嫌なことが頭から離れない時に──思考のぐるぐるを止める方法
マザー・テレサの深い悩み
「見ようとしても何も見えず、聞こうとしても何も聞こえない。
心の奥底には何もなく、むなしさと闇しか見あたらない」
マザー・テレサが、神父に宛てた手紙に書き残した言葉です。
インドのスラム街で50年間、誰も触れようとしない人に寄り添い続けた聖女が、その50年間ずっと、ひとり闇の中で苦しんでいました。
誰もが、心に悩みを抱えて生きています。
人から強く見られることの多い僕も、同じです。その闇は、いつも大げさな形をしているわけじゃない。多くの場合、ずっと小さな顔をして、何気なくやってきます。
なんだか、やる気がでない朝
例えば、気分が乗らない、憂鬱な朝。
これって小さく見えるけど、本人にとっては、ほんとうにつらいこと。
そんな時、僕は、内なる心と対話してみます。
なんで、こんなにブルーな感じなんだろう。
「ああ、あのことか。それに、あのこともか」と、
無意識の領域を渦巻く、隠れた不満や不安が、顔を出してきます。
起きてから眠るまで、心の中に沈んでいた、嫌なこと。
それがぐるぐるしはじめて、生きるエネルギーが吸い取られていく。
思考が同じ場所を回り続ける理由
でも、この反芻は、意志の問題でも、メンタルが弱いからでもありません。
脳の仕組みに、理由があるのです。
僕たちの脳には、意識が外に向いていないとき、自動的に活性化する回路があります。「デフォルトモードネットワーク(DMN)」と呼ばれる、脳の"待機回路"です。
誰にでも起きる自然な現象ですが、問題は、慢性的なストレスがあるとき。
不安や疲労が積み重なると、さまよい先が「不安」「不足」「比較」「過去の失敗」に偏ってしまうのです。
さらに、やり残したことがあるとき、脳はその未完了状態を「開いたまま」で保持しようとします。気になって、いらいらしてしまう。
心理学者ツァイガルニクが発見したこの現象──ツァイガルニク効果は、脳の反芻作用をさらに強めてしまいます。
思考スイッチ:「ゼロ点リセット」の儀式
思考のぐるぐるを、止める。
それだけじゃなく、やる気も注ぐ。
そのための「ゼロ点リセット」の儀式ご紹介します。
僕が、借金地獄で苦しんでいたころに愛読していた、中村天風氏や土光敏夫氏の教えをもとにしています
ゼロ点リセットは、「夜の儀式」と「朝の儀式」「ぐるぐる時」の3つがセットになります。
① 夜の儀式 「心の消耗を止める」
【記憶の棚卸し】今日の出来事から「小さな、いいこと」を思い浮かべる
【感謝の紐づけ】ひとつひとつに、小さく「ありがとう」と言葉をかける
【完結の宣言】「今日という日は完結した」と宣言して、感謝を胸に眠る
ひとことでいうと。今日の記憶に「感謝」という感情のタグをつけて眠る。そうすると、脳の中の整理がはじまり、感謝の意味づけが深まります。
② 朝の儀式 「心にやる気を注ぐ」
【人生の始まり】目覚めたら「新しい朝が来た。ありがたい」と感謝する
【今日一日だけ】夜寝る時に死ぬ。「今日一日」だけに、心の焦点を絞る
【今日を生きる】する事をひとつ決める。持てるチカラをそこに集中する
今日という一日だけに、意識の焦点を絞る。そうすると、ぐるぐるしていたものが消え去ります。自分の潜在能力を100%発揮できる状態になります。
③ つらい時の儀式 「今に意識を戻す」
【悩みに気づく】頭の中のぐるぐるの元となる「根っこの悩み」に気づく
【ゼロ点に戻る】生まれた時はゼロ、死ぬときもゼロになることに気づく
【執着を手放す】「ないもの」から「あるもの」に意識を移し、感謝する
心のぐるぐるを見つけること。それが「いつまでも続くわけじゃない」ことに気づき、その根っこにある「心の執着を手放す」と落ち着いてきます。
僕の大好きな映画『パーフェクトデイズ』で、役所広司さん演じる平山という男も、きっと心のなかでしていたんじゃないかな。
朝起きて、空を見上げる。かすかな笑顔を浮かべ、今日のトイレ掃除に向かう。木漏れ日から、今この瞬間、自分とつながる光を感じ、生を実感する。
「今を生きる姿」を視覚化した、稀有の名作だと思います。
日に新たに。日々に新たなり。
神は万人に公平に、一日24時間を与え給もうた。
われわれは、明日の時間を今使うことはできないし、昨日の時間を今とりもどすすべもない。ただ今日の時間を有効に使うことができるだけである。毎日の24時間をどう使っていくか。
中国の古典『大学』に記された言葉。
そして、我が尊敬する土光敏夫さんの「座右の銘」です。
「まったくのゼロから始める」という意識を持つことで、
昨日の重さを引きずらずに、今日の一歩を踏み出すことができます。
また、感謝に意識を向けることで、心の向きが「ないもの」から「あるもの」へと転換します。
これは、中村天風氏、土光敏夫氏、ガンジー、それにスティーブ・ジョブズもそう──僕が尊敬する人たちに、共通する考え方、生き方です。
孤独な手紙を書き続けたマザーテレサも、そうでした。
闇の中にいながら、彼女はこの言葉で、自分自身をも励ましていたのです。
「わたしたちにはただ、今日があるのみ。さあ、始めましょう」
このスイッチをマスターすると、何が変わるか。
同じことをぐるぐると考え続ける時間が、劇的に減ります。
足りないものに目がいったり、人とくらべて嫉妬したり、
そんなさまよいに飲み込まれることが、ぐっと減ります。
苦しみは、いつまでもは続かない。
なにせ、今日一日。それだけの命ですから。
頭の中が静かになると、本当に大切なことが、自然と見えてきます。
そうすると、次のスイッチが使える状態になります。
嵐が鎮まり(扁桃体ランディング)、思考が整った(ゼロ点リセット)ところで、最後の「行動を続けるスイッチ」に移りましょう。
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
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斉藤 徹(とんとん)
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