画面の向こうより、教室の先生 【島総②#08】/vol3 アワビいっぱい編/離島の総合的な学習②
キーボード検定やBBS交流など、島の教室は少しずつ外の世界とつながり始めていました。
そんな中で続けてきたテレビ会議も3回目を迎えます。
しかし、その画面の前で私はある小さな違和感に気付きました。
前回の話 離島の総合的学習の時間②#07👇
本シリーズについて(初めて読んでいただく方へ)
本シリーズは、県内で唯一の離島にある小学校に赴任して2年目、2003年度(平成15年度)に行った総合的な学習の時間の実践記録です。
交通も通信も限られた島で、子どもたちにどんな力を身に付けさせたいのかを考えながら、地域と関わる学びやICTを活用した取組を進めてきました。
1年目には、島の海の魚介類を調べてまとめた「おさかな天国 海辺のデジタル図鑑」に取り組み、マイタウンマップ・コンクールで農林水産大臣賞をいただきました。
▶ おさかな天国(離島の総合的な学習の時間①)
本シリーズ「アワビいっぱい編」では、年度後半のアワビの中間育成・放流の実践を軸にしながら、そこへ至るまでの前半の学びとして、他地域との交流、ICTスキルの定着、発信に向けた準備段階も含めて、2年目の1年間を通した取組を記録しています。
単元単位ではなく、「学びが形になるまでの時間」そのものを描いています。
※本文中の地名・学校名・人名等は仮名を使用しています。
1 3回目のテレビ会議と小さな違和感
県内西部の小学校とは、月1回のペースでテレビ会議による交流を続けていました。
子どもたちに表現する力を育てたり、新しい人間関係の中でさまざまな考え方に触れさせたりすることをねらいとした取り組みで、この日が今年度3回目の会議でした。
回数を重ねてきたこともあり、そろそろ教師が進行を支える形から一歩進み、本校の子どもたち自身がやり取りを組み立てていく交流にしていきたいと、私は考えていました。
そこで今回は、できるだけ子どもたちに任せながら進めてみようとしていました。
ところが、会議が始まってしばらくすると、教室の様子に少し気になる場面が見えてきました。
本校の子どもたちが、画面に映っている相手校の子どもたちではなく、こちらの教室の前方で様子を見ていた本校の先生たちの方を見ながら話しているのです。
さらに、その先生たちも会話が途切れそうになると、次の話題を促したり、言葉を補ったりしていました。
交流を途切れさせないようにという配慮だったのだと思いますが、その結果として会話は子ども同士というより、教師が間に入った形で進んでいきました。
これは、いわゆる小規模校あるあるかもしれません。
子どもたちに目が行き届くぶん、過保護とも言える干渉が生まれやすいのです。
沈黙が続けば、つい大人が口を出してしまうのも無理はありません。
しかし、その光景を見ながら、私はどこか小さな違和感を覚えていました。

画面の向こうにいる相手ではなく、教室の前にいる大人に向かって話している限り、子どもたち自身が交流をつくる経験にはなりません。
せっかく続けてきたテレビ会議も、このままでは子どもたちの主体性を育てる場にはなりにくいのではないか。
会議の様子を見ながら、交流の進め方そのものをもう一度考える必要があると感じました。
2 電話の向こうで一致した思い
テレビ会議が終わったあと、相手校の先生と電話で簡単な反省会を行いました。
すると、先方の先生もまったく同じことを感じていたようでした。
画面越しに話しているはずなのに、子どもたちの視線は教師の方に向いてしまう。
そして教師も、沈黙が続くとつい助け舟を出してしまう。
「これでは、いつまでも子ども同士の会議になりませんね。」
そんな話になり、次回は思い切って形を変えてみることにしました。
2学期のテレビ会議では、まず子どもたちだけで進める時間をつくり、教師はできるだけ口を出さず見守ってみようということになったのです。
ただし、そのためには相手校だけでなく、本校の先生方にも同じ考えを共有しておく必要があります。
交流を円滑に進めようとしてつい助言を出してしまうのは自然なことですが、子ども同士のやり取りを育てるためには、教師が一歩引いて見守る場面も意識してつくっていかなければなりません。
交流は回数を重ねるだけでは意味がありません。
その中で、子どもたちにどんな力を身につけさせていくのかを意識しながら、少しずつ形を変えていく必要があると改めて感じました。
3 夏休みの教室で始まっていた挑戦
テレビ会議の進め方について考えながら1学期を終え、学校は夏休みに入りました。
静かになった校舎の中で、思いがけない光景を目にすることになります。
2年生と3年生の女の子が2人、毎日のように学校へやってきていたのです。
目的は、教室でのキーボード練習でした。
とくに3年生の子は、1学期から続けてきた練習ソフト「見える指」をすべて終えてしまいました。
そこで次の段階として、ちょうどモニターとして試していた「キーボード島アドベンチャー」に登録してみることにしました。
この検定は一般公開もされているサイトですが、当時はモニターとして先行利用していたものです。
さっそく挑戦してみると、基本練習ができているだけあって順調に進み、あっという間に5級あたりまで進んでいました。

4 意欲が動かす夏休みの教室
島では、家庭にパソコンがある家は全くと言っていいほどありませんでした。
そのため夏休みに入る前、
「学校に来ればパソコンを使って練習してもいいよ」
と声をかけてはいたのですが、ここまで毎日のように通ってくるとは正直思っていませんでした。
2人は教室に置いてあるパソコンの前に座り、黙々とキーボードを打ち続けています。
夏休みで静かな校舎の中、カタカタというキーの音だけが教室に響いていました。
低学年や中学年の段階で、こうして自分からキーボード入力を身につけようとしている姿は、なかなか頼もしいものです。
環境が十分とは言えない離島の学校でも、子どもたちの意欲があれば学びは確実に前へ進んでいくのだと感じました。
その姿を見ながら、この芽生えた意欲をどう育てていくかを、2学期に向けて改めて考えていました。
次回に続く・・・👇
総合実践のvol3、アワビいっぱい編(マガジン離島の総合的な学習の時間②)👇👇
総合実践のvol2、おさかな天国(マガジン離島の総合的な学習の時間①)👇👇👇
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