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忘れられない患者さん|「肉のタレ作らなかんから帰る」と言っていた人

※患者さんの名前は仮名です


強面でファンキーなおじいさん


私が2年目の時。
呼吸器病棟で勤務していた頃のお話です。


白木さんは肺がん疑いで検査のため1泊2日の入院をしたあと、
すぐに治療のため再入院になりました。

白髪を肩まで伸ばしていて後ろにひとつ結びにしている
『ファンキーなおじいさん』でした。


見た目が怖かったので最初はなかなかお話しできませんでしたが、
看護師の名前をたくさん覚えて呼んでくれたので
すぐにみんなと仲良くなりました。

近所で焼肉屋さんを営んでいるそうで、
入院中もいつもお店のことを気にしていました。

抗がん剤と放射線で治療を続けながら、
外出しては秘伝のタレを作りにお店に帰っていて
「俺が退院したら食べにこいよ!」といつも言ってくれていました。

白木さんが入院中は一緒にお店をしている息子さんがお店を守ってくれていました。



「肉のタレ作らなかんから帰る!」


入院と退院を何度も繰り返して、数ヶ月が経った頃。
脳への転移が見つかりました。

少しずつ会話が噛み合わなくなってきて、
抗がん剤の影響で長かった白髪も抜けてしまいました。


脳転移の影響かせん妄か分かりませんが、
夜になると毎日着替えて家に帰ろうとしてしまうのでナースステーションでお話しすることが多かったです。


「肉のタレ作らなかんから帰る!」と言って病棟と飛び出そうとするのは、後にも先にも私は白木さんしか知りません。


当時患者さんが最大44人いる急性期の病棟で、
夜勤は看護師3人だったので白木さんとお話しする時間を確保するのはかなり大変でした。


でも、看護師みんな白木さんが大好きだったので頑張りました。

自宅での生活


もう治療しても効果が得られない状態になり、本人とご家族にICがあり、BSCとなりました。もう治療は行いません。ということです。


自宅ではお店をしているので家で看るのは難しく、
ホスピスに入所する話も出ましたが、
本人の強い希望もあり自宅退院となりました。


その頃にはもう自分で歩けなくなってしまっていて、
白木さんは病棟内を車椅子で自走していました。


退院後、数日経ったある日が白木さんの誕生日でした。
私は迷いましたが、病棟の看護師何人かで会いに行きました。


息子さんが私に気付いてくださり、
「おお!よく来てくれたな。親父呼ぶわ」と呼んでくれました。

数日ぶりに見た白木さんは食事がとれず、
少しやせていたがにこやかに私たちを出迎えてくれて、
色々お話ししてくれました。


毎日車椅子で行きつけの喫茶店に行き、
帰りは車椅子を押して送ってもらっていること、
息子さんが作ったごはんがマズくてまだまだだなということ、
久しぶりに会ったお孫さんが可愛いこと、
今度もう1人お孫さんが生まれることなど。


たくさんお話ししながら、
私ははじめて白木さんの自慢のタレを食べました。
「おいしい」というと「当たり前だ」と返されました。

長年作ってきたからこそいえるセリフがかっこよかったです。
12月の頭のことでした。一緒に来たスタッフと白木さんと写真を撮りました。


入院も悪くない


そのまま白木さんはご自宅で年越しをして、年始に再入院となりました。
入院してきた白木さんはもう動けなくなっていて、
お話しするのもやっとなのに私たち看護師をみて手を振ってくれました。


数日後、白木さんは病棟で亡くなりました。
夜、両手を頭の上に組みながら眠ったままだったそうです。

見つけたスタッフは「本当に寝てるのかと思った。近づいても、触るまでわからなかった」と言っていました。


患者さんが亡くなるのはもちろん辛いし悲しいですが、
最後まで一緒にいてくれてありがとう。と思います。
もう苦しくないね、よかったね、と。


白木さんを迎えに来た息子さんは笑顔で
「先生も看護師さんたちも本当にありがとう。親父、病棟が好きだったみたいで入院も悪くないって言ってたわ。よくしてくれて本当にありがとう。ここで死ねてよかった」

と言ってくださいました。


何年経っても忘れられない大切な患者さんの一人です。
白木さんのお店は、今でも私の行きつけで
スタッフたちと仕事後によく行きます。
病棟では写真が撮れないので他の患者さんの写真はありませんが、
白木さんの写真だけは今も私のスマホの中に残っています。


改めましてこんにちは、ナツです。
このnoteを見つけてくださってありがとうございます。

私は12年目の看護師です。
呼吸器内科・呼吸器外科・コロナ病棟・外来などを経験して、
今は育休中に、看護師向けのGPTを作っています。
▼自己紹介として、簡単にこれまでの経歴をまとめました

▼このnoteの案内図はこちらにまとめています

他にも忘れられない患者さんのお話、書いています。

▼目が見えない人のお話

他にも色々な方の看護のお話を集めたマガジンです。


最後まで読んでくださりありがとうございます。
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