「〜が低下しているため」だけでは考察にならない
前回の続きのような話になる。
(記事はこちらから↓)
所見と所見を「だから」でつなぐ。
それができるようになると、考察は書けるようになる。
「下肢筋力が低下しているため、
立ち上がりに介助を要すると考える」
Aがあって、だからBが起きている。
文の形として、これは羅列ではない。
指導者も、これなら大きくは赤を入れないかもしれない。
でも、なんとなく、薄い印象を与えてします。
書いている本人もうすうす感じている。
これで考察と言っていいのか、という引っかかり。
その引っかかりは正しい。
では、なぜ薄いのか。
この一文は、AとBをつないではいるけれど、
「言い換えただけ」に近い。
「筋力が低下しているため立ち上がれない」
これは、よく見ると
「立ち上がれないのは、
立ち上がる力が足りないから」と言っているのと
ほとんど同じ。
困っている事実を専門用語で一回りさせて、
元の場所に戻ってきている。
新しいことは、何も足されていない。
だから、つながっているのに進んでいない感じがする。
私はこれを『「ため」で止まる考察』と呼んでいる。
「〜のため」と書いた瞬間に、説明できた気になり、
思考が満足している。
では、薄い考察と、深い考察は、どこで分かれるのか。
分かれ目は、「なぜ?」をもう一回かけられるかどうか。
「筋力が低下しているため、立ち上がれない」
ここで止まらずに、もう一段問う。
なぜ、その筋力は低下したのか。
使わなかったからか、
痛みでかばっていたからか、
もともとの活動量が落ちていたからか。
あるいは――本当に足りないのは筋力なのか。
力はあるのに、
前かがみになる重心移動のタイミングがずれているだけ、
ということはないか。
「ため」で止まる考察は、
原因を一つ指さして終わる。
深い考察は、指さした原因を、もう一回疑う。
「本当にそれか?」
「他にないか?」
「なぜそうなったか?」
この問い直しが一回入るだけで、
考察はぐっと臨床的になる。
ここで大事なのは、
正しい答えにたどり着くことではない。
問い直したという、その過程が考察である。
所見をつなぐのが前回の話。
つないだものを、もう一度疑うのが、今回の話。
今日の「問い」。
あなたが最近書いた「〜のため」を、
一つ思い出してほしい。
その「ため」に、もう一回だけ「なぜ?」をかけてみる。
「筋力が低下しているため」
――では、なぜ低下したのか。
そして、それは本当に、いちばんの原因なのか。
一回多く問えるかどうか。考察の深さは、たいていそこで決まる。
この記事は、現場で使ってしまう
「便利だけど、何も言っていない言葉」を、
1つずつほどいていくシリーズの1本です。
「筋力低下」「バランス低下」「ふらつき」
——同じように、評価で止まりやすい言葉をほどいて、
評価から介入までを1本の手順にしたのが、
前のシリーズ「評価はできる。でも治療に迷う。」です。
最後は、どんな患者さんにも当てられる
思考テンプレート(書き込みワークシート付き)に
まとめています。
📚マガジン「評価はできる。でも治療に迷う。」
そして、もしあなたが「教える側」に立つことがあるなら
——学生が黙り込んだとき、どう問いかけるか。
実際のセリフを5場面ぶんまとめた記事もあります。
🗣「完璧な先生をやめると学生は話し始める」
(問いかけスクリプト集つき)
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