*第1回 担任復帰の春、“本物の学び”を探して・・・和菓子プロジェクト誕生前夜
「子どもたちの心が動くのは、どんなときだろう?」
教科書や黒板の前だけじゃなく、もっとリアルな体験の中で、 学びが生き生きと動き出す瞬間がある。私はそう信じていました。
だからこそ、挑んだのです。 子どもたちが自ら和菓子を企画し、地域と連携して、実際に商品として世に出す・・・そんな“本気のプロジェクト”を、教室で実現しようと。
あれから25年。今もなお、その体験は私の原点として残り続けています。
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1.はじめに
これは、2001年度(平成13年度)、つまり今から約25年前の実践記録です。

その3年前の1998年度、私は勤務校で開催される視聴覚・情報教育に関する研究大会の準備のため、4月の人事異動で「情報教育主任」として担任を離れ、専科担当を命じられました。 初任以来約10年間ずっと担任を務めてきた私にとって、クラスを持たないことはどこか寂しさも感じる出来事でした。しかし、大会を成功させるという目標のもと、その年は準備に全力を注ぎ、結果として10月の研究大会は大成功を収めました。
その後、私は2年間の内地留学制度を活用して教職大学院へ進学。現場を離れ、情報教育を中心に、当時導入が始まった「総合的な学習の時間」についても深く学ぶことができました。
私自身の大学院での研究は、勤務校の5年生を対象にした「総合的な学習の時間」の授業実践でした。その単元「たぬきプロジェクト」では、グループごとにホームページを制作し、地域の魅力を活かした活性化プラン提案するという内容でした。
2.担任に戻った日、私は決めた
そして2001年4月1日、私は再び現場に戻り、6年生の担任となりました。 子どもたちと日々向き合える喜びを改めてかみしめながら、私は心に決めました。
「目の前の子どもたちのために、自分にできることをすべてやろう。もう一度、本気で子どもたちと向き合おう。」
ちょうどその頃、大学院時代のゼミで同じだった現職教員の後輩(県外からの大学院生)から連絡がありました。 「総合的な学習の時間」の単元を新たに開発し、実践を通して研究したいので、授業協力をお願いできないかという依頼でした。
詳しい話を聞くうちに、私の気持ちは大きく動きました。 なぜなら、前年度に自ら取り組んだ実践 〜たぬきプロジェクト〜 では、子どもたちのアイデアこそ面白かったものの、ホームページ上で完結する“机上の空論”にとどまってしまったという悔いが残っていたからです。
「次こそ、子どもたちに“本物”に触れさせたい。社会とつながる学びにしたい。」
そんな思いと懺悔にも似た気持ちが後押しし、協力を快諾しました。
その院生との対話を重ねる中で、次のような方針が見えてきました。
何を題材にするのかを慎重に選ぶこと
ゴールを明確に設定する“プロジェクト型学習”にすること
教師主導ではなく、子どもたちの主体性を引き出すこと
このときの議論や考え方が、その後の私の総合的な学習の進め方の原点となっていったのです。
3.韓国のお菓子と、教室に芽生えた疑問
私たちは、2学期から「和菓子プロジェクト」を本格始動させることにし、1学期は導入期として“気づきのきっかけ”作りに重点を置くことにしました。
「和菓子を題材とするには、どう子どもたちに興味を持たせるか・・・しかも“教師から与えずに”子どもたちが自ら気付く形で。」
そんなとき、学年団で大学の韓国人留学生との交流授業を実施するという話が持ち上がりました。
「これはチャンスだ!」
私は院生と共に、和菓子につながるストーリーを練り上げました。
和菓子の商品開発を進めるには、地域の特色や魅力を理解することが不可欠です。そこで、韓国人留学生に地域紹介をする授業を企画し、子どもたちに地域の自慢を調べ直させました。

交流当日、韓国の民族衣装で登場した留学生に、教室はどよめきに包まれました。 子どもたちは、自分たちの地域の魅力をクイズ形式やスライド発表で自信をもって紹介し、交流は大変充実したものとなりました。
後日、子どもたちはお礼の手紙を送り、その返事として韓国の伝統的なお菓子「ペクソルギ(白雪餅)」を紹介・贈呈していただきました。そこに書かれていた一文が、子どもたちの心に火をつけたのです。
「日本にも伝統的なお菓子はありますか?」
この素朴な問いかけから、子どもたちの中に「日本の伝統的なお菓子って何だろう?」という疑問が芽生えました。
「日本の伝統的なお菓子って何?」その素朴な問いが、やがて教室にあんこの香りを運び、子どもたちのは新たな学びに向かうことになるのです。

▶︎ 第2話に続く
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