【惚れさせて、振ってやる!】第2章 「驚きと特別視」
第2章テーマは、ブルックス干渉効果(Brooks interference effect))
ブルックス干渉効果は【**頭の中の処理の様式(言語/視空間)と応答方法(口頭/指差し等)**が“同じ様式”だと互いに干渉し、パフォーマンスが落ちる現象】というものです
しかし、心理学に沿いながらも「冷静に考えるとおかしい行動」になる場合もあります
それでは、第2章 「驚きと特別視」をお楽しみ下さい
前回のあらすじ
私は決めていた。次の一手は「情報」だ
ただ可愛い顔を見せても、この男には何の効果もない。ならば、彼が唯一心から価値を置くもの――推しグッズの情報で攻めるしかない
そして、そのチャンスは思いのほか早く訪れた。ネットを巡回していたら、来月発売予定の限定フィギュアの予約ページが偶然フライング公開されていたのだ。まだ公式にも載っていない情報
「これだ……!」
私は心臓が跳ねるのを感じた。彼に教えて驚かせてやる。そして「玲奈=使える仲間」と認識させるのだ
翌日、私は当然のように隆司を部屋に呼び出した
「デュフフww またフィギュア談義かお? 俺みたいな社会不適合者w 需要あるのか疑問なのだ」
「あるに決まってるじゃない。今日は特別なんだから」
私はにやりと笑い、ノートPCを彼の前に置いた
「な、なんだこれ……!? 限定フィギュアの予約画面……!? まだ公式にも載ってない情報なのだ!」
隆司の目が見開かれる。驚きと興奮で、さっきまでの無気力そうな顔が一変した
「お前、なんでこんなこと知ってるんだ……?」
――その瞬間、私は内心ガッツポーズを決めた。よし、やっとこっちをまともに見たな
「とにかく、今すぐ予約しないと埋まるよ!」
私は隆司の後ろに回り込み、彼のマウスをがしっと握った
「ちょ、ちょおおお!? なに背後から腕絡めてるんだお!? ハァハァww」
「細かいことはいいから! 今、ここで! クリックして!」
冷静に考えれば、どう見てもおかしな行動だ。完璧美少女が、汗だくオタクの背中にぴったり張り付いて、マウス操作を強制するなんて
でも私は真剣そのものだった
「ぐふっ……! や、やめろお……俺の聖域、マウス操作権を奪うなぁ……!」
「隆司君、今ここを逃したらもう手に入らないんだよ!? 尊いチャンスを潰すつもり!?」
「尊い……! 脳が震える……! デュフフww」
彼の動悸が伝わってくる。私も必死に背中から押し込みながら、予約ボタンをクリックさせた
画面には「予約完了」の文字
「やった……間に合ったね!」
私の声は高揚していた。まるで一緒に戦場を駆け抜けた戦友を労うようなテンションだ
「お、お前……意外とやるやつなのだ……。ただの三次元女子かと思ってたが……。情報提供ガチ勢……尊い……」
隆司がぼそりと呟いた
――ついに来た。彼の中で「ただの女」から「オタク仲間」へ格上げされた瞬間
私は笑顔で頷きながら、背後で握っていた拳に力を込めた
「次は……もっと深く食い込んでやる」

その日を境に、私は隆司に「情報源」としての存在感を刻み込むことにした
彼にとって価値があるのは、最新情報、限定品、推し関連の裏話。だから私は必死で調べ、誰よりも早く、隆司の耳に届ける
「フヒヒww まさか玲奈から新作グッズのリークを聞く日が来るとは……俺の脳が震えるお」
「でしょ? 私、こう見えて調べるの得意なんだ」
私は胸を張って言ったが、その姿は冷静に見れば奇妙だ。完璧美少女が、得意げにオタクニュースを報告する――世間が見たら笑うに違いない
さらに私は、隆司のリアクションを引き出すために、時にはわざと「見せつける」演出も加えた
「これ見て! 次回の特典付きBOX、すでに抽選始まってるんだよ!」
そう叫びながら、彼の肩越しにスマホを突き出し、画面を無理やり目の前にかざす
「ちょww 近いおww 俺のパーソナルスペース、完全にオワタww」
「今はスペースとかどうでもいいでしょ! ほら! ここ! 申し込み!」
私は真剣だ。だが外から見れば、必死で推しグッズの予約を強要する美少女と、それに振り回されるデブオタ――シュールな光景以外の何物でもない
ある日のこと。私は彼の机の前に座り込み、ノートPCを広げた
「隆司、今日も一緒にやろう。最新情報を集めてきたから」
「デュフフww 俺より情報が早いとか、尊すぎるお」
隆司の口元に浮かんだ笑みは、前よりも自然で柔らかいものになっていた
私は内心ガッツポーズを決めながら、さらに畳みかけた
「ねえ隆司君。私と一緒なら、もう予約に遅れることなんてないよ」
そう言って、彼の手首を掴み、マウスに重ねる。二人で同じ画面を見ながら予約ボタンを押す――それはまるで、共同作業という名の奇妙な儀式だった
「……ふひひww 俺の推しをここまで真剣に扱う三次元、初めて見たかも」
その言葉に、私は胸が熱くなった。やっとだ。やっと彼の心の一部に食い込んだ気がする
だけど同時に、自分でもおかしさを感じる。どうして私は、ここまで真剣に汗だくオタクと予約戦争を繰り広げているのか
普通なら、誰も想像しない構図だろう
けれど――その「行動」こそが私の戦いなのだ
「次も、もっと面白い情報を探してくるから」
「お、お前……マジで頼れる仲間だお……。ただのクラス女子だと思ってたけど、推しを共有できる同士なのだ……!」
その瞬間、隆司の目がほんの少しだけ柔らかくなった
私はその視線を受け止めながら、心の中で呟いた
――やっと、ただの「女」から「仲間」になれた
窓の外は夕暮れ色に染まり、部屋には静かな熱気が漂っていた
私は笑みを浮かべ、次の一手を思い描いた
次章へ
↓最後に、第2章のイメージ楽曲をお楽しみ下さい↓
