台風が去ると、イカの季節【島小③#16】/離島の小学校編Season3 16
2004年9月の終わり、また島に台風がやってきました。
今年は何度目になるのだろうと思うほど、夏から秋にかけて台風が続いています。
船が止まり、学校の予定も変わる。
そんな毎日を過ごしているうちに、気が付けば季節は10月へと変わろうとしていました。
1.台風の日の学校
9月29日の昼過ぎ、県内全域に暴風警報が発令されました。
午前中はいつもどおり授業をしていましたが、給食を終えたところで午後の授業を取りやめ、子どもたちは早めに下校することになりました。
島では警報が出ると、まず気になるのは子どもたちの帰り道と連絡船です。朝の1便が戻ると、防波水門は閉まりました。
その様子を見に外へ出ると、島の南側では沖のテトラポッドに大きな波が打ちつけ、白いしぶきが次々と上がっています。
今回の台風は、風よりも雨の勢いが強いようでした。
私はそのまま台風時の宿直のため学校へ残ります。
校舎の中は静かですが、外では雨が窓をたたき続け、時折吹きつける風の音が廊下まで響いてきました。
停電はありませんでしたが、不思議なことに携帯電話だけが圏外になったり復旧したりを繰り返します。
漁協近くのアンテナの影響だったのでしょうか。
原因は分からないままでした。
そんな夜、久しぶりの電話が2本入りました。
1本は組合関係で東京へ派遣されている同期の先生からで、私が上京するので、「今週末、会えるな。」といううれしい連絡です。
もう1本は、以前お世話になった前任の校長先生からでした。
同じ市内の学校で、その日はこちらも宿直だったそうです。
声を聞いているうちに、2年前、台風が近づく夜に一緒に学校へ泊まり、職員室であれこれ話し込んだことを思い出しました。
今回も台風の様子を話したあと、話題は自然と10月から始まるイカ釣りへ移っていきます。
島での暮らしを知っている相手だからこそ、そんな何気ない話も懐かしく感じられました。
いつもの静かな学校で、久しぶりに懐かしい声を聞いていると、台風の夜も少しだけ長さを忘れることができました。
2.船が止まる島
翌朝には台風は通り過ぎていました。
ところが今度は、冬を思わせるような冷たい北風が島を吹き抜けます。
学校のプールには細かな三角波が立ち、プールサイドまで吹き寄せられた水しぶきが外へ飛び散っていました。
風は夕方まで弱まらず、防波水門も閉じられたままです。
午後になってようやく「水門を開けます」という放送が流れましたが、その日の連絡船は最後まで動きませんでした。
台風が過ぎても、すぐに元どおりとはいきません。
船が止まれば、人も荷物も島の時間も、少しだけ足踏みをすることになります。
3.10月、最初の1杯
10月になると、毎年楽しみにしている季節がやってきます。
アオリイカの解禁です。
昨年は思うように釣れず、途中から足が遠のいてしまいました。
今年は夏の間に何度も地震があり、「地震の年はイカが釣れる」と聞いた話を思い出しながら、防波堤へ向かいました。
最初に入った場所は向かい風が強く、思うようにエギを投げられません。
少し場所を移動して、第1投。
着底したエギをゆっくり動かしていると、急に重みが伝わってきました。
「あれ、根掛かりかな。」
そう思いながらゆっくり持ち上げると、水面から姿を現したのは今年最初のアオリイカでした。
しかも、足1本だけで掛かっていたので、自分でも少し驚きました。

その後も立て続けに3杯。
合計4杯という、思っていた以上の好スタートです。
350グラムが2杯、200グラムが2杯。
夏の間は台風に振り回され、船の欠航や宿直が続いていました。
それでも10月になると、島にはまた新しい季節の楽しみがやってきます。
港から宿舎へ戻る足取りは、その日だけは少し軽くなっていました。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
次回に続く。👇
前回の話👇
◆本シリーズについて(初めて読んでいただく方へ)👇👇
約25年前の2002年、船が生活のすべてを左右する離島の小学校に赴任しました。 予定通りにいかないことが当たり前の中で、学校と暮らしが地続きの毎日を過ごしていました。
そんな環境の中でも、子どもたちに自信をもたせたいと考え、総合的な学習の時間に取り組んでいました。
このシリーズでは、当時の日記をもとに、島での仕事の大変さと、その中にあるささやかな温かさを綴っていきます。
3年目2004年度の、Season3のお話です。
※本文中の地名・固有名詞は一部仮名としています。
離島の小学校編Season3👇
離島の小学校編Season1👇👇
離島の小学校編Season2👇👇👇
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