【ショートショート】木魚感想文
今日も木魚の音が寺院に悠々と流れる。
奏海僧正は音土真宗に伝わる、最も厳しい修行の真っ最中だった。
食事を摂らず水のみで、ひと月のあいだ休むことなく木魚を叩き続ける「ひと月木魚行」である。
その修業も今日で終わりを迎える。
奏海の体は骨と皮だけになり、意識は混濁と覚醒を繰り返す。しかし、口から唱えられるお経と木魚は途切れることはなく、木魚の音は力強さすら感じられた。
修業もあと数分で終わる。奏海の叩く木魚のリズムは勢いを増し、お教もそれに合わせて朗々と響く。
気付くと奏海は白い世界にいた。目の前に光が立っている。
仏との邂逅。悟りの境地。
そのとき、奏海の体には異変が起きていた。
弟子に筆と紙を持ってこさせると、木魚を叩きながらも何事かを書き付ける。奏海の体には仏が降りていた。
白い世界から戻ってきた奏海は、目の前の紙を呆然と眺めた。そこには仏の言葉が記されていた。
【もはやキミの木魚はロックだね!浄土のみんなはキミの木魚で体を揺らして踊り明かしてるよ!でも、わしは最近K-POPとか好き】
奏海は静かに目を閉じた。修業が終わる。
木魚を片手に歌って踊る奏海僧正の姿がテレビで特集されたのは、それから数カ月後のことだった。
終
ポクポクポク。あの音大好きです。
たらはかにさまの毎週ショートショート【木魚感想文】に参加させて頂きました。
前回のお題【読書手術】はこちら
お題【スクショシュシュシュ】
#毎週ショートショートnote
#ショートショートnote
#木魚感想文
#左右研究
#ショートショート
#短編小説
#ショートストーリー
#掌握小説
#超短編小説
#創作
