三年前に一週間ほど滞在し、潜水しながら魚の採集や観察を行ったそうです。

もともと、このデジタル図鑑を作る過程で、専門家の意見を取り入れたいという思いはありました。
ただ、当時はさまざまな事情が重なり、実現できずにいたのです。

だからこそ、こうして事後ではあっても話を聞けたことは、とても意味のある時間でした。
子どもたちも、自分たちが苦労して調べ、まとめてきた内容だからこそ、強い関心をもって耳を傾けていました。


2 島の海を、もう一度見直す

学芸員の先生は、まず島の海の特徴から話をしてくださいました。
この島は太平洋と瀬戸内海の中間に位置しており、海流の影響で年によって見られる魚が変わるのだそうです。

三年前の一週間の調査では、確認できただけでも約100種類の魚がいたとのことでした。
そこから推測すると、実際には1000種類ほどの魚が生息している可能性があるという話でした。

あらかじめ「お魚天国図鑑」の作品CDを送っていたこともあり、先生は図鑑を実際に提示しながら、一つ一つ丁寧に説明してくださいました。
新種の魚が多いことや、潜水調査ではなく漁師さんが捕る魚については、まだ十分な調査がされていないことなど、子どもたちにとって新しい視点も示されました。

次第に教室では質問が相次ぎ、学習は自然と深まっていきました。
専門家の言葉によって、自分たちの調べてきた世界が、さらに広がっていくのを感じているようでした。


3 島を離れる前日のこと

この日、県立博物館の学芸員の先生には、全校給食を一緒に食べていただきました。
教室での話の続きを、給食の時間にも穏やかに聞かせてくださり、子どもたちにとっては、学びが日常の中へと自然につながっていく時間になっていました。

島では、コンクール入賞の話題が思っていた以上に広がっていました。
連絡船の待合室には新聞記事が掲示され、売店にも同じ記事が貼り出されていました。
港や町で顔を合わせると、「おめでとうございます」と声をかけられることが続き、島全体がこの出来事を自分ごとのように受け止めてくれているのを感じました。


天気は、前日までとは打って変わって穏やかな日和でした。
大きな波もなく、連絡船は静かに港に入ってきました。

この日は、東京へ向かう前日でもありました。
表彰式に出席する三人の子どもたちとその保護者は、学芸員の先生、出張に出る私と校長先生と一緒に、三便であらかじめ本土へ渡ることになっていました。

港には、その出発を見送ろうと、お年寄りの方が何人も集まっていました。
子どもたちや保護者の姿があったからこそ、わざわざ足を運んでくださったのだと思います。
声をかけられながら見送るうちに、この出来事が学校だけでなく、島全体の出来事として受け止められていることを、改めて実感しました。

連絡船が本土に着いて、子どもたちと保護者を宿泊地に送り届けたあと、出張に向かいました。
東京行きを控えた慌ただしさと、少し落ち着かない気持ちが入り混じった一日でした。

出張を終えて自宅に戻ると、翌日の準備に取りかかりました。
限られた時間ではありましたが、せっかくの機会なので、子どもたちにできるだけ多くの経験をさせてやりたいと思ったからです。

インターネットで行き先の情報を探し、資料をプリントアウトしながら、翌日の動きを頭の中で何度も確認していました。


4 島を離れて、東京へ

翌朝、子どもたち三人を連れて、朝一番の飛行機で東京へ向かいました。

当日は東京航空交通管制部のシステムトラブルの影響で、出発が一時間ほど遅れました。
機内で待つ時間もありましたが、無事に羽田へ到着することができました。

到着口を出ると、ちょうど一人の子どものおばさんが出迎えに来てくれていました。
本当は,品川水族館に寄って、そこから水上バスでお台場に向かおうと思っていたのですが、時間的に怪しくなってきたので、ゆりかもめで行くことにしました。
おばさんも表彰式を一緒に見に来てくれました。


5 大きな舞台の上で

表彰式は、滞りなく進みました。
子どもたちは「思ったより緊張しなかった」と話しており、大きな舞台でも落ち着いていたようでした。

式後の懇親会では、他校の子どもたちと話すよう声をかけましたが、なかなか自分から話しかけることはできませんでした。
それでも、このとき私自身が交流のあった青森の先生と初めて直接お会いしました。
HP作りでも参考にした学校で、その子どもたちを引率されてきていました。

同学年ではありましたが、こちらは男の子、相手は女の子たちでした。
島ではなかなか起こらない顔ぶれに、思春期に差しかかる年頃らしい、照れくささがにじんでいました。
少し不思議で、少し楽しい時間だったのだと思います。

駅で一緒に記念撮影(微笑ましい)

同じ小学生でありながら、住んでいる場所も環境も異なる子どもたちと、同じ場に立つこと。
それ自体が、子どもたちにとって貴重な経験だったと思います。

全日程を終える頃、西日本から雨が近づいてきました。
ホテルへ向かう前には、近くのフジテレビの見学にも立ち寄りました。

いつもテレビで見ている放送局ということもあり、子どもたちは楽しんでいる様子でした。
ただ、緊張感が続いていたせいか、感想を聞くと「疲れた」という言葉が返ってきました。

いろいろなことが重なった一日でしたが、きっと心に残る経験になったことと思います。


6 帰り道に見えた島

翌日は時間的な余裕もなく、子どもたちの疲れも見えていました。
結局、ホテルで朝食をゆっくりとり、そのまま空港へ向かうことにしました。

帰りの飛行機では、窓の外に自分たちの島が見えました。
その島を、子どもたちはどんな思いで眺めていたのでしょうか。


表彰式という特別な時間を経て見た島の姿は、行きに見たときとは、少し違って見えたのかもしれません。

本土の連絡船乗り場に着くと、日曜三便で島へ戻る先生方に、賞状や荷物、そして子どもたちを託しました。
私は振替休日となっていたため、そのまま自宅へ戻ることにしました。

あわただしく過ぎた二日間でしたが、その余韻は、しばらく心の中に残っていました。

受賞という出来事を経て、この一年の実践はいったん落ち着きを見せます。
通信環境にも小さな変化が生まれつつあります。
けれど、子どもたちが時間をかけてつくり上げたこの作品は、まだ島の多くの人の目には触れていません。
学びを外に届けたからこそ、今度は島の中にどう返していくのか。
その問いを抱えたまま、物語は、もう一つの場面へと移っていきます。


この解説編はこちら👇

▶次回(最終回 待合室に集まった、もう一つの教室)に続く

これまでの実践をまとめて読んでください 
おさかな天国(マガジン離島の総合的な学習の時間①)👇👇


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