イラストで情報を“翻訳する”方法|『わかりづらい』を『わかりやすい』に
「わかりやすい」。約一年間書きつづけてきた私のnoteに、一番多く寄せられた感想の一つだと思う。いや、思うとかじゃない。体感(なんと便利な言葉だ)だが、引用やシェアされる際につく言葉には「わかりやすい」がダントツで多い。『理屈と論理が感情と反知性に呑まれる国』は、“わかりやすい”とシェアされたし、
その再編集ショート版も、俳優の円井わんさんに「とても分かりやすいです。」とシェアしていただいていた。
どうやら、私の文章は“わかりやすい”らしい。しかし、この“わかりやすい”というのは劇薬で、用法容量を間違うと、最悪の場合、国家転覆に至るほどの大惨事を引き起こす。
そこで、この記事では、「わかりづらい情報を、イラストで“翻訳”する」この考え方を、実例を交えながら書いていこうと思う。
今回の記事の要点(読む時間がない方向け)
・「わかりやすい」は便利だが、使い方を誤ると誤解や扇動を生む“劇薬”でもある。
・人は複雑な情報を避けがちだが、シンボルや物語によって極端に単純化された情報には注意が必要。
・図解・相関図・MAP・年表などのイラストは、「わかりづらい情報」を整理し“翻訳”する手段になり得る。
・図解やグラフィックレコーディングは「情報を足す」作業ではなく、本質を見極めて“削り、整理する”編集の技術でもある。
・SNSやnoteなど媒体ごとに、文字量・余白・レイアウトを調整することで“読まれる設計”は変わる。
・絵は古代から現代まで、言葉を超えて情報を伝えるための普遍的なコミュニケーション手段である。
『わかりやすい』という名の劇薬
近年の選挙で「あの人の言葉はわかりやすい」という評判をよく耳にする。しかし、そういう政治家は得手して、「日本を元気に!」とか、そもそも“わかりやすいこと”を、ただただそのまま“わかりやすく”ハキハキ言っているだけのことが多い。
政治の本質は、率直に言って非常にわかりづらい。最低限、小中学校で習った公民の知識を前提としており、その時のルール説明(授業)を聞いていなかった。もしくは、忘れていたら、そもそもどんな試合(ゲーム)が、どんなメンバーとルールのもとで繰り広げられているのかすら理解できない。
しかし、この“わかりづらい”政治を劇的に“わかりやすく”する方法がある。いわゆるシンボル的存在と物語だ。野球のルールや、セリーグパリーグの違いをよく知らない人でも、大谷翔平は知ってる。政治の世界で言えば、高市早苗がそれである。女性初の総理。もうこれだけで、本人の総理としての資質どうこう関係なく、シンボルと物語両方兼ね備えている。人は「わかりやすい」が大好物だ。逆に「わかりづらい」に拒否反応を起こす。当然だ。「つらい」のだから。いくら理路整然とした筋の通ったことを話していても、わかりづらい(理解できない)認定してしまった時点で、拒否反応、苦手意識が生じてしまう。
「わかりやすい」を鵜呑みにするのは危険
なので、権力者や、扇動家は得手して「わかりづらい」が嫌いな人たちにも響く言葉を使う。
「敵がいる!団結しよう!」
こういうのが最も、“わかりやすい”。国内の政治がどんなに不味くても、外に敵がいると言えば国民の目はそちらに一点集中し、目眩しになる。だが、このような過剰に添加されている“わかりやすい”には、「嘘」もしくは、「間違い」という毒物や不純物が混ざっていることが多々ある。なので、「この人の言っていることわかりやすい!好きー!」と思ったら、その「わかりやすい」は、そのまま飲み込んでも大丈夫な“わかりやすい”なのか、十分に気をつけなければならない。必要とされているのは、真っ当なわかりやすさだ。
そして、多くの人が拒否反応が出る“わかりづらい”を、“わかりやすい”に“翻訳”する方法がある。その一つが絵や図解だ。
イラストで“わかりづらい”を“わかりやすい”に
実は、私のアウトプットが「わかりやすい」と言われたのはnoteの文章が初めてではない。私はこれまで、映画の魅力を伝えたいがために、イラスト、漫画、相関図、図解などを描いてSNSに投下してきたが、それらも「わかりやすい」「便利」などのコメントをいただいてきた(絵そのものがカワイイとか好きとかではなく、わかりやすい、便利という評価が先に立っていたのはやや複雑な思いもあったが…)。
ただこれは、別に、人に伝えて説明したいとか、人の疑問を晴らしたいとかではなく、私自身が頭の中に浮かんでいるふわふわモワモワとした疑問を、整理してスッキリ理解したい、自分の推しを布教したいという思いで作成したものが多い。
アメコミ映画界大人の事情一覧表
例えば、こちらの表。今でこそ、20世紀FOXがディズニーに買収され、一本化されたが、2016年の頃はマーベルコミックスのキャラクターの映像権が、映画会社によってバラバラで、どこがどの権利を持ってるのか、わかってるつもりでも、頭の中ではいまいち整理できずモヤモヤしていた。
そこで、キャラクターと権利関係を一覧にしたのが、アメコミ映画界大人の事情一覧表である。
最近アメコミ映画多過ぎてわけわかめって人の為のアメコミ映画界大人の事情一覧表→ https://t.co/XBOtcv5kuJシビルウォーにスパイダーマン出てくる予告見て「お!」っとなった後、でも何で?ってなってる人もいる…よね?! pic.twitter.com/3u657jpOTs
— ウラケン・ボルボックス🇵🇸『だいたいヒトがやらかしました🦤絶滅生物事典』 (@ulaken) April 26, 2016
「分かりやすい!」
「ようやく理解できた!」
「知らなかった!」
と様々な反響をいただき、初めて1.2万RT、1.2万イイネまで伸び。今まで感じたことのない脳汁がドバドバ出たのを覚えている。ただ、ハルク単体の映像権はユニバーサルが持っているので、この表も実は完全に正確というわけではない。(前述した「わかりやすいを鵜呑みにするのは危険」の一端がここにある。)
みんなちがってみんなイイ!SPIDER-MAN映画シリーズ別一覧表
同じくアメコミ映画では、以下のようなもの例もある。スパイダーマンの映画シリーズは、
◎サム・ライミ監督の無印
◎マーク・ウェブ監督のアメイジング
◎ジョン・ワッツ監督のMCU
と3つあるが、馴染みがない人には、何で3本もあるのか理解できないし、過去に見たのが、どれがどれやらわからない。そこで描いたのが、以下の漫画と一覧表である。


スパイダーマン映画だらけでわけわかめって人の為の【#スパイダーマン 映画シリーズ別一覧表】https://t.co/ynOD7fT4in https://t.co/SjGlz23WFQ
— ウラケン・ボルボックス🇵🇸『だいたいヒトがやらかしました🦤絶滅生物事典』 (@ulaken) August 25, 2017
現在映画シリーズは3種類で計6本スパイディは3人、みんな違ってみんなイイ。#アメスパ2 pic.twitter.com/JNHNoeW16l
漫画は、サム・ライミ版がなぜ3で終わったのか、アメイジングがなぜ2で終わったのかなどを省略しているので、気になった方は調べてほしい。ただ、このように、情報を整理し、編集し、絵に落とし込むことで、文章だけでは長くなり、わかりづらいことも、わかりやすく伝えることができる。
全部同じ世界の出来事!!MCUざっくり世界観MAP
当時は、とにかくMCUにハマりまくっていて、集大成であるエンドゲームまでにこの映画シリーズを布教しようと、相関図やマップ、キャラ紹介などを作りまくっていた。

やたら、縦に長いのはスマホの画面で読まれることを前提にしているからである。
グラフィックレコード=“会議を翻訳する”技術
このように絵・イラストは、わかりづらい情報を、わかりやすく“翻訳”することができる。その翻訳の仕方、手段は、
・一覧
・比較表
・相関図
・MAP
など、お題によってさまざまなのだが、最近イラストの仕事の依頼で、プレゼン資料として、グラフィックレコードなるものを描かせていただくことが増えた。
グラフィックレコーディング(通称:グラレコ)
会議、講演、ワークショップの対話内容を、文字だけでなく、図形、イラスト、矢印などを用いてリアルタイムに視覚化・記録する手法。議論の全体像や関係性が可視化されるため、情報の理解度が高まり、参加者間の共通認識形成(相互理解)に非常に有効。
私の場合は、その場でリアルタイム描くのではなく、プレゼン用のグラレコのラフの文字やイラストを清書していく作業が主なのだが、これまで描いてきた図解、相関図、MAP、一覧、年表などは、内容を整理し、情報の理解度を高めるという意味で、非常にグラレコに近い。
なんということだ。
私は意図せずグラレコ職人になっていたのか。
ジュラシックパークからワールドまで!恐竜大惨事ザックリ年表
例えば、こちらの『ジュラシックパークからワールドまで!恐竜大惨事ざっくり年表』である。ジュラシックパーク&ワールドのシリーズは、
・サイトA(ヌブラル島)
・サイトB(ソルナ島)
二つの島が登場し、毎回イスラ・ヌブラルだの、イスラ・ソルナだのと言われるのだが、どの映画が、どの島で、どんなことが起こったのかをまとめたのが下の図だ。

【恐竜大惨事ザックリ事件簿】https://t.co/z5HctPRUGD
— ウラケン・ボルボックス🇵🇸『だいたいヒトがやらかしました🦤絶滅生物事典』 (@ulaken) July 13, 2018
ジュラシックパーク→ヌブラル島
ロストワールド→ソルナ島
ジュラパ3→ソルナ島
ジュラシックワールド→ヌブラル島
ジュラワ炎の王国→ヌブラル島
人類は毎回自分達でやらかす。全然進化しない。#ジュラシックワールド #炎の王国 pic.twitter.com/nLtrnqphkd
年表と言いつつ、MAPでもあり、相関図でもあるので、映画シリーズ全体をおさらいすることもできる。
これを人物相関図に全振りすると、下のような図になる。
『ジョン・ウィック』超ザックリ相関図劇場
人物の似顔絵と矢印のみだとただの相関図になってしまうが、見出し、吹き出しを追加することによって、キャラの性格や、状況説明、ストーリーを補完している。





【ジョン・ウィック 超ザックリ相関図劇場1/4】https://t.co/iwiUdOIX6M
— ウラケン・ボルボックス🇵🇸『だいたいヒトがやらかしました🦤絶滅生物事典』 (@ulaken) September 19, 2023
『#ジョン・ウィック :コンセクエンス』が最高に面白かったので、シリーズ過去3作見たことない人でもいきなり映画館に行けてしまう相関図作りました。#JWファンアート pic.twitter.com/aBSRY22mki
激推しレポート!ミュータント タートルズ:ミュータントパニック

こちらのタートルズの紹介もジョン・ウィックと構成的にはほぼ同じだが、キャラ紹介を詳しくしつつ、タートルズが普通の高校生活に憧れているため、米国の高校生がよく使うルーズリーフの用紙に、マーカーで描かれたイメージに仕上げている。
『グリーンブック』
状況説明ではなく、その映画を十分に楽しむためには、小道具や背景の歴史の知識が必要と判断した場合が映画『グリーンブック』を絵にしたこちら。

タイトルにもなっているのに、劇中サラッとしか紹介されない冊子と、日本人は馴染みがないフライドチキン発祥の歴史をイラストにしている。これぞ、背景知識の翻訳である。
ついつい読んでしまう書き文字
SNSのTLを流れていく画像を見ていると、打ち文字ではなく、書き文字だとついつい読んでしまう。なので、情報を伝えたいイラストを描くときは極力書き文字を添えるようにしている。とは言え、イラストもちゃんと描きたいと思った場合の処理がこちら。


この手法を、身近な商品に当てはめ、商品の歴史やパッケージの豆知識を1枚のコンテンツにしたものがこちら。




電車の中吊りなどで、一駅行くまでについつい読んでしまいそうな情報量を意識している。
一番「わかりづらい」問題を「わかりやすく」
冒頭の話に戻ると、政治や選挙は最も“わかりづらい” テーマと言っても過言ではない。この問題に対して、なるべく「嘘」もしくは、「間違い」といった毒物や不純物を混ぜることなく、いかに絵として“わかりやすい” ものにするかが図解師、グラレコ職人としての大きな課題だ。
そこで、行き着いたのが選挙をミカン選びに例えたイラストだった。普段政治に無関心な人は選挙になると、突然どのミカンを食べたいか選べと選択を突きつけられる。よく調べず、よくわからないまま適当に印象だけでミカンを選ぶと、大人も子供も赤ちゃんも、国民みんなで、カビたミカンを食べて、お腹を壊すことになる。ミカン選びは慎重にならなければならない。
それをイラストで表現したのが、こちらの図だ。

🗳️選挙はミカン選びにちょっと似ている。たとえ全部マズそうでも、生産者や品質をちゃんと調べて投票しないと、最悪🇯🇵国民みんなでお腹を壊すことになる。完璧なミカンはない。なるべくマシなミカンを選ぶしかない。
— ウラケン・ボルボックス🇵🇸『だいたいヒトがやらかしました🦤絶滅生物事典』 (@ulaken) January 27, 2026
期日前投票に行こう。 #衆院選2026#差別に投票しない https://t.co/qTOWudihsP pic.twitter.com/hxXMjabpJg
SNSの住人は、吹き出しを見かけると無条件で読んでしまうという習性がある(これもまた私の体感でしかないが)ので、説明要素は吹き出しにしている。
文字が多いメディアでは、文字を少なく
上にあげたような例は、イラスト単体で説明するためのものなので、noteのように文字メインのメディアの場合は、挿絵や、装画のように、文字要素をなるべく削ることを意識している。


今まで余白までギッチギチに埋めていた文字やイラストを、noteという文字だらけの媒体に合わせて、あえて余白多めにとっている。
“わかりやすい”の掛け算
逆に、吹き出しや漫画的コマ割り、ビフォーアフターのような要素を掛け合わせると、環境省の仕事で作成したアメリカザリガニの資料のような形になる。

こちらは、条件付特定外来生物であるアメリカザリガニが侵入することによって、水辺がどう変化するのかをイラストと、漫画的なコマ割りで説明したものだが、私のアカウントではなく、環境省のHPなどから引っ張られ、たびたびSNSで突発的にバズっている。写真や文章だけでは伝わりづらい内容が、イラストによって可視化されたことで、何度も拡散される現象になっている。そもそもこの一枚を見ただけで、伝えたい内容がSNSでも伝わるように設計した一枚だったので、期待通りの展開である。
アメリカザリガニの害、世紀末モヒカンみたいなノリのアメリカザリガニがコミカルに解説してるページが環境省にあってわかりやすい
— まさみティー🐫ピッコマノベルズ『秋風のレストラン革命!』連載中! (@MasamiT) January 13, 2022
ヒャッハー!🦞
恨むなら人間を恨みなー!🦞https://t.co/ckvQR7zhMN pic.twitter.com/0jwUXPnoP5
アメリカザリガニが入ると水草がなくなるのは、こういう環境改変能力をもつためです。
— ゲンゴロウ飼育ブログ🗯 (@gengo6com) May 13, 2025
外来種アメリカザリガニの成長戦略-水草を刈り餌生物の捕食効率を高めることで自分に有利な環境を創出-https://t.co/agO10og5TIhttps://t.co/BEgWDtoeXa pic.twitter.com/HxEiFcYNHx
このように絵は、文章や説明だけでは“わかりづらい” 物事を、“わかりやすい” に翻訳する力を持っている。映画や、商品、パッケージの可愛さや魅力を伝えたい、これは個人レベルでは“布教”なのだが、クライアントがいれば、こちらの『男はつらいよ』の図解寅さんのような、PRかつ宣伝につながる。
╭━━━━━━━━╮
— 映画『男はつらいよ』公式 (@torasan_50th) October 1, 2024
#図解寅さん
連載スタート🐯
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外来種問題、映画など、混み入った話をユーモラスにまとめた作品が人気のイラストレーター #ウラケン・ボルボックス さん(@ulaken)が、#寅さん の世界の魅力に迫ります📝
詳細⬇️https://t.co/9nAGuPBvPE pic.twitter.com/i1NkYyCJwB
絵は1万年の時を超える
ラスコーの洞窟、エジプトの壁画、キリスト教の受胎告知、仏教の地獄絵。そもそも絵は、古来より、芸術、鑑賞するものだけでなく、何かを説明する手段として使われてきた。宗教絵画などはまさに文字が読めない信者への布教に使われてきたし、アルタミラの洞窟の壁を見れば、後期旧石器時代のクロマニョン人の声、言葉は残っていなくても、描かれた絵によって、彼らが伝えたい物事、その感情や感動すら、1万8,000年の時を一瞬で超える。
考えてみれば、象形文字の成り立ちも物の形を絵にして表したことから始まった。わかりづらい何かを、わかりやすく説明したい。ならば、絵にした方がわかりやすいし伝わるという発想は、人類の根幹にあるのかもしれない。
イラストや図はまだまだ無限のポテンシャルを秘めている。
それでは、今回も読んでいただきありがとうございました。イラスト・図解・グラレコなどの制作相談も受けていますので、ご興味のある方はHPのメールフォームからご連絡ください。
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