見出し画像

アワビは6番目だった 教室で生まれた気づき【島総②#21】/vol3 アワビいっぱい編/離島の総合的な学習② 

2003年度の総合的な学習の時間「アワビいっぱい大作戦」。
メールを通して全国の小学校にお願いしたアンケート調査の結果がまとまりました。
実際の結果をもとに、子どもたちがどのように考え、どのような気づきを得ていったのか、その一部を紹介します。


1 全国から集まった1万428人の声

これまでの単元では、島の基幹産業である潜り漁師のアワビ漁に目を向け、稚貝の中間育成に取り組んできました。
地域のことを知り、関わり、役立つ学びとして進めてきた実践でしたが、一方で、このままでは体験で終わってしまうのではないかという思いもありました。

そこで、アワビという題材をより深く捉え直すとともに、島の外へと視野を広げる学びとして、これまで進めてきた交流学習をさらに発展させ、ICTを活用したアンケート調査を行うことにしました。
自分たちにとって当たり前の存在が、外からはどのように見えているのかを知ることが、次の学びにつながると考えたためです。

全国の小学校の中から、ホームページをよく更新している学校を選び、メールで協力を依頼しました。
その結果、約600校に依頼し、169校から回答を得ることができました。
回答した児童数は1万428人にのぼり、1つの県をのぞいてすべての都道府県から回答が集まりました。

この規模の調査によって、子どもたちの視点から見た「貝」と「アワビ」の位置づけが見えてきました。


2 思い浮かべる貝の名前

「貝で一番に思いつく名前」という質問では、全国の結果としてアサリが最も多く挙げられました。
アワビは6番目という結果でした。

この結果を見て、子どもたちからはこんな声が出てきました。

「え、アワビって6番目なんだ」
「自分たちは最初に思い浮かぶのに」

また、地域別の結果を見ると、山に近い学校ではホタテを挙げる割合が高く、北海道東北地方ではホタテが最も多くなっていました。

「場所によって思い浮かべる貝がちがうんだ」
「とれる場所と関係がありそうだね」

こうしたやりとりを通して、貝のイメージは地域によって違いがあり、その中でアワビは地域によって位置づけが異なることが見えてきました。


3 よく食べる貝の実態

「よく食べる貝」の結果では、全国的にアサリが圧倒的に多く、続いてシジミなどが挙げられていました。
アワビについては、ほとんど挙げられていない状況でした。

この結果を見て、子どもたちからはこんな声が出てきました。

「アワビって、あんまり食べてないんだ」
「自分たちは知ってるけど、普通は食べないのかな」

地域別に見てもこの傾向は大きくは変わらず、海に近い学校でもアサリやシジミが多く食べられていることが分かりました。

「海の近くでも同じなんだ」
「とれる場所と食べるものは、またちがうのかもしれないね」

こうした結果から、貝の中でも日常的に食べられているものと、そうでないものがあることが見えてきました


4 食べた経験とその印象

「アワビを食べたことがあるか」という質問では、食べたことがあると答えた児童は全体の約3分の1にとどまりました。
地域別では、山に近い学校ほど割合が低くなる傾向が見られました。

この結果を見て、子どもたちからはこんな声が出てきました。

「思ったより食べたことある人が少ない」
「やっぱり、あまり身近じゃないのかな」

一方で、「食べた感想」では、「とてもおいしい」「どちらかといえばおいしい」と答えた割合が76.6%となっていました。

「食べた人はおいしいって言ってるんだ」
「機会があれば食べてるってことかな」

こうしたやりとりから、アワビは食べた人の評価は高いものの、その経験自体が限られているという特徴が見えてきました。

そして、アンケート結果を載せたHPの子どもたちの最後のメッセージには、こうありました。

「私たちはこのアンケート調査をしてみて,アワビが貝の中でそれほど知られてないなと思いました。
私たちの島の中では一番になっているアワビでも,全国の人から見ればまだまだなんだなと思いました。
アンケートの集計やたくさんの学校へのお礼のメールが大変だったけど,いろいろなことがわかってよかったと思います。
あまり,知られていないアワビだから,私たちもこれから大事に育てていきたいと思います。
全国169校1万428人の小学生のみなさん本当にありがとうございました。」


5 調査結果の意味

このアンケート調査は、子どもたちにとって、自分たちの身近な存在を外から見直す機会となっていました。
島では身近なアワビも、全国の中では必ずしもよく知られ、よく食べられている存在ではないことが、具体的な数値として示されました。

こうした結果にふれることで、子どもたちは自分たちの見ている世界がすべてではないことに気づき始めます。
ふだん当たり前だと思っていたことが、場所によって違っているという実感が、少しずつ生まれていきました。

これまで続けてきた交流学習も、単にやり取りを重ねることが目的ではなく、こうした違いに気づき、自分たちの学びを見直していくためのものでした。
今回の調査は、その積み重ねの中で得られた一つの結果であり、子どもたちが外とつながりながら考えていく学びの流れを、より確かなものにしていったといえます。


ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回に続く・・・👇

前回の話 離島の総合的学習の時間②#20👇

初めて来られた方へ👇👇

本シリーズは、離島の小学校で実践した総合的な学習の記録です。
本作は2003年度、赴任2年目の取組を扱います。
アワビの中間育成・放流を軸に、交流活動やICT活用を重ねながら広がっていった学びの過程を描いています。

前年度には「おさかな天国 海辺のデジタル図鑑」に取り組み、農林水産大臣賞を受賞しました。
▶ 前シリーズ 総合実践のvol2、おさかな天国(マガジン離島の総合的な学習の時間①)

これまでの経緯 総合実践のvol3、アワビいっぱい編(マガジン離島の総合的な学習の時間②)👇👇👇


いいなと思ったら応援しよう!

熱中探究教室 応援いただいたお気持ちは、子どもたちの学びを物語として発信し続ける力となり、教育の現場で役立つヒントへとつなげていきます。