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海の向こうに、塩の先生がいた【島総③#06】/総合実践の記録vol4 塩物語編/離島の総合的な学習③ 

2004年10月。
塩について調べ、少しずつ知識を増やした3人。
でも、知っただけでは塩はできません。
今度はビデオカメラとマイクを抱え、海の向こうの「本物の塩づくり」を訪ねることになりました。


1.海の向こうに、塩を作る人がいる

塩についての教材研究を終え、今度はいよいよ塩づくりの現場へ向かうことにしました。

同じ市内に、海水から自然塩を作り、実際に販売している漁協があるという話を聞いたのです。
同じ市内といっても、私たちの島から見れば海の向こうです。そこへ行くには、いつもの連絡船に乗らなければなりません。

せっかく本物の塩づくりを見ることができるのです。
ただ見学して「すごかった」で終わらせるのはもったいない。
自分たちは何を知りたいのか、何を聞いてくるのか、出かける前に3人でじっくり考えることにしました。

まず、それまでに考えていた質問を1枚ずつ付箋紙に書き写していきます。
それを机の上に広げ、3人で相談しながら、似ている質問を集めていきました。

「これは作り方のこと。」

「こっちは塩を売ることかな。」

見学の準備

付箋紙を動かしていくうちに、聞きたいことが少しずつ整理されていきます。
これは聞いておきたい、これも知りたい。
気がつけば、たくさんの質問ができあがっていました。

2.教室が小さな取材現場になった

今回持っていくのは、質問だけではありません。

KWNプロジェクトで貸与されていたビデオカメラやマイクなどの撮影機材も持っていきます。
塩づくりについて学ぶと同時に、その様子を自分たちで映像に記録する計画でした。

そこで、取材の練習もしておくことにしました。

インタビューされる役は私です。
3人はカメラを担当する子、マイクを持つ子、全体を見ながら指示を出す子に分かれました。

「じゃあ、始めます。」

カメラを構え、マイクを向け、質問をする。
やってみると、ただ話を聞くだけとはずいぶん勝手が違います。
相手の声はきちんと入っているか。
カメラはちゃんと相手を映しているか。
次の質問へ移るタイミングはどうするか。

3人で役割を交代しながら、実際の取材を想定して試していきました。

準備の最後は、放課後です。

島の漁協組合長さんのところへ出かけました。
本土で製塩をしている漁協の組合長さんへ連絡を取っていただくためです。

電話がつながりました。

ここで教師に代わるのではなく、子どもたちが電話に出ます。

自分たちが塩づくりについて調べていること、実際の製塩所を見せてほしいことを伝え、直接お願いしました。
そして、無事に訪問の約束を取りつけることができました。

いよいよ、本物の塩づくりを見に行きます。

3.海を渡って製塩所へ

数日後。

3人はビデオカメラやマイクなどの取材道具を持ち、連絡船に乗り込みました。
目指すのは、海の向こうにある本土の漁協です。

これまでインターネットや博物館の資料で、世界や日本の塩づくりについて調べてきました。島のお年寄りからは、終戦後の塩づくりについても聞きました。

でも今回は違います。

今、実際に海水から塩を作り、それを商品として売っている人たちに会えるのです。

漁協に着くと、まず組合長さんからお話を聞くことになりました。

そこで見せていただいたのは、実際に製品として販売されている塩でした。
大粒の塩と普通の塩、そして「にがり水」もあります。

前回調べたばかりの「にがり」が、今度は目の前に本物として置かれています。

組合長さんは、なぜここで塩づくりを始めることになったのかなど、詳しく話してくださいました。

組合長さんへ

3人はさっそく、インタビュアー、カメラマン、ディレクターに分かれます。
教室で練習した小さな取材班が、本番を迎えました。

4.真っ白な塩と、ぐつぐつ煮える釜

組合長さんへのインタビューを終えると、今度はいよいよ塩を作っている現場へ向かいました。

作業場へ入って、まず目に飛び込んできたのは真っ白な塩です。

「うわー、真っ白!」

まるで雪のようでした。

その奥では、大きな釜で海水がぐつぐつと煮詰められています。
資料の写真で見ていた塩づくりが、音や熱気を伴って目の前にありました。

ここで塩づくりをしていたYさんは、2004年6月からこの場所で製塩を始めた方でした。
その前には沖縄の与那国島まで行き、塩づくりを修業してきたそうです。

Yさんは、3人にも分かるように一つひとつ丁寧に説明してくださいました。

まず驚いたのは、火を止めないことです。

専用の釜を作り、燃料となる薪を24時間絶やさず燃やし続けます。
それでも塩ができあがるまでには、約1週間かかるというのです。

ただ海水を釜に入れて、どんどん煮詰めれば塩になるわけでもありません。

まず海水を煮詰めながら濃い「かん水」を作ります。
そのとき使うのが「塩ボーメ」という道具でした。
これで塩分濃度、正確には比重を測りながら、海水がどれくらい濃くなっているのか確かめていきます。

さらに、途中でカルシウム分をこして取り除かなければ、できあがった塩が粉っぽくなってしまうことも教えてくださいました。

そして、できあがった塩を少しなめさせていただきました。

「あれ、思ったほど辛くない。」

見た目は真っ白な塩なのに、口にしてみると、普段使っている塩から想像していたような強い辛さではありませんでした。
作り方を聞くだけでなく、実際に味わってみたことで、「自分たちがこれから作ろうとしている塩」が、ぐっと身近になったようでした。

塩作り取材

海水を煮れば塩ができる。

始める前は、それくらいに考えていたかもしれません。

ところが、本物の塩づくりには、火加減や時間、濃度の測定、途中で取り除くものなど、いくつもの手間と工夫がありました。

5.「あの島なら、いい塩ができる」

自分たちがこれから作ろうとしているものと同じ、海水から生まれた塩です。
実際に口にしてみると、ますます自分たちでも作ってみたくなります。

作業場の外へ出ると、Yさんはさらに製塩の工夫を教えてくれました。

24時間燃やし続ける薪には流木を使っていること。
海水はポンプでくみ上げていること。
塩を作る釜の中だけでなく、その周りにもたくさんの工夫がありました。

そして話を聞いているうちに、思いがけないことが分かりました。

Yさんは最初、私たちが暮らす島で塩づくりをしようと考えていたというのです。

私たちもこれから島の海水で塩を作ろうとしていることを話しました。

するとYさんは、

「あの島なら、とてもいいお塩ができるでしょう。」

と言ってくださいました。

その言葉を聞いた3人の顔が、少しうれしそうに見えました。

島のお年寄りから昔の塩づくりを聞き、インターネットや博物館で塩について調べ、今度は海を渡って本物の製塩所までやってきました。

何より今回は、事前に質問をじっくり考え、撮影の練習までしてきたおかげで、聞きたかったことをたくさん聞くことができました。

そして、ビデオカメラで記録したことのよさも感じました。
手書きのメモでは、話を聞きながらすべてを書き留めることはできません。
しかし映像なら、Yさんの説明はもちろん、塩ボーメの使い方や釜の様子まで、あとから何度でも確かめることができます。

「あそこ、もう一回見てみよう。」

そんなこともできるわけです。KWNプロジェクトのために使い始めたビデオカメラでしたが、今回のような取材では、学んだことを教室へ持ち帰る道具としても役立ちそうでした。

連絡船に乗って島へ帰れば、今度は自分たちの番です。

海から見える自分たちの島

あの島の海から、本当にいい塩を作ることができるのでしょうか。

試してみたくて仕方がなくなっていました。


ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回に続く👇

前回の話 👇

初めて来られた方へ👇👇

本シリーズは、離島の小学校で実践した総合的な学習の記録です。
本作は2004年度、赴任3年目の取組を扱います。
島の人たちのために,ウミブドウを栽培し,お祭りで食べてもらうつもりでした・・・。
この年は,台風の襲来が多く,実践にも大きな影響がありました。

ついに「塩物語」が始動します。
「お魚天国海辺のデジタル図鑑」から始まる離島の総合実践3部作の最終作です。
ついに「塩物語」が始動します。
「お魚天国海辺のデジタル図鑑」から始まる離島の総合実践3部作の最終作です。


総合実践のvol2、お魚天国デジタル図鑑編(マガジン離島の総合的な学習の時間①)👇👇

総合実践のvol3、アワビいっぱい編(マガジン離島の総合的な学習の時間②)👇👇👇

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