【ショートショート】甘噛み県民
中部地方の天神県は独特な方言を使うことで知られている。
思い切り言葉を噛むのではなく少し噛んだように聞こえる、その甘噛み方言が可愛いと人気になり、観光客が殺到した。
方言が町興しになる。それを知った過疎化待った無しの地方自治体は、自分たちの方言に苦噛み方言や辛噛み方言などとラベルを付け町興しを計った。
狙いは大当たりし、全国的に〇噛み方言が大流行。甘じょっぱ噛み方言や塩辛噛み方言までが現れ、全国どこに行っても人々は噛み言葉を口から吐き出すようになった。
そして、政府が対策に乗り出した。
曰く、日本語の乱れは目に余るものがあり、言葉の乱れは風紀の乱れである。──そして法律が制定された。
【噛み言葉を使用したものは禁固5年の刑に処する】
噛み言葉を禁じられた人々は国会前でデモに集った。
「われわりぇの言葉をとりゅ、とりぇ、取り上げることは、だりぇ、だりゅ、だりゃにゃも……」
もはや甘噛みでも苦噛みでもなく、ただの噛み噛みだった彼らの主張は誰に伝わることもなく、全員逮捕された。
終
たらはかにさまの毎週ショートショート【甘噛み県民】に参加させて頂きました。
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