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【愛してるって、言わせてみせる】第2章 「話しかけるなって書かれてると話したくなる奴」

第2章テーマは、カリギュラ効果 × 心理的リアクタンス
カリギュラ効果は【禁止されると、かえって気になってしまう心理現象】というものです
心理的リアクタンスは【禁止されると余計にやりたくなる心理】というものです

しかし、心理学に沿いながらも「冷静に考えるとおかしい行動」になる場合もあります

それでは、第2章 「話しかけるなって書かれてると話したくなる奴」をお楽しみ下さい

前回のあらすじ

翌週の月曜日
朝倉理人は、なぜか目立たない掲示板の前で腕を組んでいた

「……よし、これで完璧」

彼が貼り出したのは、一枚の紙
そこには大きく、そして妙に整った字でこう書かれていた

『※この人物には話しかけないでください。関わると面倒です』

掲示板の横には、彼の顔写真――ではなく、彼自身が描いた自画像が貼られていた
特徴:色黒、無表情、空気の読めない雰囲気全開

そう、それは自作の**“注意喚起ポスター”**だった

目的は一つ
カリギュラ効果と心理的リアクタンスを同時に発動させること

「禁止されると、むしろ気になる」
「関わるな」と言われると、なぜか関わりたくなる
それが人間の性(さが)だと、理人は知っていた

案の定、昼休み前には教室内がザワついていた

「なにあれ、怖くない?」
「理人って、ああいうタイプだったっけ?」
「え、自己申告なの? 逆に気になる……」

そしてついに、彼女が動いた

「……なにあれ」

桐生美琴
理人の目標であり、計画の“観察対象”
彼女はポスターをしばらく無言で眺めたあと、本人の元へと向かってきた

「おい、朝倉。あれ、なんなの?」

「注意喚起だよ。俺って面倒なやつだから、関わると損すると思って」

「は? なんで自分からそんなこと言うのよ」

「自覚って大事かなって。あと、そう書いておくと……なぜか人って話しかけたくなるらしいよ?」

「……心理学か」

図星だったようで、彼女はジト目を向ける

「人間ってさ、自由を制限されると逆に反発したくなるんだって
だから“話しかけるな”って書いておけば、興味持たれるかもって」

「いや、普通は避けられるから。怖がられるから」

「でも、君は話しかけに来た」

「それは……教室の品位のためにツッコみに来ただけ」

「でも、事実として“話しかけた”」

理人はニヤリと笑う
まるで計算通りだったと言わんばかりに

「……アンタ、ほんとに変人ね」

「じゃあ、もう話しかけないでくれる?」

「は?」

「“話しかけちゃダメ”って、今度は俺が直接言っておくから」

「なにそれ、挑発?」

「違うよ。ただの実験。君が“制限されると逆に反応するタイプか”を見てみたくて」

「……マジで実験してるなら、私は“結果を歪めるタイプ”だからね?」

そう言い捨てて、彼女はくるりと背を向けた

だがその耳の先が、ほんのわずかに赤く染まっていたことを
理人は見逃さなかった

翌日
理人はあえて、桐生美琴を避けて過ごした

朝の教室では挨拶せず、昼も違う場所で食べ、帰りもすぐに姿を消す
まるで「本当に話しかけてくれるな」と全身で主張するように

そして三日目。彼女の方から――動いた

「……あんたさ」

教室の端、席を立とうとする理人の前に、美琴が立ちはだかる
手には例の“注意喚起ポスター”

「これ、外しといた。もういいでしょ?」

「え、ダメだよ。あれ、効果出てる途中なのに」

「……効果って何?」

「君が毎日話しかけに来てる」

「ちがう。今日は“貼り紙の撤去”で来ただけ」

「でも話してる。内容はどうあれ、接触は成立してる」

「……うっざ」

その言葉とは裏腹に、美琴の顔はどこかむきになっていた
“反応してはいけない”と思えば思うほど、気にしてしまう

心理的リアクタンス
「やるな」と言われると「やりたい」と思ってしまう
まさに、今の彼女がそれだった

理人は静かに畳みかける

「じゃあ、お願いがある。できるだけでいいから、俺に話しかけないで」

「……またそれ?」

「うん。“話しかけちゃダメ”って言われると、人間どうなるか知りたくてさ」

「知りたきゃ、鏡見なよ。逆に面白がって近づいてきたの、あんたでしょ?」

「俺は研究者だから。客観視できてる」

「客観視してるやつが、カフェオレの好みまで把握しないでしょ」

美琴はわかりやすく苛立っていた
でも、その“苛立ち”も彼女の中で「関心」に変わってきていることに、本人は気づいていない

「じゃあ、こうしよう」

「なに?」

「俺が“君に話しかけたくてたまらないけど、我慢してる”ように見えたら、そのときだけ話しかけて」

「……条件、面倒すぎる」

「でも、気になるでしょ?」

「別に」

そう言いながら、彼女は翌日から妙にこっちを見るようになった
すれ違うたびに、ちらっと視線が合う

禁止すればするほど、存在が気になってくる
話さないでと言われれば言われるほど、話したくなる

カリギュラ効果とリアクタンスは、確かに働いていた

――そして金曜の放課後

「ちょっと」

彼女がついに、歩み寄ってきた

「なに?」

「話しかけないようにしてたら、逆にイライラするんだけど。責任取って」

「責任って?」

「だから……今度、昼一緒に食べなさいよ。別に、興味があるとかじゃなくて……観察対象として」

それは、彼女なりの“譲歩”だった

理人は、すっと笑った

「了解。観察、大歓迎」

彼女が赤くなった耳を隠すように背を向けたのを
今日も――理人は見逃さなかった

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