第5回 子どもたちと職人の対話が生んだ、新たな発想
本当にこれでいいのだろうか?
意見がまとまらず、自信をなくす子どもたち。そのとき届いたのは、職人からの静かなヒントでした。
今から約25年前の2001年(平成13年)度の実践です。第1回はこちら
今回の舞台裏解説はこちら👇
1. 大人が驚く子どもの発想力・・・職人さんからの4つの視点
子どもたちが悩んでいる姿を見て、私たち教師も思わず考え込んでしまいました。授業後、後輩の院生がプロジェクトアドバイザーである和菓子職人さんのもとへ、相談に行ってくれました。
その後の報告によると、職人さんは子どもたち一人ひとりの和菓子案や、各チームごとの発想を丁寧に見てくださり、「大人や職人には思いつかない発想があって、子どもたちの想像力は本当にすごいですね」と感心しながら、一枚一枚、じっくりと案をめくっていたそうです。
さらに、職人さんは次のような4つの視点を示してくださいました。それを院生が私に伝えてくれました。
1.「本当に食べてみたいと思えるものか?」(形や材料から想像して、食べたくなる魅力があるか)
2.「美味しいと感じられるものか?」(さまざまな風味の餡を混ぜると美味しさが損なわれないか)
3.「シンプルであるか?」(手間がかかりすぎると商品化が難しい)
4.「和と洋の融合も可能性がある」(市場では和洋折衷のスイーツに人気が集まっている)
この4つの視点を踏まえて子どもたちが見直せば、より現実的かつインパクトのある商品につながるのではないかと考えられました。とはいえ、職人さんはあえて断定的な表現を避けておられました。子どもたち自身の発想を何よりも大切にされていたからだと思います。

2. 伝えるべきことと、伝えない勇気・・・子どもたちの再検討
院生の報告を受けて、私たちは子どもたちに「プロの視点」をアドバイスとして共有することにしました。ただし、4つのうちの最後「和と洋の融合」については、あえて伝えないことにしました。その理由は、もしそれを伝えてしまえば、すべての班が「和洋折衷案」に偏ってしまい、子どもたちの自由な発想や職人さんの想いが損なわれてしまうと考えたからです。
各チームは、共有した3つの視点をもとに、もう一度アイデアを再考しました。私もチームに入り、話し合いができるだけ前向きで建設的になるようサポートしました。考えが深まるにつれて、材料や味、技術的なことなど、さまざまな疑問が子どもたちの中に浮かんできました。

3. 職人とつながる教室・・・BBSで生まれた探究の対話
そこで、教室に設置していたネットワーク接続のデスクトップパソコンを活用することにしました。このパソコンでは、子どもたちが交代で学級日誌などを書いていましたが、今回は私が立ち上げたBBS(電子掲示板)に接続できるようにしました。授業に何度も足を運んでいただくことは難しい中、BBSに悩みや疑問を投稿すれば、職人さんが返事をくださるという仕組みです。
職人さんは子どもたちの質問に対し、専門的な知識を活かしながらも、わかりやすく、そして何より子どもたちの発想を尊重する形で丁寧に応じてくださいました。
▼実際のやりとり(一部抜粋)
Q:すだちのように見せるため、おもちを緑色にしたいのですが、どうすれば味と色が出せますか?
A:名産のすだちはいいアイデアですね。色は着色料でつけられますが、すだちの皮をすりおろすと自然な緑色になります。味づけは絞り汁やジュースなどが使えますよ。
Q:うすかわまんじゅうの皮ではどんな形がつくれますか
A:皮が薄いため、あんが柔らかくなると形が崩れます。球形やたわら型が向いています。
Q:チョコとあんこは合うのですか?
A:白あんならチョコと相性が良いと思いますが、こしあんやつぶあんでは少し難しいかもしれません。
こうした対話を通して、私たち教師も子どもたちの思考を深めるサポートを重ねました。材料や形、売りポイントなどを一緒に考えながら、何度も問い直しを繰り返しました。子どもたちも真剣に向き合い、粘り強く案を練り上げていきました。そして、ついに各チームがそれぞれの個性とアイデアを活かした、オリジナルの和菓子案を完成させたのです。

4. そして次なるステップへ・・・代表作決定コンペ開催!
ついに完成した、6チームそれぞれのオリジナル和菓子。ここからは、実際に製作・販売する「代表作」をひとつ選ぶためのコンペ(コンテスト)が始まります。子どもたちは、自分たちの想いが詰まった和菓子をどう伝えれば魅力的に届くのか、プレゼンの準備に取り組み始めました。審査員が見守る中で行われる本番。どのチームがどんなふうにアピールし、どんな結果が待っているのか・・・。
子どもたちの挑戦は、いよいよクライマックスへ。次回はいよいよ代表作のプレゼンと審査の様子をお届けします。
▶︎ 第6話に続く
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