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【愛してるって、言わせてみせる】第3章 「“天才ツンデレ理系女王”って呼ぶ奴」

第3章テーマは、自己重要感の承認 ×ラベリング効果
自己重要感の承認は【「あなたは特別」という扱いをすると相手は嬉しくなる】というものです
ラベリング効果は【「あなたは〇〇な人」と言われると、そのように振る舞うようになる】というものです
しかし、心理学に沿いながらも「冷静に考えるとおかしい行動」になる場合もあります

それでは、第3章 「“天才ツンデレ理系女王”って呼ぶ奴」をお楽しみ下さい

前回のあらすじ

「天才ってさ、孤独だよね」

授業終わり、教室の隅
朝倉理人のそんな独り言に、桐生美琴がぴくりと反応した

「……は? 誰が天才よ」

「桐生さんだよ。他にいないじゃん
クラスで唯一、微積の問題集を“趣味”で解くような人」

「……別に、好きでやってるわけじゃ」

「いや、それは才能だよ。“数学の妖精”って呼んでもいい?」

「絶対やめろ。二度と口にするな」

理人は“してやったり”と笑う
反応してくれる時点で、彼女の中に自分の言葉が届いている証拠だ

彼が今、意識して使っているのは
ラベリング効果と自己重要感の承認

「人は、与えられた役割や評価に沿った行動を取りやすくなる」
「“あなたは特別だ”と言われると、無意識にその期待に応えたくなる」

それが、今回の作戦の柱だった

「ねぇ桐生さん。君って“毒舌界のニュートン”って感じしない?」

「しない。しないし、ニュートンに謝れ」

「じゃあ、“理系女子界のラスボス”とか?」

「その称号、誰も喜ばないから。なに? 今回は何の遊びなの?」

「ちがうよ。観察と分析の結果をまとめてるだけ」

「どの口が言ってんのよ」

そう言いながらも、美琴はノートを閉じて立ち上がる
理人が追いかけるように廊下に出ると、彼女は少しだけ足を緩めた

「……で、何が目的?」

「ラベルは、君の“属性”を明確にするための布石」

「は?」

「“理系ツンデレ界の頂点”ってレッテルを貼っておくとね、君の存在が他と区別されて
俺の中でも――いや、世の中でも――“特別な存在”になる」

「そんなもの、勝手に決めないでよ」

「でも、ラベルがあるからこそ、人は記憶するんだ
“あの人、なんかすごかったな”って思わせるには、“枠”が必要なんだよ」

「……それ、心理学の話?」

「そう。“自己重要感の承認”と“ラベリング効果”
要は、“あなたは唯一無二の存在ですよ”って伝えるのが、今回のテーマ」

「テーマって……やっぱり、また実験なの?」

「うん」

彼女は、呆れ顔を浮かべながらも、理人の目を真正面から見た

「……あんた、面倒な男ね」

「光栄だよ。“面倒なラブコメ男子”ってラベル、貼ってくれていいから」

「それ、外すとき大変そう」

ふっと、彼女の表情が緩む
その瞬間を、理人は見逃さない

心の壁は、目に見えない。でも確実に、少しずつ崩れている

金曜日の放課後
校舎裏のベンチで、理人はノートを広げていた
隣には、美琴。珍しく、彼の隣に“自分から”座っている

「……で、なによ。“理系女子界のラスボス”ってのは結局褒めてるの?」

「もちろん。誰にも真似できないって意味でね。尊敬してるよ、ほんとに」

「ふうん……まぁ、そういうことにしといてあげる」

否定はされなかった
それだけで、今日は収穫だった

理人は少し距離を詰め、ノートのページをめくる

「ここ、どうしても分からなくて。美琴さんの解説、聞きたいな」

「“さん”付け?」

「特別な人には、特別な敬称を
理系の頂点、“桐生美琴博士”でもいいけど?」

「もう、それはギャグの領域」

苦笑しながらも、美琴はノートを覗き込む
彼女が説明を始めると、理人は一言も口を挟まず、真剣に聞いた
その集中力が、意外だったのかもしれない

「……あんた、意外とちゃんと聞くんだね」

「そりゃあ、“俺専属の理系女王様”の授業だからね」

「その呼び方、毎回変えてるでしょ」

「試行錯誤だよ。“しっくりくる称号”って、繰り返すうちに定着するものだから」

「称号じゃなくて、あんたの趣味でしょ、それ」

「違うよ。“君を特別扱いする理由”を、言語化してるだけ
君は特別だって、毎日ちゃんと伝えたいだけなんだ」

美琴は少し口を開けかけて、黙った
ほんの一瞬、目をそらしたその表情が――なんだか、照れているようにも見えた

「……まぁ、普通に“ありがとう”って言っとく」

「やった。今日は“YES”をもらえた気がする」

「YESじゃない。“別に、否定しない”ってだけ」

「それでも、十分に進歩
特別扱いされるの、案外悪くないでしょ?」

「……慣れてないだけ」

その言葉は、自分に言い聞かせているようにも聞こえた

特別扱いされることに、最初は戸惑い、苛立ち、突っぱねていた彼女が
いま、自分の隣で肩を並べている

それはたぶん、称号でも心理効果でもない
ほんの少しの心の変化

理人は、ふと呟いた

「“天才ツンデレ理系女王”、とかも試そうと思ってたんだけどな」

「……それ採用したら、カフェオレ差し入れ禁止にする」

「すみません、却下します」

「よろしい」

二人の笑い声が、夕暮れの中に小さく響いた

彼女の中に生まれた“自分は特別だ”という意識は
確かに今、ゆっくりと“恋”に名前を変えつつある

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