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“届ける図鑑”は深夜の教室から動き出した 【島総①#06】 /vol2 お魚天国青波島編/離島の総合的な学習①

第5回で気づいた「並べるだけでは伝わらない」という思いは、“届ける図鑑”を目指す試作の始まりとなりました。 そしてその歩みは、深夜の教室から静かに動き出します。

前回の話 👇

離島勤務1年目総合的な学習の時間の実践記録です。 今から約20年以上前の2002年(平成14年)度のことです。
※注:本文中の一部地名や固有名詞・氏名等は仮名(かめい)にしています。


1.深夜、模造紙に道が生まれる

教室には誰もいません。
唯一、音を立てているのは、ぽつぽつと窓を叩く雨と、電源から立ち上がった職員室用ノートパソコンのファンです。

翌日の総合的な学習の時間に向け、私はまずホームページビルダーの使い方マニュアルづくりから取りかかりました。
プレゼン用ソフト「はっぴょう名人」と違い、大人向けに作られたホームページビルダーは、子どもには操作が難しい部分があります。
昨年度の前任校で使用したマニュアルをもとに手直しを試みましたが、ネットワーク設定などが異なるため、画面キャプチャを一つずつ撮り直す必要がありました。
作業の途中では、教室のPCから必要な画面を取り込むために席を立つこともありました。

同時に、ワークシートも2種類作成しました。
1つは、「ひな形」「項目」などの用語解説や、図によるサイト全体構造、魚介類紹介ページとの関係をわかりやすく示し、「どのような視点でページを構成するか」を示したもの。
もう1つは、「自分たちのグループの工夫とその理由」「発表用原稿の骨組み」など、子どもたちが授業中に直接考えを書き込むためのものです。

作業を進める中で、教室にある古いPCのストレージ容量が気になりました。
魚の写真データは意外と重く、保存エラーが起きれば流れが止まります。
そこで、職員室に置いてある私のPCを“仮サーバー”とし、班ごとの保存先をネットワーク経由でそこに統一することにしました。
先日,自作してストレージ容量を大きくしてありました。
今ではクラウドとか大容量のSSDなどもあるので、なんとなくイメージは違います。

「環境を整える」という作業は、ただの技術準備ではありません。
子どもたちの試行錯誤を止めないための、いわば“学びを支える地盤づくり”だと、このときあらためて感じました。


次に取りかかったのは、これまでの学習過程を可視化する掲示づくりです。
デジカメで記録してきた写真を印刷し、簡単なコメントを添えながら時系列に並べ、模造紙に貼っていきます。

「島の中を探険して、秘密の場所を見つけた」
「ジョナサン先生に、島のよいところを発表した」
「魚釣りに行った」
「話をして,魚の面白い名前に気付いた」・・・

写真を並べるにつれ、「学習の道のりがまっすぐではなかった」ことが、視覚的に浮かび上がってきました。
「これがあれば、子どもたちは“今どこにいるのか”を確かめられる。」
ようやく1枚目が完成しました。

時計を見ると23時半。疲れはあるものの、なぜか気持ちは前を向いていました。
「今日はここまでにしといてやろう。」
小さくつぶやき、宿舎への道を歩きます。夜の静けさの中、遠くから波の音がかすかに届いていました。


2.1ページが開く視界

公開授業まで、時間は少しずつ迫っていました。
それに伴い、試作ページの位置づけも徐々に明確になってきます。

「図鑑を完成させる前に、1ページを試してみよう。」

ここに、授業全体を見通す重要な意味がありました。
“完成させること”ではなく、“完成に至る道をどう描くか”。
先日から作っていた掲示物によって、子どもたちは「これまでの道のり」を確認できるようになりました。

次に必要なのは「これから進む道の形」を探ることです。そのために「1ページの試作」があるということを、子どもたちが自然に理解し始めていました。

学びの可視化は、子どもたちの意識を「調べたこと」から「どのように伝えるか」にシフトさせるきっかけになっていたのです。


3.問い直しのステージ

公開授業の2日前になりました。
今日の総合の時間は、公開授業前の最終調整です。
デジタルボードを使ったプレゼンのリハーサルも行いました。

3チームのうち、1チームずつ隣の教室に呼び、試作ページをもとにプレゼンを行わせます。
私はその場で指導とチェックを入れました。
その前に、黒板に3つの問いを示してから活動を始めました。

「自分たちは何のためにプレゼンをするのか?」
「プレゼンで伝えたいことは何か?」
「誰に対して発表しようとしているのか?」

最初は「きれいな写真を見てほしい」など表面的な答えが出ていました。
しかし、話し合う中で「この順番にした理由を伝えたい」「島の暮らしとのつながりをわかってもらいたい」など、“伝える根拠”に目が向き始めます。

私は試作ページの一つを使い、お手本として短いプレゼンを行いました。
内容も大事でしたが、「視線をどこに向けるか」の示範が効果的だったようです。
説得力のあるプレゼン、いわゆるアイコンタクトの重要性です。
「紙やデジタルボードに向かって発表していないか?」と何度も問い直しました。
なかなかすぐには無理でしたが、意識付けはできたようです。

デジタルボードのマーカー機能を活用しながら、子どもたちは「どの部分を強調するか」を意識し始めました。


4.ここから“届ける図鑑”が始まる

一連のリハーサルを見届けながら、私は静かに確信しました。
魚の写真を撮ることから始まったこの学びは、今、ようやく「誰かに向かって届ける学び」へとたどり着いたのだと。
次は研究大会当日。
いよいよ、3つの「ひな形」が参観者の前で立ち上がります。


今回の解説編06👇👇👇

▶離島の総合的学習編07へ続く👇

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