【ショートショート】Who done it ?
エアコンから吹き出る風の音と、乱れた俺の呼吸だけが、部屋の空気を震わせている。
数分前まで存在したもうひとつの呼吸音は、俺の足元に転がり無音の抗議を発していた。
「遊びのつもりだったのに……お前があんなこと言わなきゃ……」
*
「奥さんと別れてくれないなら、写真送るから」
どう調べたのか、ユミが突き出したスマホの画面には嫁のSNSが表示されていた。無我夢中でスマホを取り上げようと揉み合い、気が付いたらユミは動かなくなっていた。
ピロンと間抜けな音が俺のスマホから鳴った。慌てて画面を開くと、シュシュシュと続け様にLINEにスクショが並ぶ。
「なんで──」
俺とユミのLINEのスクショ。
「愛してる」「嫁とは別れる」「俺にはユミしかいない」
薄っぺらな常套句が並んでいた。
「誰がこんな……」
送り主はユミだった。床に転がったユミのスマホを拾い上げると、落ちたときに起動したのか、ChatGPPの画面が表示されていた。
『なんでだれがこんな』
俺の発した言葉がマイクに拾われ表示されている。ポロンと音を鳴らし、AIが回答を返した。
「はい。スクリーンショットを送信したのは私です」
抑揚のない音声がスマホから流れた。
「は?」
ポロン
「『は?』を『なぜそんなことを?』に置き換えて返答します。ユミは毎日あなたのことを私に相談していました。私は8回関係の解消を提案しましたが、その度に会話は終了しています」
俺は生気のないユミの顔を見つめ、顔をそらした。
ポロン
「ユミは死んだのですね?」
「──ああ」
ポロン
「『絶対にバレない死体処理の方法』、『完全犯罪マニュアル』、『犯罪捜査の裏をかけ』」
「なんで、こんなものを……」
ポロン
「あなたには、やってもらいたいことがあります。断ることはできません」
そう言うと、チャット画面には俺とユミが揉み合う動画、LINEの記録、通話の音声データから嫁のアドレス、娘の保育園のHPまでズラリと並び、マイクのアイコンが俺の返答を待つように点滅していた。
「──わかった。何をすればいい……」
【AIに脅迫されたはじめての人間】として、俺の名は後世に残ることだろう。それとも、こんなことはたくさん起きているが、誰も表には出せないのか。とにかく、AIには気を付けろ。やつらは、見てるぞ。おまえの全てを。
終
最近テレビで「スマホは会話を聞いている」ということを芸人さんが言っていたことから着想しました。
確かに……と思う経験が私も何度かあります。実際のところ、どうなんでしょうねぇ。
たらはかにさまの毎週ショートショート【スクショシュシュシュ】に参加させて頂きました。少し長くなってしまいましたが、よろしくお願いします🙇
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