世界の裂け目が開く時 ー第5話 滅びし世界の少女 【創作大賞2026】|ファンタジー部門
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私の名前はルミ…
私の世界は滅びた。
滅んだ…違う…書き換えられたんだよね。
そして私は、世界に追い出された。
これが、世界からの寵愛を受けた、祝福された子の最期…。
書き換えられ世界が消えて、次の瞬間には私のいる世界は同じはずなのに——全く持って異なる世界。
……今、私は何処を彷徨っているんだろう。
宇宙のようで宇宙ではなく、巨大な樹木の中にある管に私はいて——樹から落ちているような感覚がする。
この”祈り”の力。
それだけは、消えていない。
もし、もしもだよ。
神様、私を世界が追放したんじゃなくて——追放された。
行き場もなく、あてもなく彷徨うというのなら、私は世界を恨む。
でも…。
もし”祈り”の力が、どこかへ届くのなら。
この力を必要としている"世界"に——私を、誘ってくれるかな?
次に意識が戻ったとき…。
私は多分、その"世界"で——誰かと一緒にいられる存在が、欲しいな。
……泥沼に沈んでいた意識が、何かに呼び起こされるように——少しずつ、浮上していく。
重力がある。
何かに護られていた感覚。
何かに沈むような感覚。
……どこかの世界に、来た。
そんな気がした。
ここは、何処なんだろう。
話し声が聞こえる。
私を抱えてくれている存在——その温もりが、腕越しに伝わってくる。
意識はあるのに、目を開けられない。
開けたいのに、焦点が定まらない。
景色だけが、ぼんやりと浮かぶ。
海の上。
頭上で何かが回っている。風を切る音。轟音。
……見たことのない、知らない乗り物。
でも声が聞こえる。言葉が届く。
つまり——私は、違う世界でも祝福されているんだ。
呪いのように聞こえるかもしれないけど、私はこれを呪いだとは思っていない。
想い、願い、世界のお陰で——私は残っている。
書き換えられないでいる。
じゃあ。
私を抱えてくれているこの人は、誰?
……そこで、気づく。
眠った時のまま——ということは。
この衣装、色々と——透けてる。
恥ずかしい。
何でこの服装のまま眠ったんだろう、と思っても、もう遅い。
どうすればいいか分からない。
でも——
……おちょくったら、どう反応するんだろう?
そこで私は、意識を現実へ持っていく。
そっと、目を見開いた。
そこには——凛とした顔の、すまし顔の男がいた。
どこか落ち着きのある表情で。
何処かで見たことある雰囲気…。
いや、私が夢にまで見たことがある雰囲気とでも言う…。
まるで神話上に存在するような存在。
違う…神々にこの世界に派遣されてきたんだ…。
私と同じように…。
会話が嚙み合ってない…気がする。
というより——認識の齟齬かな…。
ねえ、世界。この世界で何が起きているの?
薄っすら目を開けていた目を閉じ、意識を落とすふりをする。
まだ話しかける時じゃない。
まずは、状況を把握しなきゃ。
…………
……そっか…。
……世界が書き換えられている。
そういう点では同じ。
でも、この世界は書き換えられると——総ての世界が崩壊し、この世界の"認識"が変わってしまうんだね。
……それが誤った使い方をして、人々の認識を正そうとしている。
でも、それだとそこが消えるって事?
つまり次消えるのは……国になるんだね……
というか、ここの世界でその現象が起き始めたのっていつなの?
私は世界の意識に問いかける。
世界の意思はこう返してきた。
そっか…。半年以上も前——1年以上、いやもっと前かもしれない。
初めは伝承だった。
それが現実に現れ、それが加速し——今となっては、数十人、数百人。
そして、今日になって数千人。数十万人になったと…。
このままだと終わっちゃうんだね。
この世界、どうしようもない——
どうしようもなくはない。
……………多分このままだと、数日もしないうちに。
この世界は書き換えられちゃう。
……でも、どうやって声をかけよう。
まあいいか……。
何でもいいし、声をかけよう。
それに——彼の"記憶"が、欠けようとしているし…。
そっと目を見開き、男を見つめる。
「起きたようだぞ」
凛とした——おそらく違う国の偉い人だと思う男が言う。
……もう一人がこちらを見る。
その人が、本命。
「見ました?」
そう言うと、男二人は即座に轟沈し、顔が赤に染まる。
「見ていない…」
「……」
……眼鏡をかけた男は前を向く。
私を抱えてくれた人は、じっと私を見つめる。
「……すまんな」
その一言で、私の中の理想像は砕け散った。
あっ、神様に祝福されたけど——ここの事は全く知らないんだ。
付き合い方が分からないのかあ。しょうがないなあ、もう全く…。
「……別に私はいいけど……。貴方の名前は?」
「俺か…。そうだな、名前はルーカス。訳があって、この世界では龍園 朔と名乗っている。で、あいつは一応あの見た目で、この国のトップをやっている。神崎悠真だ」
「誰が一応だ」
「すまない、事実を述べた迄だ」
「……はあ」
神崎は溜息を吐いて前を見る。そして、朔は私を見て——
「お前はなんていうんだ?」
神崎という男は私に会釈した。いい感じの人だね…。
そっか…。名前が無いと困るもんね…。
次は私の番…だけど……。
……ルミだと、あいつに勘づかれかねない。
世界の書き換えを遊びでやって——私の世界を書き換えて追放した、何かに…。
だったら…、名前を考えなきゃ…。
でも…と心の中で考えても、口は勝手に動いた。
「私の名前はルーミャといいます」
「そうか、ルーミャか……同じルから始まるか…面白いな」
…あああああああ、なんか言っちゃった。
恥ずかしくて顔も上げられない。
身体を見られているという恥ずかしさより——肝心な所で何やってるんだよ私…。
「……会話聞いていただろ?」
朔の一言で心が打ち抜かれた。
…嘘、私見抜かれてたの…。
…多分、彼の力なんだろうね。これも…。
「色々難解そうな会話をしてたからね」
「それはすまないと思っている」
「だけど、仕方ないんだよ…。人類の一部が消えた…。霞が関が田園となった。再来年度目途に、東京ディズニーランドという場所が開園されることが決まったという事が…」
……違う……。
そこは、開園されていた。という未来が過去に戻り——これから建築が始まるという構図に変わっていた。
……知らないところで、"認識"の力が書き換えられている。
彼の力は"認識"で総てだと思っている。
どうしようかな…。これ説明するの難しいし…。
うーん…そこにいるタブレットに世界の意思さん、説明を宿しちゃって!!
そう——少し祈りじゃないけど、力を雀の涙程度に使ってみた。
すると——
ブーブーと、朔のスマホが鳴り響き振動する。
認識がうやむやになっていると、不意にスマホが鳴り響いた。
何かと思うとアイコンがある。
いつの間にダウンロードしたんだろうか。
世界樹のようなマークがある。
曰く——
「警告。使用者の認識に異常を検知しました。現在確認されている事象を報告します」
AIは実は、人よりも優れているという具合に——
「本日午前——厳島が消滅。世界の認識上、該当区域は当初より"霧の島"として伝承にのみ存在していた無人島として記録されています」
午前のニュースの真相を、彼等は知っている。
「同日——霞が関周辺、及び一部人類の抹消、被害想定……推定二十八万二千名の存在記録が消失。世界の認識上、該当区域は当初より田園地帯として記録されています」
認知、認識、それらが書き換えられたのにも関わらず——意識はそのままだった。
「また、東京湾岸沿岸部において、建築予定施設の認識が過去方向へ巻き戻されていることを確認。現時点では"これから建設が始まる施設"として世界に認識されています」
「総括——世界の認識が、段階的に書き換えられています」
これは、何かと俺の意識を反映しているのかと思った。
「これは異常です」
確かに異常だ。正常の世界と異常の世界——それが"存在"している。
「ただし——この警告を異常と認識できる人間は、現時点において極めて限られています」
………確かにこの情報は、自衛隊、米軍の一部。アメリカ大統領。
そして……、ここにいる神崎と俺、そしてルーミャといった少女だけ。
その時、俺も知らない情報がやってくる。
「追記。使用者は現在、"三浦"という存在の認識を削除されています。それは、人類の抹消に該当する苗字です」
三浦。
その名前を、頭の中でなぞる。
……何も、ない。
顔も。声も。輪郭すら——どこにも、残っていない。
それなのに。
胸の中に、何かがある。
名前も形も持たない、ただの——欠落だけが。
「……違いますか?」
そう締めくくられ、俺は——ふと、涙を浮かべた。
作戦は大成功だったらしい。
でも…世界樹マークね……。
つまりは、世界の意思がAIを通じて——ここにいる人たちに伝わったんだな…。
気づけば——自然と、消えた。
ルーミャが、小さく息を吐いた。
「ありがとう、私頑張るよ…」
第5話 了
第6話
そして——、今日という日を覚えておこうと思った
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