【LINE3秒以内返信しないと不安になる病】第4章 「傷ついた私、癒すのは君しかいない」
第4章テーマは、感情転移
感情転移は【他の感情(怒り・悲しみなど)が恋愛感情にすり替わる場合がある】というものです
しかし、心理学に沿いながらも「冷静に考えるとおかしい行動」になる場合もあります
それでは、第4章 「傷ついた私、癒すのは君しかいない」をお楽しみ下さい
前回のあらすじ
昼休みの教室
僕がパンをかじっていると、しずくが勢いよくガラッとドアを開けた
……いや、勢い強すぎて、ドアがちょっと跳ね返ってたぞ今
「陽向くんっ……!」
駆け寄ってくるなり、涙でぐしゃぐしゃの顔で、僕の胸に飛び込んできた
「うわ、ど、どした!? 泣いてんじゃん!」
「……先生に……授業中に……小テスト、白紙で出しちゃって……」
「あー、それは……怒られるやつだな」
「“やる気がないなら出てけ”って言われて……うぅ……」
「いや、出さなかったらそう言われるだろ、そりゃ」
とりあえず、周囲の視線がすごいことになってるので、僕はしずくをそっと引き離そうとしたが、全力でしがみついてきた
「やだ、もう…陽向くんだけは……突き放さないで……」
「だからなぜ俺が“最後の砦”になってんだよ」
泣きながら抱きついてる子に冷静なツッコミを入れる自分もどうかと思うが、状況がどう見てもおかしい
「あと……お母さんにも……お弁当忘れたってLINEしたら“自分のことは自分でやれ”って返ってきて……もう……」
「二連コンボ食らってるじゃねぇか」
「……で、陽向くんの顔見たら……なんか、ほっとして……」
「回復スポットかよ、俺は」
しずくは涙を拭きもせず、ぎゅっと僕の袖をつかんでいた
泣き顔に全力で不安と甘えが混ざってて、こう…反射的に「よしよし」してしまいそうになるのが悔しい
「とりあえず、ハンカチあるか?」
「ない……けど、陽向くんのでもいい」
「人の私物で鼻かむ前提やめろ」
そのままグズグズ泣きながら、しずくは僕の肩に頭を預けた
たぶん、泣くのが目的じゃない
“泣くことで近づく”ことを、完全に覚えやがったな……
「……今日は、いっぱい甘えていい?」
「いつも甘えてるよな?」
「うん。でも今日は、“特盛”で」
「定食メニューみたいに言うな!」
そんな会話をしながら、僕は今日もまた、しずくの情緒と共に昼休みを消化していくのだった
放課後
帰り道も当然のように隣を歩いていたのは、しずく
「ねぇ陽向くん、さっきの授業で手あげたとき、ちょっとカッコよかった」
「お、おう。ありがと」
「でもその後、黒板の字見えなくて目細めてたのはダサかった」
「感情の振れ幅がえぐいな」
午前中に泣きつかれたはずなのに、しずくはもう完全に元気を取り戻していた。
と思ったら、信号待ちでいきなりしゃがみ込む
「……でもやっぱり、思い出すとつらい……先生の言い方、キツかったなぁ……」
「あのさ、起伏のリズム早すぎない!?」
僕が声をかけると、彼女はまたぴとっとくっついてくる
「陽向くんが隣にいると、安心しちゃうんだよね……。心の避難所、みたいな?」
「それ、いま避難指示レベルか?」
「うん、レベル4くらい」
「市の防災アラートかよ!」
しずくは笑ったあと、ふと真顔になった
「ねぇ。もしさ、私がまた誰かに怒られたり、落ち込んだりして……誰にも頼れなかったら、また……陽向くん、受け止めてくれる?」
その目は、いつになく真剣だった
「……そりゃまあ、できる限りな」
僕が答えると、彼女はほっとしたように笑った
「よかった。じゃあ、これからもよろしくね。“心のシェルターくん”」
「名前つけんな!!」
「だって陽向くん、いつもあったかいんだもん。なんか…ふわふわしてて、落ち着く」
「俺を枕か抱き枕みたいに言うな」
彼女はそこで立ち止まり、小さく息を吐いた
「……ほんとはね、怒られたとき、誰にも頼りたくなかったの。でも……陽向くんの顔見たら、気づいたら動いてた」
「それ、もっと前の段階で止めてくれ」
「止められないんだもん。心が、陽向くんに向かっちゃうんだよ」
何だよそのセリフ……ズルいなって、ちょっと思った
しずくがまた笑顔になる
「今夜はもう大丈夫そう。陽向くん成分たっぷり補給できたから」
「俺、栄養ドリンクかなんかか?」
「うん。“陽向チャージ100%”だよ」
そう言って、満足そうに帰っていったしずくを見送りながら、僕はポツリとつぶやいた
「……だからなぜ俺が“最後の砦”になってんだ」
気づけばまた、いつもの位置に戻っていた
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