風のせいにした一打の中に、次のヒントが隠れていた
『言い訳を減らすと成長が早い』
少し耳が痛い言葉かもしれません。
でもこれは、自分を責めるための言葉ではなく、次の一打を少しやさしくするための言葉だと思っています。
強風のコース、言葉が先に出てくる
月曜日の朝のコースは、どこか静かで引き締まっている。
平日の空気の中、旗が強い風にあおられて、ばたばたとはためいている。木々はざわざわと揺れ、芝の上の砂が薄く流れていく。
ティーグラウンドに立つと、頬に当たる風が、いつもより少し鋭く感じる。
「今日は風が強いから、しょうがないな」
打つ前にそんな言葉が頭に浮かんだとき。
それはもう、無意識に「言い訳の準備」が始まっているのかもしれません。
「〇〇のせい」「〇〇だったから」が自然と出てくる
ゴルフをしていると、「環境のせい」にしたくなる瞬間があります。
風が強かった。
ライが悪かった。
グリーンが読めなかった。
一緒に回った人の打音が気になった。
どれも嘘ではありません。
実際に、ゴルフは環境に大きく影響されるスポーツです。風ひとつで球は流れますし、芝の状態ひとつで結果は変わります。
だからこそ、言い訳したくなる気持ちもよく分かります。
「風のせいでOBになった」
そう言えば、その日のミスは少し楽になります。
でも、次に同じ風が吹いたとき、また同じ選択をしてしまうかもしれない。そこに少しだけ、もったいなさがあるんです。
この「言い訳の楽さ」は、初心者の方に限りません。
長くゴルフを続けている人ほど、「それっぽい理由」が増えていくことがあります。
今日はグリーンが速かったから。
今日はドライバーがたまたま悪かったから。
今日は風が読みにくかったから。
もっともらしい言葉で、自分のミスをやんわり包んでしまう。
心当たりのある方、きっと多いのではないでしょうか。
私も、言い訳が上手くなっていました
正直に打ち明けると、私自身、ある時期から言い訳が「上手く」なっていました。
スコアが出なかった日も、ラウンド後にさらっと言えるんです。
「今日はグリーンが速かったですね」
「ドライバーのタイミングが合わなかったですね」
「風が難しかったですね」
もちろん、それも間違いではありません。
でも本当は、自分の中で薄々分かっていました。
あの場面は、少し無理をした。
あの番手選びは、ちょっと欲張った。
あの一打は、打つ前から迷っていた。
あるラウンドの後、一緒に回った先輩に言われたことがあります。
「田中くん、今日何ホールか判断ミスしてたよ」
私は思わず、「え、でも風が……」と言いかけました。
その瞬間、先輩が静かに笑って言ったんです。
「風のせいじゃなくて、風を読んだ自分の判断の話ね」
その一言が、今でも耳に残っています。
責められたわけではありません。
でも、逃げ道をそっと閉じられたような感覚がありました。
同時に、そこを見ればまだ変われるんだと、少し救われた気もしました。
Kさんが「自分の選択を振り返った」日
9ヶ月ほど通ってくださっているKさんのことを思い出します。
その日は、強風の中でのラウンドレッスンでした。
3番ホール。
右から左へ強い風が吹いていて、ティーグラウンドの旗も大きく揺れていました。
Kさんはドライバーを握り、いつも通りに構えました。
打った球は、風に押されるように大きく右へ流れてOB。
Kさんはすぐに言いました。
「風が横から来てたので」
私はそれを否定しませんでした。
確かに風は強かった。
ただ、一つだけ聞いてみました。
「風が横から来ているのは、打つ前から分かっていましたか?」
Kさんは少し黙りました。
「……分かっていました」
「じゃあ、その時に左を向くとか、番手を変えるとか、何か選択肢はありましたか?」
また少し間がありました。
「……ありました」
それだけで十分でした。
大事なのは、ミスを責めることではありません。
自分の中にあった選択肢に気づくことなんです。
次のホールで、Kさんはティーに立つ前に、風向きをじっくり確かめました。
芝の揺れを見て、旗を見て、空を見上げてからアドレスに入りました。
そして、少しだけ左を向いて打った球は、フェアウェイに落ちました。
派手なナイスショットではありません。
でも、Kさんは静かに言いました。
「ちゃんと考えたら変わりましたね」
その言葉が、とても良かったんです。
『言い訳を減らすと成長が早い』
この言葉の意味は、自分を追い込むことではありません。
ミスを「何かのせい」で終わらせずに、
「あの時、自分はどんな選択をしただろう」
と、一度だけ問い直してみることです。
風が強かったのは事実。
ライが悪かったのも事実。
グリーンが難しかったのも事実。
でも、その中でどう構えたのか。
どこを狙ったのか。
どんな気持ちで打ったのか。
そこに少し目を向けるだけで、次の一打へのヒントが見えてきます。
責めなくていい。
落ち込まなくていい。
ただ、少しだけ自分の選択を振り返る。
その習慣が、スコアより先に、ゴルフへの向き合い方を変えてくれる気がします。
今日から一つだけ試してみてください
ラウンドや練習の後に、
「あのミスは何のせいだったか」ではなく、
「あの時、自分はどんな選択をしたか」と振り返ってみる。
それだけで大丈夫です。
「あそこで少し強気すぎたかも」
「あの番手は欲張ったな」
「打つ前から迷っていたな」
そんな一言に気づけたら、それで十分です。
ミスの中に、ちゃんと次のヒントが残っています。
風がやんだ午後の練習場
レッスンが終わり、一人でボールを片づけていると、さっきのラウンドの場面がふと頭に浮かぶことがあります。
「あそこは風のせいじゃなくて、自分の判断だったな」
そんなふうに、ぽつりと思う。
それを誰かに言うわけではありません。
スコアカードに書くわけでもありません。
ただ、自分の中でそっと認める。
その小さな正直さが、また明日の一打に、少しだけ新しい感覚を連れてきてくれる気がします。
クラブをバッグに入れるころには、なんとなく来週のラウンドが楽しみになっている。
ゴルフは難しい。
でも、難しいからこそ、自分の選択に気づけた日は、
少しだけ面白くなるのだと思います。
あなたは最後のラウンドで、「環境のせい」にしたミスの中に、自分の選択が隠れていたことはありましたか?

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