迎える人、再会する人【島学#06】/離島の小学校三年目の学び編 06
2004年5月。
離島の学校での3年目の春も終わりに近づいていた。
6月4日に予定されている公開授業と研究会を前に、島では少しずつ準備が進んでいく。
来ていただく人を迎えるために何が必要なのか。
そんなことを考えながら過ごしていた頃の話である。
1.近づいてくる6月4日
5月も終わりに近づき、「2005年の教室を考える会 in 地方特別大会」の準備はいよいよ大詰めを迎えていた。
朝から参加者へのメールを送り、来島者名簿を整理する。
教頭先生とも当日の日程や旅館の手配について細かな確認を重ねた。
やるべきことは山ほどあった。
しかし、その一方で学校には行事が続き、来客も多い。
机に向かって落ち着いて考える時間がなかなか取れない。
なにより頭を悩ませていたのは、6月4日に予定している公開授業だった。
総合的な学習の時間で行う予定ではあるが、どうまとめればよいのかが見えてこない。
考えては消し、また考える。
気がつけば、そのことばかりが頭の片隅に居座っていた。
2.島のユリの季節
6月4日が近づくにつれ、準備も具体的になってきた。
この日は給食後、来客を迎えに港へ向かう。
その途中で、参加者の宿泊をお願いしている旅館へ立ち寄った。
宿泊人数や宴会の人数を確認し、当日の受け入れについて相談する。
正直なところ、自分自身はその旅館に泊まったことがなかった。
歯ブラシやタオル、浴衣も用意されていることや、部屋数の関係で男女に分かれて宿泊していただくことなどを聞きながら、「いよいよ本当に人が来るんだな」と実感していた。
その日の来客は、昼便で来島された松下教育研究財団の方だった。
KWNプロジェクトの説明を受けるためである。
わざわざ島まで足を運んでいただけることがありがたかった。
映像制作を総合的な学習の時間とどう結びつけるか。
新しい可能性について考える時間にもなった。
その日の午後は、翌日に控えた交歓学習の最終準備を進めた。
そして子どもたちと一緒に、島のユリの採取へ向かう。
この年から島外への持ち出しは行わない方針になっていたが、今回は特別に許可をいただいていた。
これが最後になる。
だからこそ、その意味を子どもたちにも伝えたかった。
小学生たちにとっては、島のユリに関わる初めての機会でもあった。
「明日の交歓学習では、このユリの大切さをぜひとも伝えてください」
私はそう話した。
中学校の先生が先導し、松下教育研究財団の方も一緒に山へ入る。
島で当たり前に見てきた風景が、外から来られた方の目にはどのように映っていたのだろう。
そんなことを少し考えた。
3.県総合部会の夜
5月下旬には県総合部会の総会も開かれた。
1時間授業を終えて出張し、役員選出のあと、研修部と事業部の合同打ち合わせが行われた。
この年、自分は事業部長を任されていた。
8月に予定している夏季研修会の案を提案し、了承をいただく。
県総合部会が発足して4年目。ようやく公開授業を伴う研究発表校も動き始めることになった。
何もないところから少しずつ形をつくってきた先輩方にとっても、感慨深い年だったと思う。
夜は、この部会の前会長であるT前校長先生を囲んでの懇親会となった。
T前校長先生にとっても、感慨深い夜だったのではないかと思う。
もっとも、その頃の自分は、まさか将来、自分自身がこの部会長という役割を担うことになるとは思ってもいなかった。
久しぶりに、採用前からお世話になっていた県教委の方とも再会した。
市の総合部会立ち上げの頃にも一緒に仕事をした方で、顔を見ると自然と当時のことを思い出す。
懇親会が終わると、そのまま別の集まりへ向かった。
東京へ組合専従として赴任していた同期が、翌日の大会のために帰県していたのである。
そこへ、講師時代を共に過ごした同期の仲間も加わった。
振り返れば、3人とも採用前年に同じ学校で働きながら、放課後には採用試験の勉強をしていた顔ぶれである。
そして、その頃の上司が、先ほど再会した県教委の方だった。

仕事の話よりも、昔話の方が多かったかもしれない。
気がつけば、ちょっとした同窓会のようになっていた。
話は尽きず、自宅へ帰った頃には久しぶりに日付が変わっていた。
4.梅雨入り前夜
気づけばこの地方は梅雨入りしていた。
曇っているのに降らない。
そんな蒸し暑い日だった。
午前中は「2005年の教室を考える会 in 地方特別大会」の最終打ち合わせ会が開かれた。
細かなタイムテーブルを確認しながら、当日の流れをひとつずつ詰めていく。
もう後戻りはできないところまで来ていた。
午後になると雲の切れ間から日差しがのぞき、蒸し暑さはさらに増した。
本土での用事を済ませ、最終便で島へ戻る。
港から学校へ向かう道すがら、頭の中ではまだ当日の段取りを反芻していた。
6月4日まで、あとわずか。
校舎に入ると、いつものように準備の続きを始めた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
次回に続く👇
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◆本シリーズについて(初めて読んでいただく方へ)👇👇
約25年前の2002年、船が生活のすべてを左右する離島の小学校に赴任しました。
予定通りにいかないことが当たり前の中で、学校と暮らしが地続きの毎日を過ごしていました。
そんな環境の中でも、子どもたちに自信をもたせたいと考え、総合的な学習の時間に取り組んでいました。
この話は、離島の小学校勤務2004年度当時の日記をもとに、島の学校編では収まらないプロジェクトや情報教育、外部との関わり等について描いていきます。
※本文中の地名・固有名詞は一部仮名としています。
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