【LINE3秒以内返信しないと不安になる病】第1章 「愛してるって、何回言えば足りるの?」
第1章テーマは、好意の返報性
好意の返報性は【「好意を示されると、こちらも好意を返したくなる」心理】というものです
しかし、心理学に沿いながらも「冷静に考えるとおかしい行動」になる場合もあります
それでは、第1章 「愛してるって、何回言えば足りるの?」をお楽しみ下さい
序章
朝の教室。まだ始業前なのに、机の上にちょこんと置かれたピンク色の手紙が目立っていた。僕の名前が、ほんのり丸文字で書かれている
ああ、またか
「陽向くん、昨日のお返事ありがとう。すっごく嬉しかった♡ 今日も大好き! …えへへ、昨日よりもっと!」
読み終わる前に、背後から声がした
「……ねえ、今日も来てるよ? 私の“気持ち”」
振り向くと、そこには朝比奈しずく。笑っているのに、目の奥だけが本気だ
「……毎日、律儀にありがとうな」
「うんっ。ね、昨日は29通しか送れなかったから、今日はちゃんと30通送ったよ? LINEも手紙もあわせて!」
スマホを開くと、そこには『好き』『だいすき』『ほんとにすき』とだけ書かれたメッセージがズラリ。もはや詩か暗号だ
「…いや、詩集かよ。あとさ、カレンダーに何書いてんの?」
僕が指差したのは、彼女の机の上に貼られた小さな卓上カレンダー。よく見ると、日付の下に全部『♥達成♥』って手書きでスタンプみたいに書いてある
「“陽向くんに愛を伝えた日数”だよ? 今日で…ほら、38日目っ!」
「継続記録!?ていうか、それ更新するたびに俺のこと好きになってる感あるのおかしいから!」
僕のツッコミにも構わず、彼女は嬉しそうににこにこしている
「ねえ…陽向くんはさ、私のこと、どう思ってる?」
急に真顔で聞かれて、ちょっとだけ言葉に詰まる。そりゃあ…嫌いじゃない。むしろ、どこか放っておけない
でも、なんというか…この“重さ”を受け止めてしまっていいのか、自信がない
「……とりあえず、昼休みにメッセージ整理するな。未読多すぎて通知バグった」
「ふふっ、それって…返事、してくれるってこと?」
しずくの目が、またきらりと光る
“返してくれるよね?”って圧に、なぜか逆らえない気がした
昼休み
僕のスマホは、通知の嵐に溺れていた
「好き、好き、好き、好き、……あ、たまに“だーいすき”。バリエーションあるな」
画面をスライドしてもスライドしても、“しずく”の名前が並ぶ
「陽向くんの通知欄、私で埋め尽くされてるんだ…なんか、嬉しいなぁ」
しずくが僕の隣でお弁当を広げながら、恍惚とした表情を浮かべた
「重たいって言われたことないのか?」
「あるよ?」
即答
「でもね、陽向くんには効いてるって思ってるの。ほら、こうやって返事くれるし、今日も隣にいるし…」
…そういうとこだよ
勝手に“効果あり”って判断して、自信満々になるとこ。しかも、間違ってはいないのが厄介なんだよな
「ていうか、お前のLINEって、どういうタイミングで送ってんの?」
「えっとね、1時間に3通。朝と夜は集中して…あと、寝る前に“おやすみ”連打もするでしょ?」
「“連打”って言ったぞ今…」
箸を持つ手が止まる
僕が言葉を失っていると、しずくがカバンからもう一冊のノートを取り出した
「見せてあげよっか? “好きメモ帳”。今まで伝えた“好き”の記録つけてるの」
表紙に手書きで《陽向くん専用♡》って書いてあった
表紙の端には付箋。「お気に入りの“好き” 20選」「失敗だった“好き”一覧」ってなんだよそれ
「ほら、4月12日の“あなたの瞳に溺れたい”はスルーされたから、△マークつけてるの。参考にして次に繋げるの」
「分析すな!!」
僕が思わず声を上げると、彼女はくすっと笑った
「だって…陽向くんのこと、本当に知りたいんだもん。どうしたら、ちゃんと届くかなって、ずっと考えてる」
一瞬、その言葉に何かが刺さった
バカみたいに“好き”ばっかり言ってくるくせに、その裏で僕の反応をひとつひとつ見てたのか
「あのさ」
気づけば、僕の声が少しだけ静かになってた
「一日30通じゃなくても、お前の気持ちは…たぶん、伝わってる」
しずくの表情が、ぴたっと止まった
そして、数秒後
「……うそっ」
と、小さな声で笑って、目にうっすら涙を浮かべた
「じゃあ…じゃあさ、明日は20通にしてもいい?」
「……減らすのそこかよ」
僕は、ため息混じりに笑った
なんかもう、勝てる気がしない
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