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第4回 解散、そして再結成へ・・・和菓子開発の扉を開く

 情報は集まった。でも、ここからが本当の勝負だった。
 小学生たちは今、自分たちの「想い」を形にしようとしている。その一歩はワクワクに満ちていた。でも「みんなでひとつを創る」ことは、想像以上に難しかったのです。
今から約25年前の2001年(平成13年)度の実践です。第1回はこちら

今回の舞台裏(解説編)はこちら


1.情報を「伝える」形に整理する

 市場調査を通して、たくさんの情報が集まりました。しかし、情報が多ければ良いというわけではありません。どう活かすか、その方法が子どもたちにはまだ見えていませんでした。

 そこで私たちは、「初めて見る人にも伝わるように」資料を整理することにしました。

 アンケート班は、調査用紙を持ち寄り、それぞれの質問内容を集計して、年代別や全体の傾向を一覧表にまとめました。和菓子屋インタビュー班は、売れ筋や職人のこだわりなど、現場の声を的確に整理しました。インターネット班は、調べたページを印刷し、項目ごとに模造紙に貼り付け、視覚的にわかりやすい資料に仕上げました。

 もちろん、全体を記録・支援していた情報記録班の資料提供も忘れてはなりません。各班が協力しながら「誰にでも伝わる整理」を意識する中で、子どもたちは「伝える」ための工夫を少しずつ体得していきました。

情報の整理分析

2.まさかの調査班解体、新たな開発チーム編成へ

 すべての調査資料が出そろったタイミングで、私は子どもたちにこう伝えました。

「お疲れさま。よく頑張って、素晴らしい資料ができました。でも、調査班はこれで解散します。これからは新しいチームを編成します。」
アンケート班、お店班、インターネット班、情報記録班のそれぞれから1~2名ずつが入り、複数のプロジェクトチームをつくることにしました。

調査経験を活かしたプロジェクトチーム結成

 市場調査を通して得た感覚や情報を活かし、ひとり一人が商品開発に主体的に関わっていくことを目指しました。チーム内では、それぞれが専門性をもって貢献しながら、目標に向かって進みます。新しいチームでは、全員が主役であり、開発責任者であると私は伝えました。


3.「想い」を形に・・・コンセプトメイキングの始まり

 このタイミングで、コンセプトメイキングを行うことにしました。これは、企業などでも用いられている「商品開発の核を明確にする」作業です。漠然としたアイデアを、目的や方向性をもった具体的な構想へと仕上げていく段階です。

 私は、アドバイザーである和菓子職人さんが、和菓子組合で実際に商品を共同開発した際の事例を子どもたちに紹介しました。それを参考にしながら、各チームがこれまでの市場調査や自分たちの感性・アイデアをもとに、オリジナルの和菓子づくりを本格的に進めていくことを確認しました。

 この「コンセプトづくり」は、今後の開発の土台となる、最も重要なプロセスです。


4.個人のアイデアから、チームでの創造へ

 コンセプトメイキングを具体的に進めるため、まずは子どもたち一人ひとりに、自分の和菓子アイデアを考えてもらいました。ここでは制約を一切設けず、味・形・色・技術的な面すべて自由に、パソコンで「自分だけの和菓子コンセプト」を作成しました。「自分たちの地域を元気にする和菓子を作ろう」という共通の思いが、子どもたちの中にはしっかりと根付いていました。

 見るだけで楽しくなる和菓子、奇抜な発想のもの、現実的な工夫が詰まったものなど、多種多様な案が出そろいました。地域の名物にちなんだネーミング、特産物を使った素材選び、色合いや大きさへのこだわり──どれも子どもたちの思いが詰まったアイデアでした。

個人で考えた何人かの和菓子案(実際の資料を基にして)

 そしてここからは、いよいよチームごとの「企業秘密」の時間に入ります。それぞれのチームが、個人のアイデアをもとに、和菓子の商品案を練り上げていく段階に入りました。

 しかしこの段階で、子どもたちの勢いが急にスローダウンしてしまいました。少人数のチームであっても、意見をまとめていくことの難しさに直面したのです。「実際に売り出す商品にふさわしくなければならない」というプレッシャーも重くのしかかっているようにも感じました。各チームが苦しんでいました。特にリーダーは、どうやってみんなの意見を取りまとめるのか、自分の考えを押し通すべきなのか、わからなくなっていました。リーダーの子どもたちは、振り返りワークシートにこう記していました。

・自分たちのチームの和菓子を考えていると、みんなが意見を言わないので自分の案しかなく、「自分の意見が正しいのかな」という考え方になってしまった。
・メンバーが増えると意見がまとまらない。一応聞くけど、自分の考えに入れなかった。

壁にぶつかる

 このような葛藤は、決して失敗ではありません。むしろ、「みんなでひとつのものを創る」ことの難しさと、本当の意味での対話を学ぶ入り口でもあるのです。


5.次回予告:暗礁の先にある光を信じて

 “コンセプト”という言葉の重みが、子どもたちの心にじわじわと広がっています。各チームでの和菓子案づくりは、いったん暗礁に乗り上げてしまいました。今、教室には静かな葛藤が漂っています。
でも私は信じています。この壁の向こうにこそ、子どもたちの「本当の企画力」が育つのだと。

 いま、子どもたちは「産みの苦しみ」の真っただ中にいます。この壁をどう乗り越えるのか・・・。次回、プロジェクトはいよいよ転機を迎えます。


▶︎ 第5話に続く

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