【ショートショート】三毛猫トリプルアクセル
ミトコンドリアDNAのごく一部に、通常とは異なる三重らせん構造が確認された。その出現頻度は、オスの三毛猫と同程度だという。それは、3万匹の三毛猫の中に1匹いるかどうかの確率である。
「三毛猫トリプルアクセルにしよう」
博士が唐突に呟いた。私は顕微鏡の視野に映る美しい三重らせんから目を離さずに、一応聞いた。
「なにかの技名ですか?」
「何を言ってるんだ。今キミが見ているDNAの名前だよ」
私は思わず顕微鏡から顔を上げると、博士の顔をまじまじと見つめた。
「本気ですか?こんな、大発見に……そんな、なんというか、ふざけた名前を……」
「三日三晩悩みに悩んだ名前をふざけた名前とは、失敬だなキミは」
「いや、落ち着いて考えてみると素晴らしい名前に思えてきました。むしろそれ以外は考えられないかもしれません」
「おお、そうだろう、そうだろう。では、それで学会に発表しよう」
「三毛猫……ところで、このDNAはどんな特徴があるんですか?」
「そんなことも知らんで見ていたのか?このDNAはな、昨日のカレーと一昨日のカレーの匂いの違いを嗅ぎ分けられる遺伝子だ」
「それは……どちらかといえば犬なのでは……」
終
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