見出し画像

歩行を見て「ふらつきあり」で止まっていないか

患者さんが歩く。
歩行を観察する。

なんとなく、危なっかしい。

そう、ふらついている。

レポートに「歩行時ふらつきあり、見守りレベル」と書く。

けれど、それはたぶん何も見ていない。

「ふらつき」は、歩行版の「バランス低下」。
歩いている人が安定して見えないとき、
その全部を一語で回収してしまう。
(下記の記事ものぞいてみてください)

前のめりに突っ込んでいくのも、
横にぶれるのも、
足が出なくて止まるのも、
まとめて「ふらつき」と表現している。
便利で、それゆえに何も特定していない。

ここで多くの人は、
歩行を「上手いか・下手か」
「安定か・不安定か」という、
一本の物差しで見ている。

だから「ふらついている」までは言えても、
その先が出てこない。

物差しが粗いと、見えるものも粗くなる。

歩行は、止まって見える写真ではなく、
繰り返される流れだ。
流れには区切りがある。

足が地面についている時間と、
足が宙に浮いて前に運ばれる時間。

この二つは、まったく別の仕事をしている。

そう思って、もう一度、その「ふらつき」を見る。

崩れているのは、体重が乗っている足のほうか。
それとも、前に振り出そうとしている足のほうか。

片方の足に乗った瞬間に膝や体幹がぐらつくのと、
足を前に出すときに引っかかって流れが乱れるのとでは、
起きている問題がまるで違う。

前者は「支える」局面の話で、
後者は「運ぶ」局面の話だ。

同じ「ふらつき」でも、見るべきところが変わる。

私が学生に「どこでふらついてた?」と聞くと、
「全体的に……」という答えが返ってくることが多い。

これは見ていないのではなく、
流れを区切らずに、ひとかたまりで見ているからだ。

区切りがないと、どこと言われても困る。

歩行を「ひとつの塊」から
「いくつかの局面」に分けて見られるかどうか。

そこが、観察できる人とできない人の最初の差になる。

今日の「問い」。
あなたの患者さんが歩く姿を、
一歩だけ、スローにして思い出してみてほしい。
崩れたのは、片方の足にしっかり乗っている瞬間か、
足を前に運んでいる瞬間か。
左右どちらの足のときに、それは起きるのか。

「ふらつきあり」を
「左足に乗った瞬間に、外側へぐらつく」くらいまで
言葉にできたら、それはもう立派な動作観察。

そしてそこまで言えたなら、
次に何を確かめたいかは、あなた自身がもう感じているはず。


この記事は、現場で使ってしまう
「便利だけど、何も言っていない言葉」を、
1つずつほどいていくシリーズの1本です。

「筋力低下」「バランス低下」「ふらつき」
——同じように、評価で止まりやすい言葉をほどいて、
評価から介入までを1本の手順にしたのが、
前のシリーズ「評価はできる。でも治療に迷う。」です。
最後は、どんな患者さんにも当てられる
思考テンプレート(書き込みワークシート付き)に
まとめています。
📚マガジン「評価はできる。でも治療に迷う。」

そして、もしあなたが「教える側」に立つことがあるなら
——学生が黙り込んだとき、どう問いかけるか。
実際のセリフを5場面ぶんまとめた記事もあります。
🗣「完璧な先生をやめると学生は話し始める」
(問いかけスクリプト集つき)

いいなと思ったら応援しよう!

トト|理学療法士 × 教員 今後の執筆活動に役立てたいと思います。