That Old Time Feeling 歌詞と対訳

楽曲について

That Old Time Feeling / written by Guy Clark
タウンズ・ヴァン・ザントやスティーブ・ヤングらと共に、商業主義とは一線を画す「アウトロー・カントリー」の中心的役割を果たしたシンガー・ソングライター、ガイ・クラーク(1941 - 2016)の作品。拙note既出の「L.A. Freeway」「Desperados Waiting For The Train」と共に1975年のデビューアルバム「Old No. 1」に収録されています。A面のラストを飾る美しいカントリー・ワルツです。
もっとも、本人より先にジェリー・ジェフ・ウォーカーがこの曲を取り上げたのが初出(1972年)。ガイ自身のバージョンが発表された後、彼の盟友ロドニー・クロウエル、愛弟子であるスティーブ・アール、ガイの影響を公言するダレル・スコットが、それぞれ優れたカヴァー・バージョンを発表しています。

曲を聴く前にイメージしたいこと

アウトロー・カントリーのムーブメントに迫ったドキュメンタリー・フィルム「Heartworn Highways」の中にある、この楽曲の演奏シーン。その冒頭で古いモノクロ写真がオーバーラップします。それはジミー・ロジャースと並ぶカントリー・ミュージック最初期のスター、アンクル・デイブ・メイコンの姿や、音楽が産業化される以前の、より密接に生活に結びついていた所謂「オールド・タイム」の時代の風景そして音楽に興じる人々の姿。その頃の素朴な感覚が、現代ではだんだん希薄になっていく。そのことを様々な目線から淡々と綴っています。
この曲は徹底して「And that old time feeling ~」「Like an old ~」という反復フレーズで構成されています。ボブ・ディランの「風に吹かれて」にも見られるこの構文反復は「アナフォラ(Anaphora=首句反復)」という修辞技法で、特にゴスペルにおいて聴き手をトランス状態に導くために用いられるそうです(キング牧師の演説「I Had A Dream」もこれに当たる)。それをふまえて翻訳もフレーズに一貫性を持たせることで、原曲の持つ雰囲気を損ねないように心がけました。
とはいえ、この曲におけるアナフォラは聴き手を誘導するというよりも、作者自身、そして聴き手の多くがオールド・タイム時代からDNAとして受け継いでいる「あの感覚」の現在地を導き出すための座標軸のように機能している気がします。生まれる前から受け継いでいる「あの感覚」。日本人である私達の琴線にも触れるから不思議なものですが、それはすなわちアメリカン・ルーツ・ミュージックの深遠さを示しているような気がします……それではどうぞ!

歌詞と対訳

And that old time feeling
そして 誰もが知る「あの感覚」は
Goes sneaking down the HALL
忍び足で 家に入り込んでくる
Like an old gray cat in winter
それはまるで 冬の日 灰色の老猫が
Keeping close to the WALL
壁に身体をすり寄せる姿のように
And that old time feeling
そして 誰もが知る「あの感覚」は
Comes stumbling up the STREET
よろめきながら 通りを歩んでいく
Like an old salesman kicking
それはまるで くたびれたセールスマンが
The papers from his FEET
足に絡みつく新聞紙を蹴飛ばす姿のように

And that old time feeling
そして 誰もが知る「あの感覚」は
Draws circles around the BLOCK
ぐるぐると 街の一画の周囲をうろつく
Like old women with no children
それはまるで 身寄りの無い老女たちが
Holding hands with the CLOCK
過ぎゆく時間だけを拠り所にする姿のように
And that old time feeling
そして 誰もが知る「あの感覚」は
Falls on its face in the PARK
公園で 惨めに打ちひしがれている
Like an old wino praying
それはまるで アル中の爺さんが
He can make it until it's DARK
せめて日没までは生き延びたいと祈る姿のように

And that old time feeling
そして 誰もが知る「あの感覚」は
Comes and goes in the rain
雨の中で 行ったり来たりしている
Like an old man with his checkers
それはまるで チェス盤を抱える老人が
Dying to find a game
対戦相手を求めて彷徨い歩く姿のように
And that old time feeling
そして 誰もが知る「あの感覚」は
Plays for beer in BARS
バーで ビール目当てに演奏する
Like an old blues-time picker
それはまるで 老いぼれブルースマンが
Who don't recall who you ARE
お前が誰か思い出せずにいる姿のように

And that old time feeling
そして 誰もが知る「あの感覚」は
Limps through the night on a CRUTCH
松葉杖を付いて 一晩中過ごしている
Like an old soldier wondering
それはまるで 年老いた傷病兵が
If he is paid too MUCH
もらいすぎた代償に戸惑う姿のように
And that old time feeling
そして 誰もが知る「あの感覚」は
Rocks and spits and CRIES
揺れ動き ツバを吐き そして涙を流す
Like an old lover remembering
それはまるで かつて恋に落ちた
The girl with the clear blue EYES
青い澄んだ目をした少女を思い出す姿のように

And that old time feeling
そして 誰もが知る「あの感覚」は
Goes sneaking down the HALL
忍び足で 家に入り込んでくる
Like an old gray cat in winter
それはまるで 冬の日 灰色の老猫が
Keeping close to the WALL
壁に身体をすり寄せる姿のように

  • fall on one's face……うつぶせに(顔から)倒れる……転じて「ぶざまに失敗する、面目を失う」という意味だそうです。

  • an old soldier wondering if he is paid too much……ある老兵が給料を高くもらいすぎているのではと心配する。この部分は以前翻訳したジョン・プラインの楽曲に共通するイメージを膨らませました。折しもベトナム戦争終息直後の70年代初頭。心に身体に傷を負い、とぼしい戦果に見合わず勲章ばかり格が高い傷病兵が多くいたことでしょう。

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