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ごちそうのあとに、舞台は消えた【島小②#33】/離島の小学校編Season2 33

新しい船のリズムにも慣れ、島には2度目の冬が近づいてきました。
そんな中で迎えたのは、少し特別な一日と、その先にあるはずだった舞台でした。
前回の話👇

◆本シリーズについて(初めて読んでいただく方へ)
約25年前の2002年、船が生活のすべてを左右する離島の小学校に赴任しました。
予定通りにいかないことが当たり前の中で、学校と暮らしが地続きの毎日を過ごしていました。

そんな環境の中でも、子どもたちに自信をもたせたいと考え、総合的な学習の時間に取り組んでいました。

このシリーズでは、当時の日記をもとに、島での仕事の大変さと、その中にあるささやかな温かさを綴っていきます。
2年目2003年の、Season2(2年目)2学期のお話です。

※本文中の地名・固有名詞は一部仮名としています。


1.島がくれた、思いがけないごちそう

その日の給食は、いつもとはまったく違う空気に包まれていました。
教室に運ばれてきた瞬間、子どもたちの表情が一斉に変わります。
伊勢海老づくしの給食でした。

みそ汁には頭やしっぽが入り、炊き込みご飯には身が使われています。
島の海でとれる食材を、こうしてそのまま味わえる機会は、実はこれまでほとんどありませんでした。

というのも、学校は市全体の給食センター方式に組み込まれているため、基本的な食材は本土から運ばれてきます。
島にある学校であっても、アジやイカですら冷凍のものが使われるのが当たり前でした。
唯一地元の調理員さんが、自校で調理してくれることだけがありがたいことでした。

だからこそ、「せっかくこの場所にいるのに」という思いは、ずっとどこかにありました。
そんな中で実現した今回の給食は、特別な意味を持っていました。

話を聞くと、実現の裏には養護教諭の先生の粘り強い交渉があったそうです。
限られた予算の中で、漁協と何度もやり取りを重ね、大幅に価格を抑えていただいたとのことでした。
初任の養護教諭の先生でしたが、本当にGood Jobでした。

子どもたちは夢中で食べていました。
海のすぐそばに暮らしていて、親が漁師で食べ慣れているはずなのに、毎日の給食で“本当の地元の味”に出会う機会は、意外なほど少ないのです。
何よりも地元の本物食材を囲んで全校での楽しい会話が弾んだ、この特別な給食体験は、きっと記憶に残るのだろうなと思いました。


2.風の夜を越えて、朝の船へ

その翌日から、島の天気は一気に冬型へと変わりました。
学校から見えるプールの水面には三角波が立ち、風にあおられた水しぶきが飛ばされていきます。

夜になっても風は弱まらず、建物の隙間を抜ける音が絶えず響いていました。
それでも、不思議なことに連絡船の欠航を知らせる放送は流れてきません。

翌朝、市の体操検定会に向かうため、子どもたちと一緒に一番早い船に乗り込みました。
正直なところ、出航できるかどうか半信半疑でしたが、船は何事もなかったかのように岸を離れました。

ただし、本当の勝負はそこからです。
島を出て15分から20分ほどの区間、外海に出たところで波は一気に荒くなります。
船内放送でスピードを落とすというアナウンスが入りました。

窓の外を見ると、船はうまく波に乗りながら進んでいます。
以前の船でも同じような操船はしていたはずですが、横揺れの激しさがまったく違いました。
新しい船は、驚くほど安定しています。


それでも体感としては、まるでジェットコースターのようでした。
上下に大きく揺れながらも、どこか安心感がある。
新造船の力を、こんな形で実感することになるとは思いませんでした。


3.それぞれの場所での、精一杯

無事に本土へ到着し、スポーツセンターへ向かいました。
子どもたちと私、そして校長先生での移動です。

市の体操検定会では、私は跳び箱の検定員を担当していたため、子どもたちの演技をじっくり見ることはできませんでした。
それでも、終わった後の表情を見れば十分でした。
それぞれが、自分なりの精一杯を出し切ったことが伝わってきます。

結果以上に大切なのは、こうした場に立ち、挑戦することそのものです。
緊張の中で動いた身体の感覚や、終わった後の安堵は、確実に次へとつながっていきます。


会場では、土曜日に予定されている県の発表会に向けて、合同チームで出場する学校との打ち合わせも行いました。
ここまで来れば、あとは本番を迎えるだけです。

子どもたちの中にも、どこか高揚感のようなものが漂っていました。


4.届かなかった舞台と、いつもの朝

しかし、その「本番」は、思いがけない形で消えてしまいました。

土曜の県の体操発表会当日の朝、6時の時点で県南部に大雨洪水警報が出ていました。
「県内のどこかで警報が出た場合は中止」という取り決めにより、発表会は中止が決定となりました。

電話で各家庭へ連絡を入れます。
今日はそのまま休み、振替休日となるはずだった月曜日は授業を行うことになります。
子どもたちの落胆も想像できましたが、それでもこの判断は避けられないものでした。

結局、私は予定通り朝一番の船で自宅へ向かうことになりました。
準備をしていた分だけ、ぽっかりと空いた時間が、少しだけ不思議な感覚を残します。

その日、島ではまた選挙が行われていました。
今年に入って3回目。
繰り上げ投票ということもあり、すっかり見慣れた光景になっています。
今回はテレビ局の取材もなく、どこか静かな一日でした。
これまで不本意ながら撮影されていたこともあり、少しだけホッとしました。(笑)

海は相変わらず荒れていましたが、島の時間は、何事もなかったかのように進んでいきます。

次回に続く・・・👇


離島の小学校編マガジンSeason1👇

離島の小学校編Season2👇👇

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