見出し画像

「持久性低下」は何が続かないのか

「持久性低下」

カルテでよく見る。
よく見るわりに、書いたあと、
何をどうするかは、あいまいなままのことが多い。

「持久性の向上を図る」と目標に書いて、
でも具体的に何をするかは、ふわっとしている。

これも、抽象度の高い言葉だ。
「持久性低下=続かない」という現象を、
ぜんぶ1つにまとめている。
でも、何が続かないのかは、人によってまるでちがう。

1人、思い浮かべてみる。

リハビリ室では、平行棒を
5往復くらい(20メートル)しっかり歩ける。
見ている分には、問題なさそうに見える。
ところが、病棟でトイレまで杖で歩こうとすると、
途中で「もう座りたい」と止まってしまう。

この人の「持久性低下」は、何だろう。

歩く力がないわけではない。
では、何が続かないのか。
よく見ると、いくつも候補がある。

心臓や肺が、長く動き続けるのが
つらいのかもしれない。
少し歩くと、息が上がって、動悸がする。
これは、全身が続かないタイプだ。

あるいは、下肢の特定の筋肉が、
繰り返しの動きで先に疲れてしまうのかもしれない。
これは、局所が続かないタイプ。

または、体はまだ動けるのに、
集中が続かなくて、
気持ちが先に切れてしまうこともある。

さらに、リハビリ室では
手すりがあって安心だけれど、
病棟では支えがなくて、緊張で余計に消耗している
ということもある。

同じ「持久性低下」でも、
全身が続かないのか、
局所の筋力が続かないのか、
気持ちが続かないのか、
安心が続かないのか。

それぞれ、やることはまったくちがう。
全身なら、負荷を調整しながら
少しずつ動く量を増やす。
局所なら、その筋肉の使い方や休ませ方を考える。
気持ちや安心の問題なら、
環境や声かけのほうに手をつける。

「持久性低下」と一語で書くと、
この分かれ道が、全部つぶれてしまう。
だから「持久性の向上を図る」が、ふわっとする。
何を向上させるのかが、決まっていないからだ。

そして、持久性には、
もう一つ見落としやすい点がある。

それは「いつ」続かなくなるかだ。

歩きはじめから、もうつらいのか。
それとも、最初は大丈夫で、
しばらくすると崩れてくるのか。

後半でフォームが乱れてくるなら、
それは「疲れてくると、支え方が変わる」
ということで、疲労と動作の質がつながっている。
どのタイミングで何が起きるかを見ると、
「続かない」が、具体的な場面に変わる。

だから、「持久性低下」と書いたら、
「何が」「いつ」続かないのかを見る。

今日の「問い」。
あなたの患者さんの「持久性低下」を、
こう問い直してみてほしい。
続かないのは、息や動悸か(全身)、
特定の筋肉の疲れか(局所)、
集中や気持ちか、
それとも安心できない環境のせいか。
そして、それは歩きはじめからか、途中からか。
途中からなら、何分くらいで、まず何が崩れるか。

「持久性低下」を、
「病棟だと、30メートルあたりで息が上がって、
 支えがない不安も重なって止まる」まで
言葉にできたら、向上させる相手が、はっきりする。
ふわっとした目標が、手のつく目標に変わる。


この記事は、現場で使ってしまう
「便利だけど、何も言っていない言葉」を、
一つずつほどいていくシリーズ
「曖昧なことばのほどき方」の一本です。

このシリーズでやってきた"ほどき方"を、
どんな言葉にも使える
「四つの問い」の型に一枚化しました。
忙しい現場で、カルテの手が止まった
数十秒のためのテンプレートです(書き込みワークシート付き)。

👉 「どんな曖昧な言葉も観察に変える練習帳」

📚 マガジン「曖昧なことばのほどき方」

そして、もしあなたが「教える側」に立つことがあるなら
——学生が黙り込んだとき、どう問いかけるか。
実際のセリフを5場面ぶんまとめた記事もあります。
🗣「完璧な先生をやめると学生は話し始める」
(問いかけスクリプト集つき)

いいなと思ったら応援しよう!

トト|理学療法士 × 教員 今後の執筆活動に役立てたいと思います。