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風が止めた船と、進み続けた教室【島小②#34】/離島の小学校編Season2 34

舞台のない週明けでした。
それでも、船が止まり、風が吹き、 教室ではいつもの一日が始まります。
島の12月は、そんなふうに進んでいきました。

前回の話👇

◆本シリーズについて(初めて読んでいただく方へ)

約25年前の2002年、船が生活のすべてを左右する離島の小学校に赴任しました。 予定通りにいかないことが当たり前の中で、学校と暮らしが地続きの毎日を過ごしていました。

そんな環境の中でも、子どもたちに自信をもたせたいと考え、総合的な学習の時間に取り組んでいました。

このシリーズでは、当時の日記をもとに、島での仕事の大変さと、その中にあるささやかな温かさを綴っていきます。

2年目2003年の、Season2(2年目)2学期のお話です。

※本文中の地名・固有名詞は一部仮名としています。


1.風に止められた朝

12月に入ったばかりの島は、いきなり冬の顔を見せてきました。
朝の1便はどうにか出たようでしたが、その後は波が高くなり、昼を過ぎても連絡船は戻ってきていませんでした。
新しい船になってからというもの、一度も欠航がなかっただけに「よく頑張るな」と思っていたのですが、さすがにこの風には勝てなかったようです。
外では、建物を揺らすような風が、ずっと唸り声を上げていました。

それでも、この欠航が学校に影響したのは給食でした。
本来この日は体操発表会の代休になるはずでしたが、中止となったため授業日へと変わっていました。
6年生と引率の教師、合わせて5名分の給食はすでに止められており、その扱いをどうするか考えていたところでした。

実際には、主菜や副菜については、島の調理員さんがこれまでの冷凍食材などを組み合わせて、全校分にうまく調整してくれました。
もともと限られた材料の中でやりくりしているとはいえ、その場で人数を合わせていく手際には、やはり現場の力を感じます。

問題になったのは牛乳でした。
本来届くはずのものが、船の欠航で入ってきません。
その代わりに出されたのがロングライフ牛乳で、これが人数分そろっていたため、結果として全校での給食が成立しました。

風に止められた船の影響は確かにありましたが、教室ではいつもの時間がそのまま流れていきました。


2.いつもと違う教室

数日後の全日公開の授業参観は、島らしいゆるやかな始まりでした。
朝からずっと参観に来る保護者はいませんが、3校時になると、約束したかのようにぽつぽつと姿が見え始めます。
あらかじめ「4校時の全校人権集会には必ず1人参加を」と伝えてあったため、その時間に合わせて来られたのでしょう。

3校時の授業は算数、「割合を使って」の単元でした。
プロジェクターとデジタルボードを使い、電子掛け図で問題を提示しながら進めていきます。
一方で、説明はあえて隣の黒板に線分図を書いて行いました。
新しい道具と昔ながらの板書、その両方を行き来しながらの授業です。

ただ、教室の空気はいつもとは少し違っていました。
背中に視線を感じているせいか、子どもたちはどこか硬く、言葉も慎重になります。

普段ならもう少し軽やかに進む場面でも、一つ一つ確かめるように進んでいった様子が印象に残りました。
それでも、緊張の中でやりきろうとする姿は、確かな成長の表れでもありました。


3.冬へ向かう一輪車

全校体育の時間には、一輪車の練習を行いました。
新年1月4日に予定されている大会に向けての準備ですが、今年はなかなか厳しい状況です。
人数がぎりぎりで、団体戦に出場できるのは3年生を含めて5名。
1、2年生もいますが、まだ大会に出せるほどの技術には達していません。
特に1年生の子は、補助の手すりから離れることすら難しい状態でした。

それでも、この島ではやるしかありません。
自動車が走っていないため、通学路は比較的安全です。
そこで再び、一輪車での通学を始めるよう子どもたちに伝えました。
毎日乗らなければ上達しないし、少しでも感覚を身体に覚えさせるしかないのです。
しばらくは徒歩ではなく、一輪車で来ることになりました。

寒い風の中、ぎこちなくペダルを踏む子どもたちの姿を見ながら、「今年は簡単ではないな」と思いつつも、この積み重ねがどこまで届くのかを信じるしかありませんでした。


4.海を越えて届く言葉

12月に入ると、学校の外から人を迎える機会も増えてきます。
この日は午後から、子育て講演が予定されていました。講師として来てくださったのは、かつて隣の中学校で校長を務め、現在は市内の別の中学校長をされている先生です。
2便で島に入り、3便で帰るという、島ならではの慌ただしい日程でした。

その先生は以前この地域に勤務されていたこともあり、子どもたちや家庭の様子をよく理解されていました。
島の子どもたちは中学校卒業後、高校に通うために島を離れます。
その現実を見据えた話は、どこか具体的で、聞いている側にも強く響きました。

さらに、ご自身の父親としての関わりについての反省も交えられ、「自分はどうだろうか」と考えさせられる場面も多くありました。

講演のあとには個人懇談が続きます。
6年生は3名だけなので時間的には余裕がありますが、その分一人一人とじっくり向き合うことができます。
4月からの成長、学習の様子、健康面、家庭での過ごし方、そして中学校へ向けての準備。
話は自然と広がり、短い人数だからこそできる深い時間になりました。


5.静かに積み重なる、学期末の足音

すべてが終わったあと、職員室に戻ると現実が待っています。
一輪車大会の計画づくり、翌日の子ども会の資料準備、学級会計の締めと集金の用意。
机の上には、細かい仕事がいくつも積み重なっていました。

本当なら少し触りたかったホームページのカスタマイズ、MOVABLE TYPEの調整も、この時期ばかりは後回しです。
学期末が近づくにつれて、やるべきことは自然と優先順位を主張してきます。

外では相変わらず風が吹いていますが、教室の中では、次の行事へ、次の学期へと、静かに時間が進んでいました。
2003年の12月、島の冬は、こうして慌ただしさとともに深まっていきます。

次回に続く・・・👇

離島の小学校編マガジンSeason1👇

離島の小学校編Season2👇👇

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