【連作ショートショート】勇者の屍を越えていけ ①勇者と献立
百余年、人類は魔族によって支配されていた。
奴隷として生きるか、人として散るか。
人々の絶望は大地を埋め尽くし、流れた血と涙は、ひとりの奇跡を誕生させた。
勇者の誕生である。
「ついに、ここまできたな」
「ああ、長い道のりだった」
「明日はいよいよ魔王城ですよ! 最後になるかもしれない晩餐です! 食べましょう!」
勇者は首を振った。
「最後にはさせないさ。明日は人類の解放の日だ」
「……そうですね! 今日は腕によりをかけましたよ! 豪力レンコン、魔光ザクロ、鉄壁カボチャ、そして、俊敏ポルチーニ茸! これだけ食べれば、負けるはずがありません!」
僧侶は各々の器になみなみと汁をよそった。
「──勝利に」
一斉に汁をあおる。
体の奥底から力が湧き上が……らない。
腹は冷え、筋肉は痩せ細り、体は石のように重い。
「おい……これ、俊敏ポルチーニ茸じゃなくて、反転グダケじゃないか……」
「まずいぞ、勇者……魔族の斥候が近付いてくる……」
勇者一行は森を這いずり逃げ出した。
人類の解放の日は遠い。
しかし、勇者は以下の言葉を残し、後世に希望を繋いだ。
※キノコの識別は専門的知識を有する者であっても誤認の可能性があり、極めて困難である。安全確保の観点から、十分な注意を払うこと。 ──勇者
つづく
① ▷▷
AIにイメージ画像を描いてもらいました。なかなかぐっときたので載せておきます。しかし、なかなか漢字の生成が上手くなりませんね。

同じシリーズをまとめました。
田原にかさまの毎週ショートショート【俊敏ポルチーニ茸】に参加させて頂きました。
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